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支配を強めるエンハーツEvaluate Vantage(2022.02.21)より


  • [公開日]2022.03.15
  • [最終更新日]2022.03.11

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

 

英アストラゼネカ社/第一三共株式会社の抗体薬物複合体は、HER2発現疾患領域における臨床での成功により、スイス・ロシュ社の乳がん分野における優勢を食い止める可能性がある。

今朝(2月21日)発表された最新の成功例は、Destiny-Breast04試験によって示されたHER2低発現乳がんでの成果である。この試験では、主要な無増悪生存期間PFS)だけではく、非常に重要な全生存期間OS)の基準もクリアした。エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)にどれだけ大きなチャンスがあるかは、全データセット次第であるが、HER2低発現患者の予後との相関性は、過小評価されるべきではない。

エンハーツをはじめとするHER2標的薬のスタンダードは、数年前にロシュ社のハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)によって築かれた後、パージェタ(一般名:ペルツズマブ)およびカドサイラ(一般名:トラスツズマブ エムタンシン)、米マクロジェニックス社のマルゲンザ(一般名:マルゲツキシマブ)、米シーゲン社のトゥキーザ(一般名:ツカチニブ)がこれに続いており、これらの薬剤がHER2過剰発現乳がんに適用されるべきということだ。免疫組織化学IHC)検査により細胞表面のHer2スコアが3+であるがんがHER2過剰発現と定義されている。

スコア3+未満は、技術的にはHER2陰性あるいは境界域と定義され、こうした患者にハーセプチン等の薬剤を用いることはできない。エンハーツはこれに最新のブレークスルーを見出した(Density-Breast04試験にはスコア1+または2+の患者が登録されている)。

乳がんの15%前後がHER2を過剰発現していると考えられている。すなわち、HER2低発現のがんが残りの2/3を占めるだろう。これは、例えば加ザイムワークス社が以前ターゲットにしようとした領域であるが、毒性の問題で頓挫したようである。

医療行為の変更がない

乳がんでは、既にHER2検査が標準となっているため、HER2低発現の患者にエンハーツが承認・適用されても、医療行為を大きく変更する必要がないことは朗報である。その一方で、アストラゼネカ社/第一三共株式会社がDestiny-Breast04試験の詳細な解析結果を明らかにしていないため、これがどの程度大きな契機となるかは、完全には分かっていない。

IHCスコア1+と2+の患者を分けることが重要な分析であり、前者(IHCスコア1+の治験/分析)で失敗すると、IHCスコア2+未満のHER2発現患者へエンハーツを処方することに医師が消極的になる結果となりかねない。

エンハーツはHER2過剰発現乳がんの三次治療として早期承認された。昨年(2021年)の欧州臨床腫瘍学会議(Esmo)において、二次治療としての有効性を評価したDestiny-Breast03試験で大勝利を収めた後、ここでも承認を獲得しそうである。2週間前、アストラゼネカ社は二次治療としての申請を第4四半期に行うことを確認した。

一方、Destiny-Breast04試験には1つまたは2つの前治療でがんが進行したHER2低発現患者が登録されているが、アストラゼネカ社は三次治療の最初の申請(今年半ばが期限)を裏付けるために、これ(Destiny-Breast04試験のデータ)を使用する予定である。別のHER2低発現患者を対象とした二次治療としての治験であるDensity-Breast06試験は、来年(2023年)発表される予定である。

Destiny-Breast04試験では、エンハーツは医師選択化学療法と比較されたが、エンハーツがPFSとOSでどの程度成功したかを知るために、投資家は学会を待たなくてはならないだろう。化学療法では通常、これらの患者のPFSは3~5か月の範囲にとどまることから、アナリストは化学療法と比較して少なくとも3か月のPFSの改善を期待していた。

重篤な副作用の1つは間質性肺疾患であり、エンハーツの現在のラベル(添付文書)には間質性肺疾患に関するブラックボックス警告が記載されている。アストラゼネカ社は、間質性肺疾患による死亡例は、Destiny-Breast04試験では「低率」であったと述べているが、やはり全データが揃えば、必要な状況が把握できるだろう。

また、Destiny-Breast04試験の対象であるエストロゲン受容体(ER)陽性患者とER陰性患者において、エンハーツがそれぞれどの程度効果を示すかについては、別途分析が必要である。HER2陰性・ER陰性であっても、乳がん患者にはさまざまな薬剤が有効である可能性があるため、この区別は重要である。

ERの発現を喪失すると、特に悪性度の高い表現型であるトリプルネガティブとみなされる。しかし、このように技術的にはトリプルネガティブと診断された患者のうち、低レベルながらもHER2を発現している患者の大部分は、近いうちにエンハーツの恩恵を受けることができるようになるかもしれない、という希望があるだろう。これは、アストラゼネカ社/第一三共株式会社にとって、より一層好ましいシナリオである。

世間に認知されたエンハーツの優位性は、既にシーゲン社のトゥキーザの市場予測を暴落させている。昨年、約95億ドルの売り上げを記録したロシュ社のHER2フランチャイズもいずれ圧力にさらされる可能性があり、仮にエンハーツがロシュ社の薬剤に不適格な患者の治療選択肢の1つとなれば、2026年の売上高予測40億ドルは達成可能であると予想される。

■出典
Enhertu tightens its stranglehold

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