ESMO 2024:消化器がんがん種別にみたポイント


  • [公開日]2024.09.27
  • [最終更新日]2024.09.26

9月14日から17日まで、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)がスペイン・バルセロナで開催された。がん領域としてASCO(米国腫瘍学会)に続く最大規模の学術集会(学会)であるESMOでは、毎年多くの注目すべき研究結果が発表されている。今回は、「ESMO 2024 がん種別にみたポイント」シリーズと題し、消化器がんの目玉となったデータとそのディスカッションポイントをまとめてみた。

大腸がん

DNAミスマッチ修復欠損を有する進行大腸がんにおける術前療法としてのオプジーボ+ヤーボイ:NICHE-2試験【Abstract#LBA24】

NICHE-2試験は、DNAミスマッチ修復欠損(dMMR)大腸がんに対する術前療法として、オプジーボ(一般名:ニボルマブ)+ヤーボイ(一般名:イピリムマブ)が劇的な病理学的奏効率を示したことで、2022年のESMOで注目を集めていた。
今年の発表では、主要評価項目の一つである3年無病生存率が100%(111例)であることが示され、手術後の追跡期間中央値36.5か月時点で再発症例はいない。

なお同セッションにおいて、dMMR大腸がんに対する術前オプジーボ+抗LAG3抗体レラトリマブの有効性を評価したNICHE-3試験の結果も発表されており、病理学的奏効率は97%(57/59例)であった。

dMMRの特徴をもつがん細胞は、免疫療法に非常に感受性が高い免疫環境を持っており、dMMRを有する大腸がんにおける術前免疫療法は、有望な治療オプションとして注目を集めている。

胃がん

:HER2陽性転移性胃/食道胃接合部がんにおけるキイトルーダ+ハーセプチン+化学療法:KEYNOTE-811試験の最終解析【Abstract#1400O】

未治療の切除不能なHER2陽性転移性胃/食道胃接合部腺がんにおいて、標準治療であるハーセプチン化学療法キイトルーダを上乗せすることのメリットが明らかとなった。

主要評価項目のひとつである全生存期間の結果は、これまでの無増悪生存期間を含む習慣解析の結果から期待されてはいたものの、正式な解析結果が発表されたのは今回が初めてであり、統計的に有意な改善効果が示された(ハザード比0.80, 95%信頼区間:0.67〜0.94)。

今回の最終解析の結果をもって、国内での申請も期待される。

肛門がん

未治療の進行肛門管扁平上皮がんにおける抗PD-1抗体retifanlimab+化学療法:POD1UM-303/InterAACT 2試験【Abstract#LBA62】

手術不能な局所再発または転移性肛門管扁平上皮がんの初回治療として、標準療法であるカルボプラチンパクリタキセルに抗PD-1抗体retifanlimabを併用することで、無増悪生存期間が有意に改善することが明らかとなった(ハザード比0.63, 95%信頼区間:0.47-0.84)。

現時点では全生存期間は未成熟であったため、更なる追跡による生存期間、および長期的な安全性についての解析が望まれる。

ただし、既に全生存期間の改善傾向も認められており、同試験は肛門扁平上皮がんに対して免疫チェックポイント阻害剤を検証した初の第3相試験として非常に注目を集めたデータであり、今後新たな標準治療が生まれることが期待される。

肝細胞がん

根治不能/非転移性の肝細胞がんにおける肝動脈化学塞栓療法(TACE)に対するキイトルーダ+レンビマ追加:LEAP-012試験【Abstract#LBA3】

TACEに対するキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)+レンビマ(一般名:レンバチニブ)の併用は、TACE単独療法と比較して、主要評価項目の一つである無増悪生存期間を有意に改善することが、初めての中間解析の結果明らかになった(ハザード比0.66, 95%信頼区間:0.51-0.84)。

現在標準治療となっているTACEは、予後延長にはつながるものの、根治が目指せる治療法ではない。そのため、治療成績改善を目指して、全身療法との併用が複数検討されており、今回の結果は今後の臨床に大きなインパクトを与える可能性がある。
しかしながら、キイトルーダ+レンバチニブを追加することによる有害事象の増加が認められているため、今後の長期追跡データをもとに、同併用療法の恩恵を受ける患者像を明らかにする必要がありそうだ。

既にEMERALD-1試験において、TACEへのイミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)+アバスチン(一般名:ベバシズマブ)の上乗せ効果が報告されており、再現性のある結果として期待が持てる。

外科的切除またはラジオ波焼灼療法後の再発高リスク肝細胞がんにおけるテセントリク+アバスチン:IMbrave050試験【Abstract#LBA39】

過去の学会や論文においては、テセントリク(一般名:アテゾリズマブ)+アバスチン(一般名:ベバシズマブ)併用群が経過観察群と比較して無再発生存期間を有意に改善することが既に報告されていたが(ハザード比0.72, 95%信頼区間:0.56-0.93)、更に追跡を続けることで、両群に差が認められなくなったことが今回報告された(ハザード比0.90, 95%信頼区間:0.72-1.12)。

今回の結果を受けて、一度は期待されていた再発高リスク群に対する術後療法としてのテセントリクの開発は中止となったが、他の免疫チェックポイント阻害剤で類似の試験(日本参加のものではKEYNOTE-937、CheckMate-9DX、EMERALD-2など)が複数実施中であるため、今後の結果が待たれる。

×

リサーチのお願い


会員登録 ログイン