※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。
仏サノフィ社、スイスのロシュ社、英アストラゼネカ社の後期開発段階のリードアウトが迫るなか、試験デザインに注目が集まっている。
米ラディウス社と伊メナリーニ社の経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であるelacestrant(エラセストラント)が乳がんの極めて重要な臨床試験で成功を収めていたことはすでにわかっていたが、問題は、この効果がESR1遺伝子の変異を持つ患者のサブグループによってもたらされたものかどうかであった。
答えは「イエス」だが、これらの患者が全体のベネフィットにどの程度関与しているのかはまだ不明だ。しかし、EMERALD試験(JBCRG-M06)の結果は、すべての患者を対象とする承認を与えるに十分なものであると考えられるため、問題にはならないかもしれない。現在、焦点となっているのは、後期開発中の経口SERDを保有するサノフィ社、ロシュ社、アストラゼネカ社といった企業であり、これらの企業は来年(2022年)、重要なリードアウトを予定している。
これらの薬剤の試験デザインは、それぞれ微妙に異なっており、各プロジェクトがエラセストラントの成功を再現できるかという点では、疑問が生じている。
共通の主要評価項目これらの経口SERDは、いずれもER(エストロゲン受容体)陽性、HER2陰性の乳がんを対象に、当初は二次治療以降の設定で開発されている。ESR1遺伝子変異は、乳がん治療の屋台骨となるアロマターゼ阻害薬に対する一般的な耐性メカニズムである。
ラディウス社は、全例での無増悪生存期間(PFS)とESR1変異体でのPFSを主要評価項目としており、非常に賢明な試験の計画であると思われる。今日(12月7日)、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表されたEMERALD試験の全データによると、標準治療と比較して、全症例における進行または死亡のリスクは30%減少し、試験参加者の48%を占めたESR1変異体では45%の減少を示した。
いずれも統計的に有意な結果だった。ESR1野生型患者の結果については、米マサチューセッツ総合病院のAditya Bardia博士が記者会見にて、これらのデータはまだ得られていないが、分析を行う予定であると述べた。
有害事象では、悪心が最も問題であるように見受けられ、エラセストラント群の35%で認められたのに対して、標準治療である注射薬のSERDであるフェソロデックス(一般名:フルベストラント)とアロマターゼ阻害薬の投与を受けた患者群では19%だった。しかし、グレード3または4の悪心の発生率は、エラセストラント群で2.5%、対照群で0.9%と低かった。。
エラセストラントは現在、経口のSERDとしては初めて米国食品医薬品局(FDA)の承認を得る可能性がある。規制当局は、広範な適応を選択するか、ESR1変異に限定して承認するかを検討する必要があり、後者の場合は検査の負担を考慮しなければならない。
SERDのパイプラインしかし、開発中の経口SERDであるサノフィ社のamcenestrant、ロシュ社のgiredestrant、アストラゼネカ社のcamizestrantの3つが開発の佳境を迎えており、市場は混雑する可能性がある。
次にデータが得られるのはamcenestrantであるが、サノフィ社はこの分野をリードするチャンスを逃した。今年末か来年初めに予定されているAMEERA-3試験の結果は、当初は今年(2021年)の第2四半期に予定されていた。
これらの候補薬のピボタル試験のいずれも、ESR1変異体におけるPFSを主要評価項目としていない。AMEERA-3試験とgiredestrantのacelERA試験では、ESR1変異体におけるPFSを副次評価項目としており、camizestrantのSERENA-2試験のclinicaltrials.govの記載では、ESR1変異体については全く触れられていない。
片やサノフィ社は、このことが問題になるとは考えていないようだ。同社の第3四半期の業績報告会で、研究開発責任者のJohn Reed氏は、amcenestrantはエストロゲン受容体の変異型と野生型の両方に対して同じような活性があるが、エラセストラントは「変異型を好むようだ」と述べた。
一方、ロシュ社はgiredestrantがベストインクラスとなる可能性を誇っている。
両試験のもう1つの違いは、前治療歴だ。EMERALD試験では、米ファイザー社のイブランス(一般名:パルボシクリブ)のようなCDK4/6阻害薬の投与を受けていることが条件とされていたが、giredestrantとcamizestrantの試験では、そのような条件はない。AMEERA-3試験では、患者の20%がCDK4/6阻害薬未使用であることが認められている。
今後数ヶ月のうちに、これらの試験デザインの違いが有効性の違いにつながるかどうかが明らかになるだろう。
■出典 SABCS 2021 – Mutant benefit makes Emerald sparkle