膠芽腫における希望と経験Evaluate Vantage(2021.01.05)より


  • [公開日]2021.01.29
  • [最終更新日]2021.01.29

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

 

治療が困難なこの脳腫瘍での新薬開発は、少しずつ前進している。

12月下旬、膠芽腫に対するオプジーボの失敗は、非常に難治性の高いこの疾患を治療しようとする試みを象徴する悲しい結果となった。2019年半ば、第3相のCheckMate-548試験は主要評価項目の1つである無増悪生存期間PFS)を達成しなかった。そして今回、米ブリストル・マイヤーズ スクイブ社はもう1つの主要評価項目である全生存期間OS)も満たさなかったことを認めた。

CheckMate-548試験は、2017年と2019年に失敗に終わった2つの試験、セカンドライン治療を対象としたCheckMate-143とファーストライン治療を対象としたCheckMate-498の後、膠芽腫におけるオプジーボの最新の希望だった。この2つの試験には、すべての膠芽腫患者が試験に登録されていたが、ブリストル社は、奏効の可能性が高くなることを期待して、CheckMate-548試験の登録はMGMTメチル化バイオマーカーを有する患者に限定していた。

このがん種におけるオプジーボの将来は、現在不明だ。しかし、他のいくつかのプロジェクトは、ここ数ヶ月の間に膠芽腫において有望な兆候を示している。開発初期の段階ではあるが、豪カジア・セラピューティクス(Kazia Therapeutics)社のパクサリシブ(paxalisib)は、標準治療と比較して5ヶ月の生存期間延長を示した第2相試験の中間評価データを受け、膠芽腫を対象としたピボタル試験に参入している。このmTOR/PI3K阻害薬は、後期臨床開発中の他の6つのプロジェクトに加わることになる。

また、スペインのLaminar Pharma 社が開発中のスフィンゴミエリン合成酵素 1 活性化薬である 2OHOA については、来年(2021年)前半にデータが得られる可能性がある。中間結果が良好であれば、Laminar社は欧州で新規多形性膠芽腫患者の治療薬として承認を得ることを計画しており、理論的には2OHOAが現在第3相試験中のいくつかの化合物を凌駕する可能性があることを意味している。

ただし、このがん領域における治療の中心は20年以上前に初めて膠芽腫の治療薬として承認されたテモダールのままであり、薬剤開発では失敗が続いているため、歴史が指針であるならば、実現性は低いであろう。

それでも、このバイオ医薬品企業には希望がある。LAM561とも呼ばれる2OHOAのメカニズムには、がん細胞の原形質膜におけるスフィンゴ脂質濃度の変化が含まれ、Krasなどの増殖シグナル伝達タンパク質の動員が抑制される。

第2/3相Clinglio試験では、無増悪生存期間と全生存期間を共同主要評価項目とし、少なくとも124件のPFSイベントと124件の死亡の後に評価される。同試験に参加する180人の患者は、化学放射線療法とテモダールに加え、経口2OHOAまたはプラセボのいずれかが投与される。

この試験の第2相試験で有効性が示された場合、Laminar社は新規膠芽腫患者に対する2OHOAの欧州での条件付き承認申請を計画しているが、そのような有効性のシグナルが示されなかった場合、2OHOAは第3相パートを進めることになるか、この適応症で開発を中止することになるのか、同社の計画はあまり明確ではない。

現実か幻想か?

膠芽腫の治療薬候補の第3相データが出てくるまでには、少なくとも1年以上はかかりそうだ。ブリストル社のプロテアソーム阻害薬マリゾミブ(marizomib)のMirage試験は、2022年末にかけて全生存期間のデータが判明する可能性がある。ブリストル社は、2019年の米セルジーン(Celgene)社買収よりマリゾミブを得たが、同剤自体は3年前にTriphase Accelerator社から取得したアセットだ。

独バイエル(Bayer)社のスチバーガは、第3相コホート試験に進む次の候補になるようだ。Global Coalition for Adaptive Researchが指揮を執り、さまざまな開発会社の複数候補を評価するGBMアジャイル試験において、同剤は新規患者ではテモダールと、再発患者ではロムスチンと対抗することになる。スチバーガはすでに肝臓がん、結腸・直腸がん、胃がんで上市しているが、膠芽腫のプロジェクトが直面している非常に困難な状況を反映し、脳腫瘍における売上予測はまだ立っていない。

進展がないことで悪名高いのは米ノースウエスト・バイオセラピューティクス(Northwest Biotherapeutics)社のDCVax-Lだ。同社は10月、膠芽腫ワクチンの長期(clinicaltrials.govよると14年)にわたる第3相試験のデータベースをロックしたと発表した。データの公開が差し迫っている可能性はあるが、少なくともここ8年間は動きがなく、多くの業界ウォッチャーは長期間にわたる我慢の限界に達している。

SNOでの発表

11月に開催された神経腫瘍学会議Society for Neuro-Oncology(SNO)の学術集会で発表されたカジア社のパクサリシブの第2相試験の中間結果は良好だった。同社によれば、全生存期間の中央値はパクサリシブで17.5ヶ月だったが、テモゾロミドは12.7ヶ月だった。しかし、テモダールの結果は同じ試験のものではなく、過去のデータに基づくものだった。また、米エジソン(Edison)社のリサーチャーが行った膠芽腫を対象としたテモダールの5つの試験の分析では、全生存期間は13.8ヶ月という数字を示した。

一方、mTOR / PI3K阻害薬の安全性プロファイルは、真の勝利だった。同クラスのPI3K阻害薬の使用は毒性によって厳しく制限されており、承認された4つのPI3K阻害薬のうち3つは致命的な副作用を記録しており、日和見感染症が最も一般的だ。パクサリシブはより良性のようで、第2相試験では高血糖と発疹がグレード3~4の最も一般的な有害事象だった。

パクサリシブは現在、スチバーガのGBMアジャイル試験に参加する予定であり、そのデータは登録されている可能性がある。

Evaluate Pharmaのコンセンサス予測によると、米VBIワクチン(VBI Vaccines)社のVBI-1901は膠芽腫の売上予測がある数少ないプロジェクトの1つであり、2026年に4,400万ドルの売上が予測されている。現在進行中の第1/2a相試験からSNOで発表されたデータでは、VBI-1901+GM-CSF補助療法群の被験者10人のうち2人で部分奏効が認められた。VBI社は2021年に登録試験を開始することを検討している。

米ジオファーム・オンコロジー(Ziopharm)社のAd-RTS-hIL-12は、VBI-1901以外では唯一、膠芽腫の売上予測がある第2相試験中の候補薬であり、2026年に1億4,200万ドルの売上が予測されている。SNOでの中間データによると、この遺伝子治療は活性化因子であるベレディメックス(veledimex)とリブタヨ(Libtayo)を併用した場合、16週目に1例の部分奏効が得られた。平均追跡期間6.5ヶ月時点では、全生存期間の中央値には達していなかった。

IL-12や下流のIFN-γを含む血清サイトカイン濃度が検出され、28日目までに循環キラーT細胞の有意な増加が認められた。この遺伝子治療は、神経膠腫の1つの型を対象とした第2相小児臨床試験も実施中だ。

その他の状況

SNOでは、米キンタラ・セラピューティクス(Kintara Therapeutics)社のVAL-083の2つの第2相試験の中間データも発表され、この治療法もまもなくGBMアジャイル試験に加わる。放射線とテモダールによる治療後、アジュバント療法としてVAL-083を投与された評価可能な新規患者27名におけるPFS中央値は10ヶ月だった。

同じ試験では、セカンドライン治療としてVAL-083を少なくとも1サイクル完了した評価可能な再発患者77人において、OSの中央値は7.6ヶ月だった。また、第3相臨床試験で予定されている30mg/m2/dayの用量を最初に投与された43名の評価対象患者の全生存期間中央値は8.5ヶ月であった。キンタラ社によると、これらの患者に最も一般的に使用されている化学療法であるロムスチンの試験では、全生存期間の中央値は7.2ヶ月であったとのことだ。

また、キンタラ社はメチルグアニンDNAメチル化酵素遺伝子の非メチル化プロモーターを有する新規患者を対象に中国を拠点として行われた第2相試験のデータを報告した。 患者29名におけるPFSの中央値は9.3ヶ月だった。最初に第3相の投与量を受けた25例では、PFSの中央値は8.7ヶ月だった。

少なくとも3つの治療法が検討されているGBMアジャイル試験は、数年後に結果が報告される際、膠芽腫治療の開発における重要な分岐点となるだろう。ノースウエスト・バイオ社からDCVax-Lの予想を覆すデータが発表されない限り、それまではLaminar社のClinglio試験が注目株だ。

■出典
Hope versus experience in glioblastoma

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