• 検索
  • 相談
  • お知らせ
  • メニュー
  • がん種
  • 特集
  • 治験
  • リサーチ
  • イベント
  • 体験談
  • 患者会
  • 辞典
  • お役立ち

周術期免疫チェックポイント阻害剤の日本人データ

[公開日] 2024.11.11[最終更新日] 2024.12.05

目次

10月31日~11月2日、第65回日本肺癌学会学術集会がパシフィコ横浜で行われた。同学術集会では、周術期の免疫チェックポイント阻害剤に関する日本人集団に関するデータが複数発表された。本稿では、その発表内容をまとめてお伝えする。

Presidential Session-3:Neoadjuvant nivolumab+chemo and adjuvant nivolumab in resectable NSCLC:CheckMate 77T Japanese data

発表者:田中文啓先生(産業医科大学第2外科) CheckMate 77T試験は 、切除可能なIIA期-IIIB期の非小細胞肺がん(NSCLC)において、術前オプジーボ(一般名:ニボルマブ)+化学療法および術後にオプジーボを投与することで、術前化学療法および術後プラセボと比較して無イベント生存期間(EFS)の有意な改善が認められた第3相試験である。今回は日本人患者における結果が報告された。 同試験に登録された日本人は68例(オプジーボ群40例、プラセボ群28例)。患者背景は、全体集団と比較して、日本人集団の方がECOG PSが良好であること、組織型やPD-L1発現に関して群間差が見られたこと(人種が層別化因子ではなかったため)、また化学療法としてシスプラチンを選択した割合が高いことが挙げられた。 オプジーボ群において、術前のオプジーボ+化学療法を4コース完遂できた割合は日本では26例(65%)であり、中止した14例中13例は毒性によるものであった。完遂率は海外(85%)と比較して低いものの、完遂しなかった症例も含めて最終的に90%の症例が根治的手術を受けた。 追跡期間中央値24.9ヵ月時点での無イベント生存期間(EFS)の中央値は、オプジーボ群で未達(21.4-NR)に対してプラセボ群で12.1か月(8.1-NR)であり、ハザード比0.46(0.22-0.95)であった。 また手術に関しては、海外と比較して肺葉切除の割合が高く、肺全摘術が必要な症例はわずかであった(オプジーボ群で1例、プラセボ群で2例)。根治的手術を受けた症例のうちR0切除率は、オプジーボ群で94.4%に対してプラセボ群で92.3%、病理学的完全奏効率(pCR率)は42.5%に対して0%、病理学的奏効率(MPR率)は52.5%に対して7.1%であった。 グレード3-4の治療関連有害事象および手術関連有害事象は、オプジーボ群で55.0%(22/40例)と16.7%(6/36例)、プラセボ群で39.3%(11/28例)と19.2%(5/26例)であった。重篤な治療関連有害事象は、術後と比較して術前療法中に発現する傾向が見られた。また日本人において1例、肺臓炎による死亡が認められた。田中先生はこの点に関して、日本人ではやはり肺臓炎のリスクに注意が必要であることを示唆するデータである、とコメントした。 日本人における病理学的奏効率が高かったことについて、所属リンパ節転移の状態が指摘されたが、全体集団とほぼ同じである(3割がN0、3割N1、2割がN2 single station、2割がN2 multi station)、と田中先生。日本人においては、比較的ECOG PSが良好で確実に手術ができる症例を多く登録したことに起因するのではないか、とコメントした。

ワークショップ10-2:Perioperative pembrolizumab(pembro)for early-stage NSCLC:Japanese subgroup of KEYNOTE-671

発表者:佐治久先生(聖マリアンナ医大呼吸器外科) KEYNOTE-671試験では、切除可能なII-IIIB期のNSCLCに対する術前キイトルーダ+化学療法および術後キイトルーダは、術前化学療法に比べ、EFSおよび全生存期間(OS)の改善が示された。日本においても今年8月に承認されているが、同試験における日本人集団データが発表されたのは初めてである。 日本人の登録者数は、キイトルーダ併用群で39例、プラセボ群で43例であった。患者背景は、比較的早期の症例が多いこと、また所属リンパ節転移のN1とN2の割合に群間のばらつきが認められたが、その他は概ね全体集団と一致していた。 術前療法4コースの完遂率は6割程度であり、全体集団と比較してやや低い傾向であったが、根治的手術を実施した症例は91%であり、全体集団の85%よりも良好な結果であった。またキイトルーダ併用群において手術に進めなかった6例のうち5例が毒性中止、1例が病勢進行であったが、そのうちの4例が最終的にプロトコル外で手術に進むことができていた。 手術に関しては、R0切除率はキイトルーダ併用群で97%、プラセボ群で95%、病理学的完全奏効率は12.8%と2.3%、病理学的奏効率(MPR率)は28.2%と7.0%であった。また全体集団と比較して、肺葉切除の割合が高く、逆に肺全摘術はほとんどいなかった(キイトルーダ併用群で2例、プラセボ群で0例)。 主要評価項目のひとつであるEFSの中央値は、キイトルーダ併用群で未達、プラセボ群で32.8ヶ月(HR 0.62;95% CI 0.33-1.19)であり、全体集団と同等の成績が認められた。また36か月時点でのEFS率はキイトルーダ併用群で66.1%、プラセボ群で45.2%であり、全体集団と比較して良好な結果が得られた。OSに関して、いずれの群も中央値は未達であり、ハザード比は0.87(0.34-2.20)であった。OSの差がついていないことに対して佐治先生は、追跡期間が短いことやサンプル数が少いことによる解析の限界、また日本における後治療が充実していることによる良好な予後について言及した。 グレード3以上の治療関連有害事象は、キイトルーダ併用群で59%、プラセボ群で47%、いずれも全体集団より高い傾向であったが、死亡例は認められなかった。免疫関連有害事象は、キイトルーダ併用群で41%、プラセボ群で7.0%であり、こちらも死亡例は認められなかった。 KEYNOTE-671試験の特徴として、EGFR/ALK陽性症例も登録可能であったことが質疑でも取り上げられており、他試験と比較して病理学的奏効が低かった理由として、EGFR/ALK陽性症例に対するキイトルーダ併用療法の効果が低かった可能性が議論となった。 また同試験のもう一つの特徴として、併用化学療法としてパクリタキセルの使用が認められていなかったことが挙げられ、実臨床での運用について質疑で話題となった。IV期NSCLCと同様に初回からカルボプラチン併用が可能かどうかは現時点では不明であるものの、シスプラチンから使って腎障害が出た場合にすぐにカルボプラチンに切り替えるという対応は可能ではないか、と佐治先生。術前の化学療法としてシスプラチンとカルボプラチンをどのようにどのタイミングで使っていくか、院内で議論が進んでいるようだ。

ワークショップ10-1:Neoadjuvant nivolumab+chemo vs chemo in resectable NSCLC:CheckMate 816, including Japanese data

発表者:光冨徹哉先生(近畿大学医学部外科学教室呼吸器外科部門) CheckMate 816試験は、IB-IIIA期の切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)において、ECOG PS≦1、EGFR/ALK陽性あるいは不明の成人を対象に、術前療法としてのオプジーボ(一般名:ニボルマブ)+化学療法と化学療法単剤を比較し、オプジーボ併用によるEFSおよび病理学的完全奏効率(pCR)の有意な改善が認められた試験である。今回は日本人集団における解析結果が新たに加わったデータが発表された。 同試験に日本人は68例登録された(オプジーボ+化学療法群33例、化学療法単剤群35例)。全体解析と比較した日本人集団の患者背景の特徴として、年齢中央値が高いこと、ECOG PSが良好であること、比較的早期の症例が多いこと、オプジーボ+化学療法群におけるPD-L1≧50%の症例の割合が高いことなどが挙げられる。 追跡期間中央値59.3ヵ月時点において、日本人集団におけるオプジーボ+化学療法群のEFS中央値は35.8ヶ月、化学療法単剤群で16.9ヶ月、ハザード比:0.72[0.37-1.40]で、オプジーボ併用群においてEFSの持続的な改善傾向が認められた。全体集団におけるEFSの中央値は43.8ヶ月 vs 18.4ヶ月、ハザード比:0.66[0.49-0.90]であり、日本人集団でもほぼ同等の効果と考えられる、と光冨先生はコメントした。 関連リンク 第65回日本肺癌学会学術集会 ウェブサイト
ニュース 肺がん 術前化学療法術後化学療法

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

治験・臨床試験

一覧を見る

リサーチ・調査

一覧を見る

ニュース

一覧を見る

イベント

一覧を見る

患者会

一覧を見る

電話受付:平日(月〜金)10:00-18:00