大腸癌の新薬ナパブカシンの治験を受ける前に知っておきたい7つのこと


  • [公開日]2016.12.20
  • [最終更新日]2017.09.30

大腸癌の新薬ナパブカシンとは

癌の三大治療方法とは、手術療法、薬物療法、放射線療法です。この三大治療方法にニボルマブペムブロリズマブをはじめとした抗PD-1抗体薬を加えた癌免疫療法を足して、癌四大治療方法と呼ばれています。

これら治療方法により数多くの癌を根治できるようになりましたが、依然として治療に抵抗性を示す癌、一時は治癒したものの再発する癌の存在に人類は苦戦しております。

この苦戦の原因は、退治した癌細胞を作り出す癌幹細胞が存在するためです。癌幹細胞は自分と同じ働きを持つ細胞を作り出す自己複製能、自分とは別の細胞に変化する分化ができるため、際限なく増殖ができます。

また、既存の抗癌剤、分子標的治療薬をはじめとした薬物療法が退治する標的は癌細胞のみで、癌幹細胞はターゲットになりません。ですので、癌細胞を殺しても癌幹細胞を殺さない限りは、癌を完治したとは言い切れないのです。このような背景のなか、日本の製薬企業である大日本住友製薬が

ナパブカシン

という癌細胞も癌幹細胞も標的にして殺傷できる経口分子標的治療薬を開発しております。ナパブカシンはSTAT3と呼ばれる、細胞を癌化させる働きを持つタンパク質を標的にする薬剤です。

その効果はプラセボと比較しても変わらないという結果が出ているため期待値は低いのですが、その判断は時期尚早です。

なぜなら、ナパブカシンを投与する目的は癌幹細胞を殺すことで再発、治療抵抗性を避けることだからです。つまり、癌細胞を殺す役割は抗癌剤、分子標的治療薬、抗PD-1抗体薬などの強力な薬に任せればいいからです。

ナパブカシンの薬剤概要

製品名

未定

一般名

ナパブカシン(napabucasin)

用法用量

未定(1日240mgもしくは480 mgを2回経口投与)

効能効果

未定(リン酸化STAT3陽性の再発進行大腸癌)

主な副作用

未定(下痢、吐き気、食欲不振)

製造承認日

未定

ナパブカシンの作用機序

ナパブカシンはSTAT3 をターゲットとし、がん幹細胞の維持に重要な遺伝子を阻害します

ナパブカシンの最新情報

1)A randomized phase III study of napabucasin [BBI608] (NAPA) vs placebo (PBO) in patients (pts) with pretreated advanced colorectal cancer (ACRC): the CCTG/AGITG CO.23 trial

概要

標準治療後のステージⅣ大腸がん患者に対してナパブカシン単剤とプラセボ単剤を投与してOS(全生存期間)を比較検討した試験。結果はプラセボ単剤療法に対してナパブカシン単剤療法の有効性は示せなかったが、ナパブカシン単剤が投与された患者のうちSTAT3陽性群は陰性群に対して有効性を示した。

出典

ESMO 2016 Congress

配信日

2016年9月10日

ナパブカシンの口コミ

その他医療関係者のコメント

ナパブカシンの治験情報

1)Special Combination of BBI608 and Pembrolizumab

治験の概要

既存治療に効果のないステージⅣ大腸癌患者に対して免疫チェックポイント阻害薬であるキイトルーダ(ペムブロリズマブ)とナパブカシンを併用投与した治験。

治験の期限

2021年4月

1)A Study of Napabucasin (BBI-608) in Combination With FOLFIRI in Adult Patients With Previously Treated Metastatic Colorectal Cancer

治験の概要

既存治療に効果のないステージⅣ大腸癌患者に対してFOLFIRIとナパブカシンを併用投与した治験。

治験の期限

2019年9月

参照
1)大日本住友製薬株式会社リリース
2)大腸癌治療ガイドライン

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