※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。
TROPiCS-02試験の結果は肯定的に発表されているものの、臨床的関連性に関する疑問について米ギリアド社は押し黙っている。 治験の規模が大きくなり、主要評価項目が変更され、結果が出るのが遅れている場合、その治験はうまくいっていない可能性がある。ギリアド社が長い間待ち望んでいたTrodelvy(トロデルヴィ/一般名:サシツズマブ ゴビテカン)のTROPiCS-02試験が実質的に失敗に終わったと確認された今日(3月7日)、同社への投資家たちはこのことを思い知らされた。 もちろん、厳密にはトップライン結果はポジティブであり、ギリアド社は短い声明の中でTROPiCS-02試験は無憎悪生存期間を統計的有意に改善し、主要評価項目を達成したと述べている。それ以上に重要なのは、この結果に臨床的意義があるのかどうかであり、この疑問についてギリアド社は肯定的な回答はしていない。 同社はSEC(証券取引委員会)に別紙のQ&A文書を提出するという異例の措置をとったが、その最初の質問は「PFS(無憎悪生存期間)は臨床的に意義のある基準を満たしたか」であった。同社は「この集団において何が『臨床的に意義がある』かについては幅広い見解がある。現在データを評価中であり、規制当局と可能性のある方向性を模索していく予定だ」と述べている。 米ウェルズ・ファーゴ社がSEC文書のコメントは否定的に聞こえたと述べているように、アナリストたちはこれを肯定的には受け止めておらず、臨床的関連性の基準が達成されなかった可能性があると指摘した。 TROPiCS-02試験は、HER2陰性ER陽性乳がんのサードライン治療において、Trodelvyと化学療法の比較試験を行ったものである。Trodelvyは抗TROP-2抗体と抗がん剤の複合体であり、トリプルネガティブ乳がんのサードラインおよびそれ以降の治療と、化学療法後またはPD-1/PD-L1免疫療法後の尿路上皮膀胱がんの治療で既に承認されている。すなわち、TROPiCS-02試験はTrodelvyの大規模な適応拡大を意味するものである。 ギリアド社はTrodelvyの製造元である米イミュノメディクス社に210億ドルを支払っており、また、ベルギー・ガラパゴス社や米カイトファーマ社を含むギリアドグループの他の事業展開で期待する結果を得られなかったため、TROPiCS-02試験の結果は特に重要であった。 絶対的ベネフィットは? 今朝、ギリアド社はTROPiCS-02試験が病勢進行または死亡のリスクを30%減少させるように計画された点に注目していたが、最も重要な絶対的ベネフィットはまだ公表されていない。アナリストたちは2~3か月のPFSベネフィットの追加を予想していたため、おそらく多くの人々がこれは達成されなかったと考えているに違いない。 問題の1つに、ER陽性HER2陰性乳がんに適用される治療法の状況が変化していることが挙げられる。TROPiCS-02試験が400人から543人の患者に拡大され、主要評価項目がPFSと客観的奏効率からPFSのみに修正され、TROPiCS-02試験がネガティブな結果に向かっていったことがその兆候であった。 結果の公表は2021年第4四半期から1~2月にずれ込み、結局、新たな期限にも間に合わなかった。さらなる汚点として、副次評価項目である全生存期間は統計的有意ではなかったといわれている。しかしながら、公正を期していうならば、今日発表された結果は中間解析であり、未確定だった可能性がある。 しかし、ギリアド社には、英アストラゼネカ社/第一三共株式会社のエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)というもう1つの試練が待ち受けている。最近、エンハーツはHER2低発現の患者において大勝利を収めており、この集団はTrodelvyの対象患者とかなり重複する可能性がある。また、アストラゼネカ社/第一三共株式会社の独自の抗TROP-2抗体薬物複合体であるdatopotamab deruxtecan(ダトポタマブ デルクステカン)が、最近TROPION-Breast01試験を開始している。この試験はHER2陰性ER陽性乳がんのセカンド/サードライン治療を対象とした第3相試験である。 TROPiCS-02試験から得られた実際の結果については実質的に何も分からないが、懸念されるのは、TROPiCS-02試験を拡大することでギリアド社が何とか成し遂げようとしたことが、統計的な成功を保証するだけになってしまうことだ。依然として満足のいく結果を期待している投資家たちは、医学会議で全データセットが発表されるまで、今はじっと耐えなければならない。 ■出典 Gilead’s Tropics readout makes investors sweat