先進医療・費用対効果評価室による定点調査:海外承認済み、国内未承認の抗がん剤リスト更新(2018年4月時点)-国立がん研究センター-


  • [公開日]2018.04.26
  • [最終更新日]2019.03.15

国立研究開発法人 国立がん研究センター(理事長:中釜斉、所在地:東京都中央区、略称:国がん)先進医療・費用対効果評価室(室長:藤原康弘)は、2015年4月より公開している「国内で薬事法上未承認・適応外となる医薬品・適応のリスト」を2018年4月4日現在の情報で再集計し、4月23日にホームページで公開しました。

同リストは、米国FDAおよび欧州EMAが承認した医薬品のうち、がん領域において日本では未承認あるいは適応外の医薬品とその1カ月あたりの薬剤費の試算を提示したものです。これまで四半期毎に更新し、今回は2018年4月4日現在で更新を行いました。

国内で薬事法上未承認・適応外である医薬品について

また、同リストは厚生労働省の患者申出療養に関するウェブページにおいて活用されています。
厚生労働省 患者申出療養の概要について

集計結果のポイント

・2018年4月時点で、FDA/EMA既承認、日本未承認の抗がん剤はのべ65剤(55薬剤65適応症)でした。

うち、FDAのbreakthrough therapyに指定(注1)されている抗がん剤は18剤でした。

・適応症の内訳は、血液がん30剤、泌尿器がん(前立腺がんなど)11剤、乳がん5剤、皮膚がん(悪性黒色腫など)4剤、骨軟部腫瘍(肉腫)3剤、肺がん(非小細胞肺がん)3剤、卵巣がん2剤、小児がん2剤が主なものでした。

5大がん(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、肝がんあるいは子宮がん)のうち上記の乳がん、肺がん以外のがんでは未承認薬はありませんでした。

・血液がんに対する未承認薬では、新投与経路医薬品や新剤形医薬品などの、同一の有効成分がすでに国内で承認されている抗がん剤が7剤ありました。これらを除く新有効成分含有医薬品は23剤でした。

FDA既承認の新有効成分含有医薬品20剤のなかでも2015年以降に承認された抗がん剤は12剤ありました。

うち、8剤は国内での開発が進められており、開発ラグ(注2)は存在するものの今後ドラッグ・ラグの解消が期待されます。

・ 泌尿器がんに対する未承認薬では、FDA既承認の8剤のなかでも2015年以降に承認された5剤は、いずれも国内での開発が進められており、開発ラグ(注2)は存在するものの今後ドラッグ・ラグの解消が期待されます。

・65剤の抗がん剤のうち、薬剤費が判明している58剤中45剤において1カ月当たりの薬剤費が100万円以上でした。また、1カ月当たりの薬剤費が1000万円を超える抗がん剤は3剤で、 血液領域のCAR-T細胞療法(注3)が2剤、骨軟部腫瘍(肉腫)の免疫賦活薬が1剤でした。

注1 Breakthrough therapy designation(ブレークスルー・セラピー指定)
FDAの迅速承認審査制度の一つで、重篤または生命に重大な影響がある疾患(致死的な疾患)に対する医薬品の開発および審査を迅速化することを目的としています。

注2 開発ラグ
欧米で薬事承認されている医薬品が日本で承認され使えるようになるまでの時間差をドラッグ・ラグといい、内訳には開発ラグと審査ラグがあります。
開発ラグは、「治験の開始時期」、「治験にかかった期間」、「承認申請の時期」が国によって異なることから生じます。

注3 CAR-T(カーティー)細胞療法
キメラ抗原受容体発現T(CAR-T)細胞療法とは、患者さんの血液からT細胞を採取し、がん細胞上の抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)遺伝子を導入し、培養した後に患者さんの体内へ戻す治療です。
CAR-T細胞が、がん細胞上の抗原を認識して結合するとT細胞が活性化して、がん細胞を攻撃します。

参照元:国立がん研究センタープレスリリース

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