あなたは医師ですか。
新規薬剤の迅速な承認に向けた日本の制度利用を目指して:患者の視点から現在の課題を考える 第22回日本臨床腫瘍学会学術集会より
[公開日] 2025.04.18[最終更新日] 2025.04.17
3月6日~8日、第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO 2025)が神戸コンベンションセンターで開催された。「会長企画シンポジウム 3:激論!『条件付き承認制度』の活用はドラッグ・ロス対策に有用か!?」のセッションにおいて、「患者利益から考える条件付き承認制度の活用と改善策」と題して眞島喜幸氏(パンキャンジャパン、日本希少がん患者会ネットワーク)が発表した。
日本においては、2024年の10月に、「医薬品の条件付き承認の取扱いについて」の一部改訂が行われた。例えば、日本人患者を対象とした臨床試験成績なしに承認申請を行う場合等に、条件付き承認制度が使われることになり、新薬開発の加速が期待される。
膵臓がんと希少がんを経験した眞島氏は、いずれのがんも他のがん全般と比較して非常に予後が悪く、常に新しい治療選択肢を求めていることを強調。眞島氏は、ドラッグ・ラグの解消に向けて政策提言活動を続け、2015年には申請ラグが0.3年にまで短縮することができたと話す。しかしながら、ドラッグ・ラグの次に出てきたのがドラッグ・ロスの問題だ。「やっとドラッグ・ラグがなくなったと思っていたら、今度は“ラグ”どころか日本に新薬が入ってこないドラッグ・“ロス”が深刻化しているという話を聞くようになりました」(眞島氏)
ドラッグ・ロス問題は、新薬開発の主役が大手の製薬企業ではなく、海外の新興バイオファーマへ移行してきたことが背景にある。新興バイオファーマに対して日本での新薬開発を呼びかけているものの、日本に振り向いてくれない現状があると眞島氏。その原因は、日本の市場における参入障壁があることだ。具体的には、欧米と比較して高い治験コストや長い審査期間、国際共同試験への参加の高い難易度、薬価引き下げリスクがある。眞島氏によると、日本で上市される新薬は欧米の半分以下であり、国内未承認薬の割合はまさにドラッグ・ラグが解消された2015年以降上昇傾向にある。例えば、現在第3相試験として開発が進んでいる膵臓がん48品目のうち、日本でも開発が実施されているのはたった3品目であるという。
確かに日本でも、米国における迅速承認制度と同様の条件付き承認制度が整っている。にもかかわらず、新規開発医薬品における2022年時点での制度適用割合は、米国の59.5%に対して日本では25.0%にとどまっている。
また希少疾患においても、希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定制度があるが、実際に適用された医薬品は2022年時点でも米国の10分の1以下にとどまっているのが現状だ(米国:オーファン指定402件うち承認73件、日本:オーファン指定25件うち承認2件)。
眞島氏は、制度があることだけでは不十分であり、それが活用されなければ、新薬が患者さんに届かない、と話す。「患者さんは待てないので、制度を活用してできるだけ早く新薬が使えるようにしてほしい。ドラッグ・ロスを解消してほしい、というのが患者側の願いです」(眞島氏)
最後に眞島氏は、欧米では患者団体とアカデミア、行政、企業が一緒になって課題解決に向かう流れになってきていることを指摘。日本でも皆さんと一緒に今の日本の課題に取り組んでいきたいと語り、講演を締めくくった。
関連リンク:
第22回日本臨床腫瘍学会学術集会
ニュース
JSMOドラッグ・ラグドラッグ・ロス
治験・臨床試験
一覧を見る
リサーチ・調査
一覧を見る
ニュース
一覧を見る
イベント
一覧を見る
患者会
一覧を見る
ログインいただくと特定のがん種の最新情報をお知らせしたり、チャットでご相談していただけるようになります。