増え続ける遺伝子パネル検査、エキスパートパネルの運営はどうするか?第63回日本肺癌学会学術集会より


  • [公開日]2022.12.14
  • [最終更新日]2022.12.09

12月1日から3日に、第63回日本肺癌学会学術集会(JLSC 2022)が、福岡国際会議場にて開催された。その中で、シンポジウムSY12-3にて国立がん研究センター先端医療開発センターの土原一哉先生が、エキスパートパネルの今後について発表した。

がん遺伝子パネル検査(CGP)の件数は年々右肩上がりであり、その理由はがんゲノム医療連携病院の増加に加え、リキッドバイオプシー検査(血液検査)が承認となったことが挙げられる。ただし、検査結果に基づいて治療薬に到達できた症例は7%であり、その内訳を見ると治験参加は20%、患者申出療養制度活用は14%にとどまっている。

また国立がん研究センター東病院(NCCE)のデータでは、検査数だけでなく、治療到達率、特に患者申出療制度の活用率が、NCCEと比べて連携病院で低いという課題も示唆されたという。

遺伝子パネル検査の結果を元に治療薬候補を提示するためには、検査により得られた遺伝子変異情報の臨床的意義を解釈するための専門家による会議(エキスパートパネル)の実施が必要である。そのため、増加傾向にある検査数に対応し、治療への到達率を全国レベルで上げていくためには、2つの課題があると土原先生は言う。

まず1つ目が、エキスパートパネルによる推奨治療薬提示の標準化である。日本臨床腫瘍学会と厚生労働科学研究(吉野小班)による検討では、教育セミナー実施の実施により、模擬症例として用意された検査結果のアノテーション(結果の意義づけ)が模範解答と一致する確率が高くなったとのこと。さらに、個々の医師が1人で判定するよりも、複数人が集まるエキスパートパネルでの判定の方が、正答率が高いという結果が得られた。これを受けて土原先生は、検査結果の解釈を標準化していくためには、普段から教育や情報共有を続けていく必要があると結論づけた。

もう1つの課題は、増加傾向にあるパネル検査数に対応するための合理化である。各中核拠点病院ではエキスパートパネルを毎週1回以上開催しており、事前準備も含めるとかなりの人数と時間が割かれているというのが現状だという。今後さらに検査数が増えていくことを考えると、エキスパートパネルの量を減らす工夫が必要であり、例えば検査の結果該当する推奨治療薬がない場合には、エキスパートパネルを簡略化することなどが提案された。また、もう1つの解決策として、エキスパートパネルに各専門家が複数人集まるのではなく、臓器横断的に遺伝子検査結果を解釈できる知識を持ったスペシャリストを育成することの重要性も言及した。

最後に土原先生は、より長期的な目標として、現在既に検査結果の情報収集に使われているAI技術を、検査結果の解釈にも導入にていく可能性について触れ、講演を締め括った。

■参考
第63回日本肺癌学会学術集会

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