• 検索
  • 相談
  • お知らせ
  • メニュー
  • がん種
  • 特集
  • 治験
  • リサーチ
  • イベント
  • 体験談
  • 患者会
  • 辞典
  • お役立ち

遺伝子パネル検査の普及に向けた現状と課題 ~第62回日本癌治療学会学術集会より~

[公開日] 2024.11.01[最終更新日] 2024.11.28

10月24日~26日、第62回日本癌治療学会学術集会が福岡コンベンションセンターで行われた。同学術集会では、「がんゲノム医療の現状と未来~多遺伝子パネル検査の臨床導入のインパクト~」のセッションの中で、実臨床におけるパネル検査の実情がいくつか報告された。 ひとつが「初回治療前の包括的ゲノム解析による個別化治療:FIRST-Dx試験の1年間の追跡データ」に関する蘆田玲子先生(和歌山県立医科大学附属病院 内科学第2講座)からの発表だ。 FIRST-Dx試験は国内6施設による前向き共同研究で、未治療の進行固形がん(消化器がん、肺がん、乳がん、婦人科がん、メラノーマ)を対象に包括的ゲノムプロファイリング(CGP)検査(同研究ではFoundationOne(R) CDx)の臨床的有用性を検証した試験である。解析対象の172症例のうち,エキスパートパネルで何らかの治療が推奨された症例が105例(61.0%)あり、そのうちコンパニオン診断に含まれる遺伝子変化が49例(28.5%)に認められていた。この結果から治療導入前にがん遺伝子パネル検査を行うことで,がんゲノム医療につながる患者が増えることが強く示唆されていた。[JAMA Netw Open 2023: https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2807341] 今回の学会では、1年間の追跡調査による先行CGP検査の臨床的ベネフィットの検討結果が報告された。 追跡期間中央値15.1ヵ月時点において、全生存期間(OS)中央値は未到達、推奨された分子標的治療(MBRT)を受けた症例は39例(到達率22.7%)であり、そのうち21例が初回治療、20例が2次治療であった。 全奏効率(ORR)は、初回MBRT群で56.3%[95%信頼区間:29.9-80.2%]、初回標準治療(SOC)群で42.3%[95%信頼区間:33.9-51.1%](N=137)、2次MBRT群で26. 3%[95%信頼区間:9.1-51.2%]、2次SOC群で17.1%[95%信頼区間:9.7-27.0%](N=82)であった。 PFSの中央値は、初回MBRT群で12.9ヵ月[95%信頼区間:7.4ヵ月~未到達]、初回SOC群で11.3ヵ月[95%信頼区間:8.6ヵ月~14.1ヵ月]、2次MBRT群で6. 9ヵ月[95%信頼区間:2.8ヵ月~未到達]、2次SOC群では5.7ヵ月[95%信頼区間:3.7ヵ月~7.4ヵ月]であった。 2次治療MBRTのPFS比(N=15)(2次治療MBRTのPFS/1次治療のPFS)については、PFS比中央値は1.1(範囲:0.1-14.6)、PFS比1.3以上の症例は33.3%であり、MBRTが臨床転帰の改善に有効である可能性が示された。 以上の結果から、初回治療の前にCGP検査によって同定されたMBRTが、固形がんの経過早期患者においてSOCよりも良好な治療成績をもたらすことを示した。蘆田先生によると、現時点ではエビデンスレベルの高い薬剤(保険適用となっている薬剤)へのアクセスがメインであったが、エビデンスレベルが低いもの(適用外使用の薬剤)に対して、薬剤に到達できるような体制づくりの構築が重要になってくる。 上述のような適応外の薬剤へのアクセスの問題点を受けて、松原淳一先生(京都大学医学部附属病院 腫瘍内科)から「がん遺伝子パネル検査結果に基づく治療における適応外薬剤使用についての国民意識調査」と題して、抗がん剤の適応外使用に関する日本の世論調査の結果が報告された。 2024年2月15日から19日にかけて、40歳以上の非がんボランティア(non-CA)、がん患者(CA)、医療従事者(MP)を対象に、オンライン調査を実施。調査内容は、CGPによるMBRT実施に関する説明資料と、費用に応じた抗がん剤の適応外使用に関するアンケートである。non-CA412人、CA419人、MP430人の計1261人から回答を得ており、CAの具体的ながん種は、消化器がん、乳がん、泌尿器がんで75%を占めた。 MBRT説明資料の理解度に関しては、よく理解できた/理解できたという回答が、MP群では80%に達したのに対し、CA群では60%、non-CA群では50%未満であった。抗がん剤の適応外使用の希望の有無に関しては、費用負担がない場合には、使用を希望する割合がMP群で51%、非CA群で50%、non-CA群で51%であったが、費用負担がある場合には、使用を希望するとの回答割合が大幅に減少する傾向があった。 適応外使用を希望する理由としては、「効果に期待したいから」、「将来的ながん治療に貢献できると思うから」、などが多かった。また希望すると回答した人の特徴として、説明資料の理解度が高いことが挙げられた。一方で、使用を希望しない理由としては、費用の負担に続き、「効果および安全性に不安があるから」、「適応外使用に対する心理的抵抗感があるから」などが挙げられた。 松原先生は、CGP検査の普及に伴い、今後ますます適応外の薬剤の使用が推奨されるケースが増える可能性が高いことを指摘。薬剤の適応外使用に対する不安を解消し正しい理解が広まるような説明の工夫、また費用負担の軽減およびにアクセスしやすい体制作りが最重要課題である、と述べて講演を締めた。 関連リンク 第62回日本癌治療学会学術集会 ウェブサイト
ニュース 検査 CGPJSCOがん遺伝子パネル検査

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

治験・臨床試験

一覧を見る

リサーチ・調査

一覧を見る

ニュース

一覧を見る

イベント

一覧を見る

患者会

一覧を見る