• 検索
  • 相談
  • お知らせ
  • メニュー
  • がん種
  • 特集
  • 治験
  • リサーチ
  • イベント
  • 体験談
  • 患者会
  • 辞典
  • お役立ち

放射線治療の均てん化を目指した遠隔技術の利用 日本放射線腫瘍学会第 37 回学術大会より

[公開日] 2024.12.18[最終更新日] 2024.12.18

11月21日~23日、日本放射線腫瘍学会第 37 回学術大会がパシフィコ横浜で行われた。学会3日目、「ワークショップ4:放射線治療のセンター化と均霑化」のセッションにて、斎藤正英先生(山梨大学医学部 放射線医学講座) が「遠隔放射線治療計画の国内の現状と今後の展望」というタイトルの講演を行った。 遠隔放射線治療計画とは、安全なネットワーク回線などを利用し、遠隔地から放射線治療計画を実施する技術のこと。人材豊富な施設から治療施設への支援としての利用(施設間利用)と、院外からのテレワークとしての利用(個人利用)のふたつの使い方が考えられている。 斎藤先生らがリニアック(放射線治療外照射装置)を保有する国内の施設(834施設、うち回答施設数487施設)を対象として2022年に実施した利用状況調査によると、約10%(51施設)が遠隔放射線治療計画を利用している、と回答。そのうち約6割が施設間利用、残りの約4割が個人利用であった。 均てん化という観点では、特に複雑で難航しやすい高精度放射線治療(IMRT)の治療計画の立案やレビューの補助として、遠隔技術の活用が有効なのではないか、と斎藤先生。その背景として、「放射線治療を担当する常勤の医師が2名以上配置されていること」という日本のIMRT実施要件が定められていることを指摘した。実際、2023年度に実施したJASTRO高精度部会アンケートでは、IMRTが実施できていないと回答した75施設のうち45施設が「常勤医が1名であること」を理由に挙げていたという。 そこで斎藤先生は、IMRTが実施できていないがん診療拠点病院等施設数44施設のうち、常勤医が1名であると回答し、かつIMRTを実施するために遠隔放射線治療計画技術による計画支援があれば活用したい、と回答した施設を洗い出した結果、18施設が該当。つまり現時点で、遠隔支援によって少なくとも18施設において、IMRTが新たに実施可能となると予測された。これは、現在のIMRT実施施設における患者数から単純に計算すると、年間で1818人の患者さんに新たにIMRTを提供できるようになる、と斎藤先生は今後の見通しを示した。 現在、社会実装に向けたエビデンスを構築するために、REMOTE-IMRT trialという試験が計画されている。これは、放射線治療部門に専従の常勤医が1名のみの施設においても、施設間の遠隔支援の利用や医師以外の治療計画補助者の関与によって、IMRT治療計画が臨床的に問題なく実施できるかを実証するものだ。既に64施設の参加応募が集まっており、斎藤先生は、今後遠隔支援の有用性が示されることで、更に多くの施設におけるIMRTの実施が可能となる希望を述べた。 実際の遠隔技術の導入に向けた課題について斎藤先生は、導入・維持費用やセキュリティ面の課題、また責任の所在などについて、アンケート結果を基に指摘した。また、施設の医療情報担当部署からのっ賛成が得られない施設も約4割あることを説明し、地域や施設毎に議論が必要であることを述べた。 最後に斎藤先生は、「ここ10年で情報通信技術の進歩は著しく、国も遠隔医療を推奨し、体制整備も確実に進んできています。放射線治療業界も、今が遠隔支援を一歩進める最大のチャンスであり、むしろここでやらないと取り残されてしまうと思っています」、と意気込んだ。 また今回の学会のテーマである“patient guided radiotherapy”への実現に向け、遠隔放射線治療計画支援が普及することで、高精度放射線治療がどの地域でもできる未来を作っていきたい、と想いを語り、講演を締めくくった。 関連リンク 日本放射線腫瘍学会第37回学術大会 ウェブサイト
ニュース IMRTJASTRO遠隔診療

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

治験・臨床試験

一覧を見る

リサーチ・調査

一覧を見る

ニュース

一覧を見る

イベント

一覧を見る

患者会

一覧を見る