2016年8月31日に日本でも多発性骨髄腫の新薬カイプロリスが発売となりました。

多発性骨髄腫の新薬としては、サレド、ベルケイド、レナリドミド、ポマリスト、ファリーダックに次ぐ6剤目で、プロテアーソム阻害薬としてはベルケイドに次ぐ2剤目となります。

カイプロリスは次世代プロテアソーム阻害薬として位置づけられ、その効果はベルケイド以上に期待されています。

実際、この期待に応えるようにして、カイプロリスはベルケイドと直接比較した第三層試験のENDEAVOR試験においてその有効性の高さを証明しております。

この試験では、ベルケイド+デキサメタゾン併用療法よりも、カイプロリス+デキサメタゾン併用療法の方が、PFSといわれる治療開始から癌の進行または癌による死亡までの期間の延長が証明されました。

この試験の結果を受けて、多発性骨髄腫の治療薬としてベルケイドよりもカイプロリスが期待されているのですが、ベルケイドよりもカイプロリスの方が薬剤として優れるとは単純に言い切れない理由が2つあります。

1つ目は、ENDEAVOR試験のカイプロリスの投与量が日本国内で承認されている容量よりも2倍である点です。

カイプロリスの2サイクル目以降の投与量は27mg/m2ですが、ENDEAVOR試験ではその倍の56mg/m2が投与量として設定されています。

また、併用する薬のエビデンスが少ない点です。ベルケイドと比較してPFSが勝ったのはデキサメタゾンを併用した治療薬のみで、メルファランをさらに追加した治療法のエビデンスはまだありません。

上記リンクにあるCLARION試験の結果が出ない限りは、メルファランを足した併用療法においてベルケイドより優れるとは言い切れません。

以上のように、カイプロリスはベルケイドよりも期待されたプロテアーソム阻害薬であるものの、その期待を裏付ける結果を日本人の多発性骨髄腫の患者に適応するのは時期尚早です。

しかし、カイプロリスはベルケイドにない明らかな違いがあります。それは、

末梢神経障害の発現率の低さ

です。

Nonproteasomal Targets of the Proteasome Inhibitors Bortezomib and Carfilzomib: a Link to Clinical Adverse Events

同じプロテアーソム阻害薬でありながら末梢神経障害が少ない理由は、カイプロリスはベルケイドと比べてプロテアーソムに対して高い選択性を示し、かつプロテアーソム以外のその他のプロテアーゼを阻害しないためです。

この違いは有効性以上に臨床的意義が大きいです。なぜなら、ベルケイドは高い抗腫瘍効果はあるものの、末梢神経障害の副作用により投与中止に至る機会が多いからです。

どんなに有効性のある薬剤であっても、その有効性を最大限に発揮する前に投与中止になってしまっては元も子もありません。

以上のことから、ベルケイドよりも末梢神経障害の発現率が低いカイプロリスには多発性骨髄腫の治療薬として期待できるでしょう。


この記事に利益相反はありません。

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