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【特集・「希少がん」を知る(前編)】なぜ、希少がんの薬の開発は、なかなか進まないの?

[公開日] 2016.07.06[最終更新日] 2016.07.06

目次

がん難民をなくしたい――。そんな全国のがん患者・家族の声を受け、超党派の議員立法で「がん対策基本法」が制定されて10年。5大がんをはじめ、患者数の多いがんの治療体制は整ってきたものの、遅れているのが患者数の少ない希少がんの治療や診療体制の整備です。希少がんについては、治療薬が少なく、標準治療が確立されていない分野も多いのが実情です。では、希少がんの治療薬の開発は、なぜ進まないのでしょうか。国立がん研究センター希少がんセンター長の川井 章さんに聞きました。

がん患者の15~22%は希少がん

希少がんとは、罹患率(発生率)が人口10万人あたり年間6人未満、つまり、患者数が少なくまれながんのことです。例えば、口腔がん、卵巣がん、尿路がん、さまざまな臓器に発生する肉腫、成人T細胞白血病、鼻腔・副鼻腔がんなど、約190種類のがんが希少がんに該当します。日本では、これまで希少がんの定義がなされていなかったのですが、昨年、厚生労働省の「希少がん医療・支援のあり方に関する検討会」で議論され、その範囲が決められました。 希少がんが注目されるようになったのは、平成24年に厚生労働省が策定した第2期がん対策推進基本計画の中で、今後取り組むべき課題の一つとして希少がんが取り上げられたことがきっかけです。今後、国会で議論が予定されているがん対策基本法の改正に対して、全国がん患者団体連合会が出した要望書にも「希少がん」が大きな課題として挙げられています。 希少がん対策が重要な理由の一つは、それぞれの疾患の患者数は少ないものの、合計すると全がん患者の15~22%を希少がんの患者さんが占めるからです。しかも、患者数の多いがんに比べて希少がんの治療成績は未だ不良で、がんで亡くなる人の約35%は希少がんが原因との報告もあります。また、希少がんは、小児やAYA世代(15~29歳)と呼ばれる若年者に多いのも特徴です。 図

治療薬の開発が進まないワケ

では、なぜ、希少がんの治療薬の開発はなかなか進まないのでしょうか。一つには、限られた予算の中で、国などの研究費は患者数が多いがんに優先的に配分され、希少がんの研究費が少ないことが挙げられます。市場が小さいので、企業にとっても開発のインセンティブは乏しくなります。もう一つは、治験を始めたとしても、患者数が少ないために、安全性と有効性を検証するために必要な症例数が集まるまでに時間がかかることです。さらに、それぞれの病気の治療を専門とする医師や施設も少ないため、医師や研究者側に新しい薬や治療法を開発するための経験や知識が乏しいことも影響していると考えられます。 こうしたハンディを克服するために、希少がんや難病など希少疾患に対しては、国が、その治療に関わる薬や医療機器の開発を後押しする「希少疾病用医薬品・希少疾病用医療機器等の研究開発促進制度」を設けています。希少疾患の薬や医療機器の開発をする企業は助成金の交付、税制面での優遇を受けられます。また、患者数の多いがんにおいては、通常、フェイズ1(第1相)~フェイズ3(第3相)まで3段階の試験が必要ですが、希少疾患の薬はフェイズ2で有効性と安全性が認められれば承認されることもあります。 同制度を利用して、まずは希少がんで薬事承認を取得し、さらに患者数の多いがんに適応拡大をするような医薬品も出てきています。例えば、分子標的薬のパゾパニブは、2012年に悪性軟部腫瘍に対して薬事承認され、その後、腎細胞がんに適応が拡大されました。開発そのものが難しい希少がんの領域においては、どんな形であれ、有効な治療選択肢が一つでも増えるのは重要なことだと思います。また、治療薬の少ないがん種では、治験そのものが治療法の選択肢の一つになる場合もあります。国立がん研究センターがん対策情報センターでは、ウェブサイト上の「がんの臨床試験を探す」をリニューアルして、希少がんの患者さんたちが最新の治験情報により簡単にアクセスできるよう情報発信していくことを計画しています。 ただ、希少がんにおいては、せっかく良い治療薬や治療法を開発しても、有効性や安全性の高い治療がなかなか全ての患者さんに迅速に届きにくいという大きな課題も抱えています。次回は、この課題について詳しくお話ししたいと思います。 【特集・「希少がん」を知る(後編)】希少がんの治療で後悔しないためには? DSCN3314
(構成/医療ライター・福島 安紀)

AYA世代とは?

AYAとは、Adolescent and young Adult(アドレッセント アンド ヤング アダルト)の略であり、「思春期と若年成人」という意味です。AYA世代とは、一般的に15歳~29歳(欧米では39歳)を指します。AYA世代のがん患者は、治療中やその後の生活の中で、就学、就職、就労、恋愛、結婚、出産など人生のターニングポイントとなる様々な出来事と向き合う機会が想定され、大人・高齢のがん患者とは異なるAYA世代特有の問題があるとされています。
特集 AYA AYA世代

医療ライター 福島 安紀

ふくしま・あき:社会福祉士。立教大学法学部卒。医療系出版社、サンデー毎日専属記者を経てフリーランスに。医療・介護問題を中心に取材・執筆活動を行う。著書に「がん、脳卒中、心臓病 三大病死亡 衝撃の地域格差」(中央公論新社、共著)、「病院がまるごとやさしくわかる本」(秀和システム)、「病気でムダなお金を使わない本」(WAVE出版)など。

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