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遺伝子パネル検査の恩恵をより多くの患者さんに届けるために ~第62回日本癌治療学会学術集会より~
[公開日] 2024.11.19[最終更新日] 2024.11.28
10月24日~26日、第62回日本癌治療学会学術集会が福岡コンベンションセンターで行われた。同学術集会における「がんゲノム医療の現状と未来~多遺伝子パネル検査の臨床導入のインパクト~」のセッションの中で、現在のパネル検査と治療選択肢に関する総論を、下井辰徳先生(国立がんセンター中央病院 腫瘍内科医長)が講演した。
発表の中で下井先生は、今後の検査と治療のあるべき方向性に関して、現在の“標準治療終了(見込み)後”ではなく、初回診断時から検査を可能にすることで、遺伝子変異に基づく治療薬を使えるチャンスが増え、より高い治療効果につながるのではないか、と提案。そしてその実現に向けた課題を3つ提示した。
まず一つ目が、初回診断時からのCGP(包括的がんゲノムプロファイリング)検査の有益性に関するエビデンスの構築である。これに関して下井先生は、FIRST-Dx試験の結果を例に挙げ、初回治療前にCGP検査をすることで、61%の患者さんに対して推奨される分子標的薬が見つかったこと、またこれは現在の(標準治療後の検査による)治療薬への到達度(約1割)よりも高いことを強調。初回診断時から検査を実施することの有用性は十分示されている、と述べた。
二つ目は、CGP検査の結果の解釈のために開かれる会議、エキスパートパネルの運用の見直しである。今後CGP検査実施件数の増加に伴い、エキスパートパネル開催による医師の負担も増えていくことが懸念される。この点に関して現在、AIを使って推奨治療を提案する試みや、エキスパートパネルの簡略化等が検討されており、今後は海外同様に、日本における現行のエキスパートパネルの実施は必須とされない流れになっていくことが見込まれる。
三つ目は、臨床試験数の増加である。下井先生は患者申し出療養制度の現状に関しては、運用費の確保が難しいこと、また同制度によって実施された試験だけでは保険適用は難しいことなどの限界を説明。今後は医師主導治験の推進や臨床試験登録の迅速化などが必要である、とコメントした。現在臨床試験登録の効率化に向けた取り組みとして、「医療関係者間コミュニケーションアプリJoinを使った臨床試験に関するオンラインコンサルテーションシステム構築に関する実証化研究(Connect-Clinical-trials)」の準備を実施中とのこと。適格条件の確認プロセスの効率化により、患者さんの臨床試験が臨床試験に参加できる機会が増えることが期待される。
最後に下井先生は、日本におけるドラッグロスが加速している状況、そしてそれが特に抗悪性腫瘍薬で多いことを強調した。「CGP検査後に患者さんにとって適切な治療を提供するために、エビデンスレベルの高い医薬品の治験を増やすこと、また治験実施医療機関の質の底上げが重要であり、産官学が連携して推進すべきであると考えています」(下井)
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