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多職種で実現する就労両立支援:現状とそれぞれの立場で今できること ~第65回日本肺癌学会学術集会より~

[公開日] 2024.11.08[最終更新日] 2024.11.28

目次

10月31日~11月2日、第65回日本肺癌学会学術集会がパシフィコ横浜で行われた。同学術集会の「就労両立支援『Break The Border』~院内・外の垣根を取り払い,チームで取り組む支援を目指して~小細胞肺癌に対する治療戦略」のセッションの中で、「主治医から物申す」と題して池田 慧 (神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科)が、また「働く患者から物申す」と題して長谷川一男氏 (NPO法人肺がん患者の会ワンステップ)が発表した。

治療の進歩によって仕事を続けるための支援も必須に

肺がんの治療の進歩により長生きが可能となったことは、高い治療費や副作用の負担も長期にわたることを意味するとし、仕事を続けていくための支援も必須だと池田先生。また、個々の状況に合わせた支援の実現には、医療機関と企業と支援センターによるトライアングル型の支援による個別化が必要だ。「びっくり離職の予防はもちろんですが、治療に伴い変化する状況のタイムリーな情報をキャッチし、フォローを継続する必要があります」(池田先生) しかしながら、就労支援の必要性を感じていながらも、日々の忙しさが原因で、実際には患者さんとの仕事の話を避ける医師が多いこと、その結果ハブとなる相談支援センターなどに繋がらないことが、就労支援の律速となっている現状がある。 医師だけをあてにしないで、と池田先生。看護師や薬剤師には、患者さんに対する生活や仕事に関する声かけや他職種への情報共有を、また患者さんの生活を間近で見ている医療ソーシャルワーカー(MSW)や支援センターには成功事例の共有による医師のモチベーションアップのきっかけ作りを呼びかけた。また、スタッフが入れ替わっても持続可能な体制になるよう、院内フローの作成の重要性を強調した。 さらに、患者さん自身でできることも多い、と池田先生は話す。支援の流れを患者さんが早い段階で理解し、自身で職場の相談場所の状況把握や書類の受け渡しなどができるような体制作りの大切さにも言及した。 最後に、産業医に対しては「患者さんの一番の味方でいて欲しい」とし、そのためには産業医における最新のがんの知識のアップデートが必要であることを強調した。池田先生が経験した実際の例として、進行肺がんの社員に対し、仕事を続けることが難しいと考える産業医がいたことを紹介。これは今の時代には非常に稀な例だとしつつも、産業医が最新のがん治療に触れる機会があまりない現状を指摘。最近の取り組みとして、愛知県がんセンターを中心に設立された「がん就労を考える会」に言及し、同様の取り組みを全国に広げるべく、産業衛生学会と肺癌学会のコラボ企画などを今後の課題として挙げた。 治療によって患者さんに長生きしてもらうことだけが医師の役割ではなく、これからは患者さんが長生きすることの意義を一緒に考えることも医師の責任だと思う、と池田先生。「仕事の話など、治療以外の話題の持つインパクトの大きさに気づいてもらえるような活動をしていきたいと思います。医師だけの力では不可能なので、患者さんにより近い立場の看護師・薬剤師さんやソーシャルワーカーの方にも積極的に声をあげていただきたいです」(池田先生)

「バトンは患者に来たのではないか」(長谷川氏)

続いて患者の立場である長谷川氏は、今回の演題タイトル「働く患者から物申す」に合わせ、それぞれのステークホルダーに向けたメッセージを発信した。 まず医療者に対しては、「就労に関しては(患者に対して)複数回言ってください。必要であれば専門家に繋いでください」と長谷川氏。2019年のアンケート調査において、医師側が仕事について“相談した“と回答しているにも関わらず患者側は“相談していない“と回答する割合が高いという結果が出ていたことから、医師と患者の認識のギャップがあることを指摘。ただし、今後治療選択肢が増えるにつれSDM(シェアード・ディシジョンメイキング)が益々必要な時代になってくるため、仕事に関する話は避けて通れなくなっていくのでは、とこれからの流れに期待を示した。 続いて社会に対して、長谷川氏は「決めつけないで。患者を知ることから始めてほしいです」との願いを語る。がん患者が周囲からの配慮で戸惑った経験を共有し合った経験を紹介し、がん患者に対する間違った認識があることを指摘した。 最後に患者さんに対して、「バトンは患者に来たのではないか。できることはやろう」と長谷川氏。前述の戸惑った配慮に対する患者自身がとった行動として、相手と距離を取る、我慢したとの回答が上位に上がったことを示し、「自身の気持ちを相手に伝えられていないのではないか」と語る。世の中の偏見に対して屈するのではなく、自分たちでイメージを変えるところから始めるべきだとし、その中で就労支援体制作りにおいて患者自身ができることも見えてくるのではないか、とコメントした。 最後に長谷川氏は「患者は医師に対して、病気以外のプライベートな悩みまで話してよいのかな、と考えてしまいますが、SDMの実現にはそのような話も不可欠になってくると思います。仕事も含めたプライベートな相談も当たり前にできるような流れができると良いなと思います」と語った。 関連リンク 第65回日本肺癌学会学術集会 ウェブサイト
ニュース 仕事(就労)

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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