Delfi Diagnostics社、より安価なリキッドバイオプシーを目指すEvaluate Vantage(2022.08.05)より


  • [公開日]2022.08.12
  • [最終更新日]2022.08.10

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

 

2億2500万ドルの資金を得たDelfi社は、低価格の次世代肺がんスクリーンに取り組んでいる。

固形がんの血液検査は数年前から行われており、リキッドバイオプシーへの新規参入には新しい切り口が必要だ。米Delfi Diagnostics社は、ベンチャー企業の支援に恵まれ、すでに市場に出回っているがん検査よりもはるかに安い価格を設定できると考えている。

Delfi社の最高財務責任者であるDoug Schenkel氏は、「検診の医療経済を考えると、検査価格は1件250ドルから500ドルの間でなければならない。我々はその制約の中に収めることができる」と語る。他のがん血液検査は、異なる条件下ではあるものの、950ドルから6,800ドルの費用がかかる。

このような低価格を実現したのは、fragmentomicsと呼ばれる技術である。がんのDNAは、正常なDNAとはわずかに異なる断片パターンに分解されるとDelfi社は述べている。人の血液中のcell-free DNAの断片を、機械学習を含む計算的アプローチで解析することにより、従来の技術よりもはるかに少ないシークエンス能力で、がんを特定することができる。

変異やメチル化マーカーに注目する他のアプローチと比較すると、我々の方法はサンプル前処理工程が少なく、シークエンシングの数もかなり少なくて済む」とSchenkel氏は述べている。Delfi社では、全ゲノムに対して1~2倍の深さのシークエンシングを行う。シークエンシングの深さはリードの深さとも呼ばれ、ゲノム内の特定のヌクレオチドが読み取られた回数を表している。

ほとんどのリキッドバイオプシーが依拠する従来の次世代シーケンサーは、DNAのいくつかの標的領域を何度も何度も読み取る。Schenkel氏が「第一世代」と呼ぶがん血液検査の中には、深さ130倍以上のシークエンシングを行うものもある。DNAの断片を分析することで、同じ結果を、より優れたシグナルでより安く得ることができる」と彼は言う。

第一弾;肺がん
投資家も納得しているようだ。先月Delfi社は2億2500万ドルのシリーズBラウンドを完了した。これは昨年(2021年)獲得した1億ドルのシリーズAから顕著な増加であり、一連のアッセイを市場に出すために資金を投入するつもりである。まず最初の試みは肺がんのスクリーニングであり、現在2つの臨床試験がある。L-101は、「来年ごろには」研究所が開発した検査として米国での発売をサポートし、Cascade-Lungは、15,000人の被験者による試験として数年後にPMA申請のサポートになることを目的としている。

しかしDelfi 社には他にも狙いがある。Schenkel氏は、「同社のアプローチは、複数のがんのスクリーニング、その他の単一のがんのスクリーニング、モニタリングなどの分野で有望である」と述べている。次に資金を調達するときは、2年後あたりを目途に追加のアッセイの発売を準備したい、と彼は言う。

上市と商業的成功は別物である。Delfi社は、この検査を臨床医にアピールするために臨床試験で達成しなければならない基準を十分認識している。

「全てのがんにおいて、感度は少なくとも80%台半ばから後半である必要があり、早期がんでは少なくとも80%が理想である」とSchenkel氏は言う。また彼は、「これは血液検査など他のがん検査と同様のレベルである」とも付け加えている。

Schenkel氏は、感度が高いことは特異度が高いことよりも重要であると主張している。Delfi社の検査で陽性と出た場合、患者には低線量CTスキャンが行われ、「複合的に特異度を向上させる」ことになる。これはがん検査会社が何年も前から主張していることと同じであるが、検査した人のかなりの割合が次の診断段階に進むのであれば、このような検査を使う意味はあまりないのではないかという明白な反論がある。

しかしDelfi社の検査で検診のコンプライアンスが向上すれば、このグループが期待しているように、現在よりも多くのがんを発見することができるようになるかもしれない。Schenkel氏によれば、米国では低線量CTによる肺がん検診を受けるべき人が毎年約1500万人いるが、実際に検診を受けたのはこのうちのわずか5%に過ぎない。

競合
米ガーダントヘルス社も米Freenome社も、血液ベースの肺がん検診を目指している。しかし、肺がんをスクリーニングできるリキッドバイオプシーは、米イルミナ社の子会社であるGrail社が昨年夏に発売した汎がんスクリーニングであるGalleriだけである

Schenkel氏は、「Galleriは非常に特異度が高く、感度が低い検査(私たちの意見では、一般的ながんの一次スクリーニングツールの必要性に合わない)であるため、Delfi社のアッセイのライバルにはならない」と考えている。

Galleriは、米国で販売されているリキッドバイオプシーの中で最安とされ、1,000ドル弱の価格で販売されている。おそらくイルミナ社でさえこれは高すぎると考えているのだろう、同社はDelfi社の資金調達ラウンドのすべてに参加している。

これは買収の前段階なのだろうか。もしそうだとしたらDelf社は興味を持つだろうか。Schenkel氏によると、Delfi社は5年以内に黒字になるとの積極的な計画を持っており、単独で成功することに期待しているようである。しかし彼は、「適切な機会があれば、誰かと提携したり買収したりしないとは言い切れない」と話している。

■出典
Delfi aims for a cheaper liquid biopsy

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