多発性骨髄腫の治療薬として抗PD-1抗体キイトルーダ(ペムブロリズマブ)は効果があるのか?


  • [公開日]2017.05.07
  • [最終更新日]2017.11.13[タグの追加] 2017/11/13

結論から申し上げますと効果があります。この効果を証明した試験結果は医学誌『blood』に掲載されています。論文に掲載された試験結果では、前治療として平均3回の治療を受けた再発難治性多発性骨髄腫患者さん48人を対象に、キイトルーダ(ペムブロリズマブ)とポマリスト(ポマリドミド)とデキサメタゾンの3剤(PPd療法)を投与し、その有効性が検証されました。

試験はフェーズ2試験であり、比較対象群のないシングルアームの試験デザインになりますが、PPd療法はCR(完全奏効)を8%含む60%の患者に奏効を示すことが判っております。

一見、この奏効率は抗PD-1抗体を使っているにも関わらずそこまで高くない印象を与えますが、投与された患者背景を見ますとこの奏効率の高さが理解できます。

PPd療法が投与されたこの試験の患者背景はポマリスト(ポマリドミド)の投与対象患者さんであるだけに状態がよくないです。

前治療としてのベルケイド(ボルテゾミブ)、レブラミドレナリドミド)に対して70%以上の患者さんが難治性を示しており、70%の患者さんが自家造血幹細胞移植を受けており、40%の患者さんが多発性骨髄腫治療のハイリスク因子である染色体異常を有しておりました。

このように患者背景として状態が良くない3つの因子があるにも関わらず、PPd療法は投与された60%の患者さんに対して有効性を示したのですから、これは多発性骨髄腫の治療として抗PD-1抗体キイトルーダペムブロリズマブ)が有効であると結論づけてよいでしょう。

本試験結果は、免疫調整薬であるポマリスト(ポマリドミド)と抗PD-1抗体キイトルーダ(ペムブロリズマブ)を多発性骨髄腫患者さんに併用投与した初の大規模試験の結果です。ポマリスト(ポマリドミド)によって生み出された抗骨髄腫細胞性免疫の効果をキイトルーダ(ペムブロリズマブ)が高めるのでは?という仮説に基いて開始された試験だけに、併用する意義の高さが伺えます。

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の薬剤概要

製品名

キイトルーダ

一般名

ペムブロリズマブ(pembrolizumab)

用法用量

ペムブロリズマブとして200mgを2週間間隔で点滴静注する

効能効果

再発・難治性の多発性骨髄腫

主な副作用

好中球減少、高血糖、貧血、上気道感染、リンパ球減少症、疲労、間質性肺炎、甲状腺機能低下症、経静脈炎、副腎不全、白斑

製造承認日

2014年9月(国内・悪性黒色腫)

薬価

20mg:8万4488円
100mg:41万541円

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序

ペムブロリズマブ

ASCO

ペムブロリズマブはヒト PD-1 に対する抗体であり、PD-1 とそのリガンド(PD-L1 及び PD-L2)との結合を阻害することにより、腫瘍特異的な細胞傷害性T細胞を活性化させ、腫瘍増殖を抑制すると考えられている

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の最新文献

・2015年12月3日
1)Pembrolizumab in Combination with Lenalidomide and Low-Dose Dexamethasone for Relapsed/Refractory Multiple Myeloma
少なくとも2回以上の治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫の患者さんに対して、ペムブロリズマブを2mg/kg、レナリドミド10mgもしくは25mg、デキサメタゾン40mgの併用療法を投与してその薬剤投与量を決定した試験

ペムブロリズマブ(キイトルーダ)の口コミ

医師のコメント

その他医療関係者のコメント

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の治験情報

1)Study of Lenalidomide and Dexamethasone With or Without Pembrolizumab (MK-3475) in Participants With Newly Diagnosed Treatment Naive Multiple Myeloma

治験の概要

移植非適応の新規多発性骨髄腫患者さんに対して、ペムブロリズマブを200mg、レナリドミド25mg、デキサメタゾン40mgの併用療法を投与してそのPFS(無増悪生存期間)を検証する治験

治験の期限

2019年3月

2)A Phase III Study of Pomalidomide and Low Dose Dexamethasone With or Without Pembrolizumab (MK3475) in Refractory or Relapsed and Refractory Multiple Myeloma

治験の概要

少なくとも2回以上の治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫の患者さんに対してペムブロリズマブを200mg、ポマリドミド4mg、デキサメタゾン40mgを投与する群と、ポマリドミド4mg、デキサメタゾン40mgを投与する群とで比較してそのPFS(無増悪生存期間)を検証した治験

治験の期限

2018年7月

参照

1)Pembrolizumab, pomalidomide and low dose dexamethasone for relapsed/refractory multiple myeloma

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