学会で語られた慢性骨髄性白血病と濾胞性リンパ腫の治療最前線-第82回 日本血液学会学術集会 視聴報告-


  • [公開日]2020.11.25
  • [最終更新日]2020.11.25
名称:第82回日本血液学会学術集会 The 82nd Annual Meeting of the Japanese Society of Hematology
テーマ:血液学―多様性の追求 Exploring diversity in Hematology
会期:2020年10月10日(土)~11月8日(日)17:00
会場:WEB開催
会長:宮﨑 泰司 先生(長崎大学原爆後障害医療研究所 原爆・ヒバクシャ医療部門 血液内科学研究分野(原研内科)教授)

今回の学術集会は新型コロナウイルス感染症の拡がりを受け、Web中心のVirtual開催となりました。一部のプログラムのみ、京都の会場で実施されましたが、会場での視聴および参加は限定されており、新型コロナウイルス感染症の影響が出ておりました。

この記事では教育講演(教育的な基本的内容の講演、医師となられたばかりで血液を専攻する前の研修医の先生方や、内科関連の学会に初めて参加する先生方向けの講演)の中から、以下慢性骨髄性白血病(略語:CML)と濾胞性リンパ腫(略語:FL)の講演をご紹介いたします。

※患者さん・ご家族のみなさんにも読んでいただきやすいように、講演とは表現内容を一部変更しております。ご了承ください。

慢性骨髄性白血病治療と予後の最前線

[演者] 佐々木 宏治 先生(MD Anderson Cancer Center, USA)

慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia、以下:CML)はチロシンキナーゼ阻害剤(以下:TKI)の登場により、劇的に予後が改善した。化学療法での治療時代、CMLは致死的疾患であったが、TKI登場が大幅な予後改善をもたらした。それによりCMLは長期に安定した疾患となり、治療目標として“患者さんの生存率を低下させない”という点が治療ゴールへと変化した。

“患者さんの生存率を低下させない”ために意識することは、治療早期から深い奏功を獲得する、という点である。実際にデータとして、治療開始後1年以内に細胞遺伝学的完全寛解(CCyR)を達成すると一般の方々と遜色ない生存を得ることができる。(※治療効果の説明に関しては下部に記載)

では、実際にどの時点でどういった効果を得ることを目標とすればよいのか?European Leukemia Netから発表されたELN2020では以下とされている。治療開始から3ヶ月ごとに治療効果【BCR-ABL/ABL(%)】を確認し、Failureの場合は治療の変更を検討し、warningの場合には治療継続か治療変更か注意深く検討する必要がある、とされている。


■出典 European LeukemiaNet 2020 recommendations for treating chronic myeloid leukemia

現在CML治療薬のTKIは、

  • 第1世代のイマチニブ(グリベック)
  • 第2世代のダサチニブ(スプリセル)、ニロチニブ(タシグナ)、ボスチニブ(ボシュリフ)
  • 第3世代のポナチニブ(アイクルシグ)

の5種類が存在する。本講演ではポナチニブの使用に関しても言及された。

第2世代TKI抵抗性/不耐用の(第2世代TKIで治療を行っても効果が不十分・もしくは副作用等で使用できない)患者、またはBCR-ABLにT315I 変異を有する患者を対象としたPACE試験が実施されたが、18~94歳と比較的高齢の方も試験に登録され、また第2世代TKI抵抗性の方、T315I変異を有する方が対象など患者背景が厳しいにも関わらず、全体の55%が主要評価項目である細胞遺伝学的大寛解(MCyR)を12ヶ月目までに達成し、T315I陽性患者の70%がMCyRを達成した。5年生存率は70%を超え、生存率を改善することが報告された。こうした結果もあり、ELN2020でもハイリスク染色体異常有する患者、2次治療抵抗性の症例にポナチニブが推奨されている。

一方でポナチニブに関しては、心血管有害事象に関してFDAの勧告もあり、副作用には注意が必要である。(ただ心血管イベントに関しては他のTKIでも報告があり、TKI使用の際には注意が必要である)

ポナチニブ投与を検討する際は、高脂血症、糖尿病、高血圧等の合併症をお持ちの場合には積極的に薬物治療を検討し、また予防投与も検討してもよいとされている。

また心血管イベントに関しては、投与量と相関することもわかっており、ポナチニブを15mgに減量することにより、イベントを33%減少できるとの報告もある。

投与量の検討に関しては現在、OPTIC試験が進行中であり、ポナチニブの投与量45mg、30mg、15mgで比較検討している。

TKIの副作用に関しては幅が広く、薬剤毎に特徴的な副作用が存在するため、注意が必要である。

CMLに関しては、どういった患者が治療を実施しなくてよい期間(トリートメントフリーインターバル、以下:TFI)を設けられるかという点も課題である。

これに関しては、EURO-SKI試験にて報告がされており、2年時点で5割の患者では治療再開の必要がないとの報告がある。TFIを設けることにセカンドチャンスはあるのか?という点に関してはRE STIM試験があり、この試験での成功は35%であった。この試験から初回で中断を断念したとしても、将来的に治療を中断できる可能性があることが報告されている。この35%という成功割合を上昇させる方法として、ポナチニブを投与し、より深い効果を得てから治療中断を行う試験が現在進行中であり、今後の報告が期待される。

ただ治療中断に関しては注意が必要である。CMR獲得後に治療中断を行い、MR4は失うもMMRは維持していた症例で、白血球の増多なしにlymphoid crisis(リンパ性転化)を来した症例があり、このような症例もいるため、治療を中断しても継続的にモニタリングが必要だと言える。一方で一生涯この薬を飲み続けましょう、というのも患者にとっては辛いことであり、その判断は現状困難であるため、今後の研究が必要であると締めくくられた。

CMLの治療効果判定について
CMLのCP期(慢性期)の治療効果は、血液学的奏効(hematologic response:HR),細胞遺伝学的奏効(cytogenetic response:CyR)、分子遺伝学的奏効(molecular response:MR)の3つのレベルで判定をします。(下記図参照)。血液学的奏功は血液もしくは骨髄検査の所見を確認し判断、細胞遺伝学的奏効は骨髄細胞中のフィラデルフィア染色体(Ph染色体)の割合判断、分子遺伝学的奏効は新型コロナ感染症で一気に有名になったポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)検査により、血液細胞中のBCR-ABL1遺伝子発現量で判断されます。


*1以前に用いられていたELN2009では分子遺伝学的完全(complete)奏効(CMR)と定義された奏効レベル
*2 BCR-ABL1IS:国際指標で補正された値
■参照 日本血液学会 造血器腫瘍ガイドライン

濾胞性リンパ腫治療と予後の最前線

[演者] 福原 規子 先生(東北大学病院 血液内科)

濾胞性(ろほうせい)リンパ腫(Follicular lymphoma、以下FL)はB細胞性リンパ腫でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に次ぐ疾患である。近年増加しており、リンパ腫全体の約2割を占める疾患である。低悪性度で経過は緩徐であるが、治癒は困難とされている。治療法は限局期と進行期かによって異なる。

■進行期・低腫瘍量
リツキシマブリツキサン)が導入され、予後が改善した。リツキシマブは安全性も高く、単剤でも治療効果がみられる。進行期・低腫瘍量においては、早期介入により高腫瘍量への進展を抑えることが目標となる。

第III相試験のRWW試験では、未治療患者を対象に標準となる無治療経過観察とリツキシマブ導入療法、リツキシマブ導入+リツキシマブ維持療法を比較し、新しい治療開始までの期間(Time to start of new treatment)を検討した。リツキシマブ早期介入は新規治療への開始を遅らせるが、OSは改善しないことが報告された。無治療経過観察でも3年時点で、5割の患者は新規治療を必要としないという結果であった。

―まとめ―

  • 無治療経過観察も治療選択肢として考えられ、症例によっては長期に治療が不要という点が明らかになった
  • 低腫瘍量に対するリツキシマブ単剤の維持療法の有用性は明らかにされていない
  • リツキシマブの最適な介入時期が今後の検討課題である

■高腫瘍量
化学療法の多剤併用(複数の薬剤を同時に投与する治療)にリツキシマブを上乗せした治療が標準療法である。リツキシマブのベストパートナーを検討した試験として、ドイツからのStiL試験がある。未治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫(iNHL)(FL等を含む)を対象に、 R-CHOP(リツキシマブとCHOP療法の併用)とBR(ベンダムスチン【トレアキシン】とリツキシマブ併用)を比較した試験である。非劣勢を証明する(効果が劣らないことを比較して検討する)ための試験として開始となったが、45ヶ月地点のPFSで、BRの優位性が確認された。OSは両群で差は見られなかった。BRの副作用で特徴的なものとして、脱毛がない点、リンパ球減少や皮疹が見られる点である。

アメリカからも同様の報告があり、未治療のiNHL等を対象にR-CHOPもしくはR-CVP(リツキシマブとCVP療法の併用)とBRを比較した試験で、奏効率(CR rate)とOSは両群共に差はなく、PFSはBR優位という結果が報告された。

リツキサン上乗せ化学療法後のリツキサン維持療法を検討した試験として、PRIMA試験がある。未治療の高腫瘍量FLを対象に、R-CHOPもしくはR-CVPもしくはR-FCM(リツキシマブとFCM療法の併用)での治療でCRもしくはPRの効果獲得後に、経過観察もしくはリツキシマブ維持療法を2ヶ月毎に2年間行うという試験である。昨年、長期フォローアップ結果が報告され、10年時点のPFSは51.1%と35%とリツキシマブ維持療法で優位な結果であったが、10年時点のOSで差はなかった。10年OSは80%であり、ここでもFLは経過の長い疾患であることが示された。

FLで使用できる新規薬剤として、オビヌツズマブがある。未治療FLを対象とした第III相試験の試験として、GALLIUM試験がある。R-CHOPもしくはR-CVP等のリツキシマブ併用化学療法後のリツキシマブ維持療法群とO-CHOP(オビヌツズマブとCHOP療法の併用)もしくはO-CVP(オビヌツズマブとCVP療法の併用)等のオビヌツズマブ併用化学療法後のオビヌツズマブ維持療法群を比較した試験である。なお、化学療法は各施設で選択をしている。この結果、3年時点PFSはオビヌツズマブ群で80%、リツキシマブ群で73%とオビヌツズマブ優位であったが、3年時点OSで差はなかった。

―まとめ―

  • 抗CD20モノクローナル抗体併用化学療法が標準療法である
  • 組み合わせる化学療法は有害事象や疾患の状態によって考慮が必要である
  • リツキシマブ維持療法はPFS延長させる
  • RB後の維持療法の有用性は不明である
  • オビヌツズマブはリツキシマブをPFSで上回った

■再発期
再発期に関してはGADOLIN試験がある。リツキシマブ抵抗性の低悪性度非ホジキンリンパ腫(iNHL)(FL等を含む)患者を対象に6サイクルのベンダムスチン単剤と6サイクルのOB(オビヌツズマブとベンダムスチン併用)を比較した試験である(PDでない場合は2年間の維持療法を実施)。この試験ではOB群が有意差をもってPFS、OS共に改善をすることが示された。

AUGMENT試験ではリツキシマブ単剤もしくはRR(リツキシマブとレナリドミド併用、レナリドミドは1年継続)を比較検討している。この結果、RRで有意差をもってPFSを改善することが報告された。RRの有害事象はレナリドミド起因と思われる血球減少、倦怠感、便秘等があり、また免疫機序の関連と思われる皮膚障害、インフルエンザ等特徴的であるため、注意が必要である。

早期再発例は予後不良と言われ、約2割程度は2年以内に再発するとの報告がある。BR療法後も同様のことが言われており、2年以内に再発した例の3、4割で形質転換が大きく関わっていると予想される。

再発時期に関しては2年以内でも予後が異なっており、6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月で比較した際、6ヶ月以内だと予後が非常に厳しいことが確認された。特に1年以内の再発では形質転換例が含まれる。

少数例であり、まだ検討が必要であるが、治療前のステージングで、CTとPETで行った場合では早期再発の予後が異なるとの報告があり、PETの場合は形質転換を疑う例を事前に確認できる。

―まとめ―

  • 再発時の治療は様々であり、各治療の優劣の判断は難しい
  • 初回化学療法後2年以内の早期再発例は予後不良である(特に1年以内)
  • 高腫瘍量群に対する初回化学療法の治療成績は向上しているが、形質転換割合は改善していない
  • 再発時は形質転換の有無により治療方針を検討する必要がある
リンパ腫の形質転換とは?
FL はリンパ腫の中で疾患の進行が比較的ゆっくりであり、低悪性度のリンパ腫に分類されています。しかし進行が速い別の種類のリンパ腫に変わることがあり、これを形質転換と言います。FL患者さんでは年間2~3%の割合で起こるといわれており、注意が必要です。

■新規治療
FLで開発中の薬剤にEZH2阻害剤(タゼメトスタット)がある。この変異は約2割程度に見られ、タゼメトスタットはEZH2遺伝子変異陽性例で高い効果を示す。

PI3K阻害剤は欧米で3つの薬剤が承認を受けており、効果も比較的高く、また早期に効果発現が見られる。

CAR-T療法に関しては、DLBCLではすでに承認され、またRR FL(再発難治FL)に効果があると報告されている。形質転換例FL、またRR FLに対しては重要な選択肢となると言える。FLは特殊な微小環境を有しているため、腫瘍免疫に由生する治療の発展と、また新たな予後指標の確立も求められる。

聴講を終えて

佐々木先生も講演の冒頭で触れてらっしゃいましたが、昔は確かに“血液がん=不治の病”というイメージがあったかと思います。しかし数多くの薬剤が研究開発され、複数のがん種において、治療成績は向上を遂げています。

治療成績が向上するということはつまり、皆さんが病気と付き合い治療をしながら生活をしていく期間が延びる、ということかと思います。そうなると大事になってくるのはQoL(クオリティオブライフ、生活の質)という部分になるのではないでしょうか。治療には副作用がどうしてもつきものですが、副作用はQoLに大きな影響を与えます。先生方も“副作用は薬剤によって特徴がある”と触れてらっしゃいましたが、「自分が受ける治療にはどういった副作用があるのか」「副作用が出た場合はどうすればいいか」ということは、患者さんやご家族にとても重要な情報かと思いますので、治療を始める際、または治療を変更する際にはご自身で調べたり、先生に相談をして、納得した上で治療を開始いただければと思います。

今後も各疾患で新たな薬剤が登場してくると思います。オンコロでも新薬情報を継続して皆さんにご紹介ができるよう、努めて参ります。

■関連リンク
第82回日本血液学会学術集会

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