新型コロナウイルスの流行に伴うイベントの開催可否について

新型コロナの感染拡大で新薬の発売に新たな危機Evaluate Vantage(2020.4.17)より


  • [公開日]2020.05.28
  • [最終更新日]2020.05.26

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

 

製薬企業にとって、新薬の上市は、その力量が試される局面である。米Biohaven社、米Esperion社、そして直近ではイスラエルUrogen社のように、新型コロナウイルスのパンデミックに伴う市場封鎖でも危機を打開しようとしている企業がある。

Urogen社は2020年4月、希少がんである尿路上皮がんの治療薬「Jelmyto」(一般名マイトマイシン)が米国で承認を取得した。同社経営陣は、このタイミングでの承認取得を悔やんでいるかもしれないが。この規模の小さい企業は、新型コロナのパンデミックに伴う大規模なロックダウンによって、かつてないほどの厳しい環境で販売を開始することを余儀なくされている。

Urogen社は「バーチャル発売」という形態で販売を始める準備をしており、その手法はうまくいくと考えているようだ。果たしてJelmytoは、2020年6月1日に発注者に届くことになった。不確実な領域の中で、苦心を重ねているのは同社だけではない。そこでEvaluate Vantageは、直近数か月間で販売開始され、当初市場が好ましい売上予測を立てていた新製品16品目を抽出。この難局によって販売成績が危ぶまれている製品の予測値を算出している(図表参照)。

今回のパンデミックによる混乱が新薬の発売に与える影響の大きさはそれぞれ異なると考えられるが、その混乱を免れる企業はない。例えばJelmytoに関しては、年間の患者数が6000人から7000人という希少疾患の一種である低悪性度尿路上皮がんという膀胱がんを対象とする治療薬で、Urogen社がターゲットとしている専門医への販促活動にも支障を来す可能性がある。

パンデミックが続く間でも、がんをはじめとする生命にかかわる疾患の治療は、これまでと変わらず継続的に行われている。そうした意味では、それらの疾患を対象とする治療薬開発に注力する企業には影響が少ないと考えられるが、パンデミックにより学術会議など予定されていた会合が取り止めになれば、重要な販促活動として新薬を公開する場が失われ、参加する医師へのアピールができず大きな痛手になる。

希少疾患の治療も確実に影響を受けている。先天性の異常ヘモグロビン症であるβサラセミアの遺伝子治療を2020年1月にドイツで発売した米Bluebird Bio社は、4月初め、1例目の治療を行う予定としていたが、実際は2020年末までは治療開始が困難な状況になっているという。同社は、このパンデミックはドイツ以外の欧州市場でも発売に影響をおよぼすだろうと警告している。

最も影響を受けているのは誰か?

プライマリーケアの市場をターゲットとする新薬の発売は、全世界的な休業や活動停止といったシャットダウンの状況下では特に影響を受けやすい。医療システムの広域的な混乱に加えて、シャットダウンでは、そもそも販促担当者らが医療現場の医師に物理的に近づくことができない。

そうした観点では、Biohaven社は特に危機的状況にあるとみられる。同社は、片頭痛治療薬「Nurtec ODT*」を3月に発売し、恐らくマーケティングチームも準備を整えていたはずである。また、Esperion社のコレステロール低下薬「Nexletol」も、3月末には米国の薬局で既に販売態勢が整えられていた。この状況下で同社は、医師に向けて、電話や電子メールによる新薬に関するQ&Aを積極的に利用してほしいと呼び掛け、同社もこれら対応のため回線キャパシティを増やすなどの対応を行なっている。

* 口腔内崩壊錠

3月に発売された新薬には、米Aimmune社の経口ピーナツアレルギー治療薬「Palforzia」もある。Palforziaは経口薬だが、同医薬品はアレルギー専門医の管理下で医療機関での投与が必要な脱感作免疫療法薬のため、販売開始したものの苦戦を強いられている。Aimmune社もBiohaven社やEsperion社と同様、第1四半期の決算報告が5月とされているため、各社がこの時期に発売した新製品へのロックダウンへの影響が明らかになるだろう。

製薬業界の投資家は、今後明らかになる収益減の数字には注目すべきである。その数字は永続的な業績の後退を示すものではなく、販売の遅れを反映したものと捉えれば、失望には値しない。業界大手もパンデミックの影響は受けている。米Bristol-Myers Squibb(BMS)社は、3月に新しい多発性骨髄腫治療薬「Zeposia」の承認を取得したものの、発売を延期すると発表した。

BMS社のこの決定は、競合の激しい市場に参入するだけに、恐らく、できる限り万全な態勢でZeposiaの発売時期を迎えたいということだろう。大手製薬企業と比較して事業規模のより小さな製薬企業にとっては上市に向けた投資額がより重いため、販売開始時期を遅らせるという戦略を取りづらい、または取れないことが多く想定される。キャッシュフローの観点から、これら製薬企業にとって非常に困難な時期となるだろう。

注:Evaluate社の予測では、UrogenのJelmytoの2024年の売上高は7,600万ドルとされており、カットオフとして選択された1億ドルの閾値をわずかに下回っている。


■出典
Evaluate Vantage; Covid-19 adds a new danger to drug launches

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