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効果が同じでも負担額が異なる!?:小細胞肺がん治療における免疫療法を例に
[公開日] 2024.11.13[最終更新日] 2024.11.28
10月31日~11月2日、第65回日本肺癌学会学術集会がパシフィコ横浜で行われた。同学術集会のセッション「小細胞肺癌に対する治療戦略」の中で、「進展型小細胞肺癌における ICI 併用化学療法の比較検討:RWD 費用対効果研究」と題して角俊行先生(函館五稜郭病院呼吸器内科)が発表した。
現在進展型小細胞肺がん(SCLC)に対する初回治療の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)として、テセントリク(一般名:アテゾリズマブ)とイミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)が標準療法となっている。それぞれIMpower133試験およびCASPIAN試験の結果から、いずれの薬剤も同等の効果が認められている一方で、薬価はイミフィンジの方が高いという現状がある。
今回の研究は、ICI併用化学療法を受けたSCLC患者の臨床データを電子カルテから、また総医療費をレセプトから収集した多施設共同後方視研究。テセントリク群とイミフィンジ群の効果や毒性を評価するとともに、費用最小化分析(効果が同等な薬剤に関して、どちらが安価であるかを比較する方法)を使い、月当たりの総医療費を比較した。
解析対象は、2018年8月から2022年12月の間に8施設から抽出された274例(テセントリク176例、イミフィンジ98例)のうち、シスプラチン投与症例を除外し、傾向スコアマッチングによる調整後の各64例の症例であった。患者背景には両群で大きな差はなかった。
全生存期間(OS)の中央値は、テセントリク群で13.9ヶ月(95% CI 11.7-17.5)、イミフィンジ群で13.6ヶ月(95%CI:11.0-20.0、p=0.919)、また無増悪生存期間(PFS)の中央値はそれぞれ4.9ヶ月、5.6ヶ月であり、IMpower133試験およびCASPIAN試験と同等の成績であった。
一方の医療費に関しては、総医療費(入院費などレセプトに含まれる全ての医療費)に関して有意にイミフィンジ群が高い傾向を示した(1,003,922円 vs. 1,596,511円)。更にICI治療費のみでの解析でも、イミフィンジ群で有意に高い結果となった。安全性に関しては、グレード2以上の免疫関連有害事象(10.9% vs. 31.3%,p=0.009)、肺臓炎(3.1% vs. 20.3%,p=0.004)、いずれにおいてもイミフィンジ群で高い傾向が認められた。これに関して角先生は、臨床試験と比較して今回ここまで有害事象に違いが出た理由は不明、としつつ、イミフィンジ群の症例の方がTIL(腫瘍浸潤T細胞)が多い傾向があった可能性などに言及した。
以上の結果から、テセントリクの方がより費用対効果の高い治療薬である可能性が示唆された。また、より実臨床に即した優位性を評価するために、投与頻度や化学療法のレジメンなども解析対象としていくことを、角先生は今後の課題として挙げた。
今回シスプラチン使用症例が除外されており、カルボプラチン使用症例のみの比較であったことが、解析の限界として指摘された。共同演者の秦明登先生(神戸低侵襲がん医療センター呼吸器腫瘍内科)によると、シスプラチン使用症例を解析に加えた場合でも、結果に大きな差はないことが示唆されているとのこと。今後の解析で発表予定だとした。
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