がん免疫療法は皮下注射の時代へEvaluate Vantage(2023.1.25)より


  • [公開日]2023.02.10
  • [最終更新日]2023.02.09

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

キイトルーダの皮下注射製剤の極めて重要な試験がまもなくリードアウトを迎えるが、ロシュ社の方が先に市場に進出する可能性がある。

過去に最も売れた薬の1つを発売したことの弊害は、特許失効後にその売上が減少することである。米メルク社のキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)の場合、皮下投与型製剤の登場により特許期間が延長される可能性があり、米国申請の基礎となる重要な臨床試験も間もなくリードアウトを迎える。

2028年のキイトルーダの売上見込みが340億ドルであることから、アナリストが3475-A86と呼ばれる肺がん試験の結果を非常に重要な景気上昇のきっかけと見ているのもうなずける。しかし、抗PD(L)1薬の皮下注射製剤に関しては、スイスのロシュ社が先陣を切ることになりそうだ。同社の皮下注射製剤のテセントリク(一般名:アテゾリズマブ) は、早ければ9月に承認される可能性がある。

もちろん、これはキイトルーダを脅かすというよりも、(Evaluate Pharma社によれば)2032年に特許が切れるであろうロシュ社自身のテセントリクの市場を維持するために重要なことである。しかしロシュ社は、昨年(2022年)8月に良好な結果を示したImscin-001試験に基づいて申請したことで、メルク社に規制当局の青写真を提供したようなものである。

承認申請の結論が下る日

12月、Imscin-001のデータは欧州免疫腫瘍学会でひっそりと発表され、ロシュ社は同様にひっそりと米国食品医薬品局(FDA)に承認申請した。ロシュ社はEvaluate Vantageチームに、この申請が標準審査で受理され、FDAは9月15日に審査開始日を設定したと語った。

ロシュ社の発表によると、Imscin-001は化学療法後の非小細胞肺がんを対象とした二次治療薬として開発されたが、そのデータは「テセントリク静注の適用範囲全体」における皮下注射製剤の承認をサポートするものと期待されている。この計画が成功すれば、第3相3475-A86試験で非小細胞肺がんの一次治療を対象にキイトルーダ静注+化学療法とキイトルーダ皮下注射+化学療法を比較したメルク社にも同じことが当てはまるだろう。

メルク社の試験の主要評価項目は、曲線下面積とトラフ濃度によるバイオアベイラビリティであり、有害事象無増悪生存期間PFS)、全生存期間OS)が副次評価項目として設定されている。このco-primary endpointはロシュ社の試験とほぼ同様であり、ロシュ社がImscin-001で行ったように、皮下注射が静脈注射に対して非劣性であることを示すことが目的である。

しかし、メルク社はキイトルーダが非劣性を証明するために必要なマージン幅を明示していない。Imscin-001では、主要評価項目はいずれも達成され、90%信頼区間の下限が少なくとも0.80と定義される非劣性レベルを超えている。テセントリクのPFS曲線は静注用と皮下注射用でほぼ同じであり、有害事象の発生率も同じであった。

75%の売上減?

みずほ証券のアナリストは、2028年にキイトルーダ点滴静注の特許権が失われると、5年以内に同剤の売上高の75%以上が損なわれるとみているが、皮下注射型の発売が成功すれば、そのダメージをわずか30%に抑えられるとしている。この主張は、米ジョンソン・エンド・ジョンソン社の多発性骨髄腫治療薬ダラザレックス(一般名:ダラツムマブ)が、発売後5年以内に皮下注射剤の市場シェア80%以上を達成したことに基づくものである。

ロシュ社の場合、この売上高の3分の1以下しかないが、おそらく同様のことが独占権獲得後にも当てはまるだろう。また、PD-(L) 1を扱う大手企業は、いずれも皮下注射製剤を追求しており、米ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社のオプジーボ(一般名:ニボルマブ)と英アストラゼネカ社のイミフィンジ(一般名: デュルバルマブ)は、それぞれ今年末と2024年の早い時期に試験が終了する予定である点も忘れてはならない。

もう一つの重要な企業は米ファイザー社で、皮下注射薬の候補としてsasanlimab(ササンリマブ)を開発しているが、ここでの決定的な違いは、これが新規の薬物であるため、適応症ごとに個別の主要試験が必要になることである。またブリストル社は、オプジーボとrelatlimab(レラトリマブ)を配合剤であるOpdualag(オプデュアラグ)として開発し、さらに高いレベルの独占権確保を追求している。

■出典
immuno-oncology-goes-subcutaneous

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