※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。
Skyscraper-01試験の失敗は、ロシュ社のTIGIT阻害薬への莫大な投資に疑問を投げかけるものだが、より大きな意義があるのだろうか。 ドーン! これは、別の免疫腫瘍学的メカニズムが爆発した音だ。公平に評すれば、スイス・ロシュ社のチラゴルマブが2022年最大のカタリストのひとつであるSkyscraper-01試験で失敗したことが、TIGIT阻害薬の命取りになると断言するのは時期尚早だろうが、良い兆候でないのは間違いない。 市場の初期の反応から判断すると、TIGITに大きなエクスポージャーを持つ米Arcus社と米Iteos社の投資家は、このメカニズムがIDO(indoleamine 2,3-dioxygenase)とIL-2(Interleukin-2)と並び、免疫腫瘍学分野における高価な失敗作となることを恐れている。ここでは、EvaluateのVantageチームは傲慢な考えを断ち切り、何がわかっていて何がわかっていないのか、そしてこれらが何を意味するのかを評価しようと試みた。 何がわかっているのか? Skyscraper-01試験では、PD-L1高値の非小細胞肺がん(NSCLC)患者のフロントライン治療において、チラゴルマブ+テセントリク(一般名:アテゾリズマブ)併用療法は、数値的なベネフィットはあったものの、無増悪生存期間(PFS)の点でテセントリク単剤療法に勝ることができなかった。共同主要評価項目である全生存期間(OS)の解析は未成熟である。これは、Skyscraperプログラムで2番目の重要な試験の失敗であり、まだ8つの試験でリードアウトが行われていない。 何か警告のサインはあったのだろうか? Skyscraper-02試験の失敗はその1つだが、小細胞肺がん(SCLC)の難治性を考えると、これは簡単に片付けられるものだった。ほかにも大きな危険な予兆が3つあった。これらはすべて、NSCLCのファーストライン治療でロシュ社のテセントリクに対する併用療法を検証したCityscape試験からのものだ。 この試験では、チラゴルマブはテセントリクよりも寛解とPFSの点で有効性が高いことが示されたが、それはPD-L1高発現患者のみであり、その効果はテセントリク単剤療法のImpower-110試験よりも不調であったことにより意味合いは薄れた。有効性とTGITの発現の間に関連性はなかった。結局、これらの事実は、TIGIT阻害薬が関係者に何をもたらすかについて疑問を投げかけている。 では、ロシュ社は何を考えてこの大規模なプログラムに着手したのだろうか? 2020年1月、ロシュ社が10本のSkyscraper試験のうち最初の試験にチラゴルマブを静かに投入したとき、投資家は、自社で説得力のあるデータを持っているに違いないと考えた。しかし、その後のCityscape試験の結果を除いては、上記の欠点もあり、現在8,365人の患者を登録する目標であるプログラムへの熱意を裏付けるものはほとんど出てきていない。 ポジティブな要素はあるのだろうか? 数値的な改善にもかかわらず統計的有意性がないことは、Skyscraper-01試験の検出力が不十分であった可能性を示唆しており、PFSのベネフィットがないことを全生存の失敗につながる必要はない。肺がん領域での後退は、必ずしも他の領域でのチラゴルマブの失敗を意味しないし、それぞれの抗TIGIT抗体はわずかに異なる機能を有する。 他のTIGITプロジェクトの予兆はどれほど悪いのか? 確固たる結論を出すには、Skyscraper-01試験の全データが必要だが、特にロシュ社の初期のCityscape試験のデータセットに匹敵する、あるいは意味のある単剤活性を示すTIGITの開発者が他にいないことから、状況はあまり良くなさそうだ。一方、TIGIT抗体は結合部位、IgGタイプ、Fc機能に違いがあり、すべてが同じというわけではない。
