BRCA遺伝子変異陽性の乳癌の新薬リンパルザ(オラパリブ)について

日本人女性の乳癌罹患率、死亡率は1960年代以降、一貫して増加傾向にあります。また、乳癌は女性のがんで最も罹患率が高く、がん研究振興財団のがん統計によると、癌中疾患率は23%にもなります。そのうち5~10%が遺伝性乳癌といわれており、なかでも最も多いのがBRCA遺伝子という癌抑制遺伝子に異常がある場合に発生する癌だといわれております。

このBRCA遺伝子の変異に起因する乳癌は年齢が高い人よりも低い人で発症しやすく、トリプルネガティブ乳癌の患者の場合には特にその発症リスクが高いと言われています。

現時点では日本において効果的な治療薬はないといわれています。そもそも、BRCA遺伝子の変異を確認する検査自体が保険外であり、検査だけで約40万の費用がかかってしまうのが現状です。そこで期待されているのが、

PARP阻害薬

です。PARPとはBRCA遺伝子と同様に損傷したDNA修復を手伝う酵素です。ヒトはBRCAとPARPと2つの酵素でDNA修復機能を保持しています。つまり、BRCA遺伝子が変異していて機能不全になってもPARPが正常に働けばDNA修復が可能であるということです。

そこで、BRCA遺伝子変異陽性の乳癌患者に対してPARP阻害薬を投与することで、BRCAもPARPもどちらも機能不全にし、細胞死を誘導することで癌細胞を殺傷できるのです。このPARP阻害剤の中で期待されているのが、

リンパルザ(オラパリブ)

です。リンパルザ(オラパリブ)はホルモン療法も抗HER2療法も適さない、BRCA1またはBRCA2遺伝子変異を持つ乳癌患者にとって数少ない重要な選択肢の1つとなり得ます。

なぜなら、リンパルザ(オラパリブ)はBRCA遺伝子変異陽性の乳癌患者に対して既存の化学療法と比べて有意にPFS(無増悪生存期間)を延長することが証明されたからです。さらに、ORR(全奏効率)に至っては有意差がついただけでなく、2倍も奏効率が高いことが判りましたから。また、副作用も投与中止となる可能性のある好中球減少症などの骨髄抑制は化学療法群よりもリンパルザ(オラパリブ)群の方が少ないことが判りましたから。

以上のように、リンパルザ(オラパリブ)は限られた治療選択肢しかないBRCA遺伝子変異陽性乳癌患者さんにとって重要な新薬になり得るでしょう。

リンパルザ(オラパリブ)の添付文書情報(未定)

製品名

リンパルザ

一般名

オラパリブ(Olaparib)

用法用量

未定(オラパリブとして300mgを1日2回経口投与する)

効能効果

未定(BRCA遺伝子変異陽性乳癌)

主な副作用

未定(貧血、吐き気、嘔吐、疲労、頭痛、咳)

製造承認日

2014年12月24日(米国)

薬価

未定

リンパルザ(オラパリブ)の作用機序

PARPを阻害することでDNA修復機能に異常を来した癌細胞の細胞死を誘導します。

リンパルザ(オラパリブ)の最新情報

1)Olaparib for Metastatic Breast Cancer in Patients with a Germline BRCA Mutation

概要

HER2陰性ホルモン陽性BRCA遺伝子変異陽性の進行性乳癌患者302人に対してリンパルザ(オラパリブ)を投与する群、又は標準化学療法を投与する群に分けて、PFS(無増悪生存期間)の優越性を比較検証した試験。その結果、標準化学療法に対してリンパルザ(オラパリブ)は有意にPFS(無増悪生存期間)を改善することが判りました。

出典

The New England Journal of Medicine

配信日

2017年6月4日

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リンパルザ(オラパリブ)の治験情報

1)Olaparib as Adjuvant Treatment in Patients With Germline BRCA Mutated High Risk HER2 Negative Primary Breast Cancer (OlympiA)

治験の概要

術前または術後化学療法を実施したBRCA1、BRCA2遺伝子変異陽性かつHER2陰性の乳癌患者に対して、オラパリブを投与してその有効性・安全性を検証する治験

治験の期限

2028年2月

参照
1)がん統計(がん研究振興財団)
2)アストラゼネカ株式会社プレスリリース
3)患者さんのための乳がん診療ガイドライン


この記事に利益相反はありません。

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