*この記事は、2017年5月22日に「healsy(http://healsy.jp/)」に掲載されたものを2017年7月27日より「オンコロ」に移管したものになります。移管の際にオンコロのポリシーに則り加筆・修正しております。

長い間、進行再発膀胱がん(正確には腎盂がん、尿道がん、尿管がんを含む尿路上皮がん)の治療はゲムシタビン+シスプラチン併用療法(GC療法)が第一選択となるが、高齢等の理由にて使用できない方や効果が乏しくなったり副作用にて使用ができなくなった方に対する標準治療が確立していません。

その中、PD-L1抗体アテゾリズマブ(商品名テセントリク)やPD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬が脚光をあびるようになりました。

現に、米国食品医薬品局(FDA)は5剤もの免疫チェックポイント阻害薬を迅速承認しています。

PD-L1抗体テセントリク FDAが膀胱がん対象に初めて迅速承認された免疫チェックポイント阻害薬

プラチナ製剤抵抗性の進行再発膀胱がんの新薬としてテセントリク(アテゾリズマブ)がFDAによって迅速承認されたのは2016年5月18日と1年以上の前のこととなります。その後、2017年2月2日には、何らかの理由でプラチナ製剤を使用できない未治療の進行再発膀胱がん患者にも適応が拡大されました。

しかしながら、2017年5月10日に第3相試験の主要評価である生存期間が達成されなかったという衝撃ニュースが報じられました。

これは、テセントリク(アテゾリズマブ)は二つの臨床試験の結果で、それぞれ違った結果を意味しました。

一つ目の試験(IMvigor210;NCT02951767、NCT02108652)は、プラチナ系抗がん剤治療後に進行再発した膀胱癌の二次治療としてテセントリク(アテゾリズマブ)単剤療法の奏効率を検証した試験です。

二つ目の試験(IMvigor211;NCT02302807)は、プラチナ系抗がん剤もしくはその他の治療後に進行再発した膀胱癌の二次治療としてテセントリク(アテゾリズマブ)単剤療法の全生存期間を検証した試験です。

上記二つの試験の違いは、エビデンスレベルの高さと試験で検証する有効性です。一つ目の試験はエビデンスレベルはフェーズ2で、テセントリク(アテゾリズマブ)の検証した効果は奏効率、つまり腫瘍をどれくらい小さくするかです。二つ目の試験はフェーブ3で、検証した効果は全生存期間、つまり命をどれくらい伸ばしたかです。

フェーズ2よりも3、奏効率よりも全生存期間の方がテセントリク(アテゾリズマブ)の有効性を証明するうえで好ましいのですが、テセントリク(アテゾリズマブ)は一つ目の試験に成功し、二つ目の試験に失敗しました。

テセントリク(アテゾリズマブ)は、前述のようにシスプラチンの適応がない進行再発膀胱がん患者さんに一次治療として使える認可がFDAよりおりた矢先でしたので、センセーショナルであったといえます。

しかしながら、この「第3相試験の主要評価項目の失敗」という結果にかかわらず、2017年7月21日に欧州医薬品委員会(CHMP)が「プラチナ製剤ベースの化学療法による治療歴のある、もしくはシスプラチンベースの化学療法が不適格な成人の局所進行または転移性尿路上皮がん」に対し、単剤療法としてのテセントリクの使用について承認勧告を受領しています。

日本においては承認申請されていませんが、今後の更なるデータ蓄積が必要である位置づけとなります。

なお、転移性膀胱がん未治療期におけるテセントリク単剤療法やテセントリク+化学療法(シスプラチンまたはカルボプラチンとゲムシタビン)の併用療法の効果を検証する第3相試験や、術後補助化学療法としてテセントリクを使用する第3相試験が実施中であり、これらの結果が待たれます。

PD-1抗体キイトルーダ 日本で承認申請されている唯一の免疫チェックポイント阻害薬

2017年7月27日現在、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)は転移性膀胱がんの2次治療に対して二次治療として一般的に選択される化学療法と比較して生存期間を延長したことを証明した唯一の免疫チェックポイント阻害薬となります。

テセントリクの第3相試験(IMvigor211)と同じようなデザインの第3相試験であるKEYNOTE‐045試験の結果は、2017年2月17日に有名な医学誌New Enhland Journal of Medicineに掲載され、この結果を受け、2017年5月18日にFDAが迅速承認しました。(同様にプラチナ製剤併用化学療法適応がない方も迅速承認)

日本でも2017年4月28日に承認申請が行われ、6月22日には優先審査指定されており、早期承認が待たれます。

テセントリクとキイトルーダの2つの第3相試験の結果の違いは、PD-1、PD-L1の作用機序によるものなのか?試験に登録された患者背景によるものなのか?非小細胞肺がんのようにPD-L1発現率によるものなのか?その理由は明らかになっていません。

なお、転移性膀胱がん未治療期におけるキイトルーダ単剤療法やキイトルーダ+化学療法(シスプラチンまたはカルボプラチンとゲムシタビン)の併用療法の効果を検証する第3相試験がテセントリクと同じく実施中です。一方、BCG療法不応の初期膀胱がん対象のキイトルーダの第2相試験も実施中となります。

その他、オプジーボなど3つの免疫チェックポイント阻害薬が米国で迅速承認

その他、米国ではPD-1抗体ニボルマブ(商品名オプジーボ)、PD-L1抗体デュルバルマブ(米国商品名IMFINZI)、PD-L1抗体アベルマブ(BAVECIO)が転移性膀胱がんプラチナ製剤併用療法後の二次治療として迅速承認しています。(2017年2月2日オプジーボ、2017年5月1日IMFINZI、2017年6月1日BAVECIO)

米国では、膀胱がん対象に5剤承認されている現状である一方、現状のエビデンスの蓄積としてはキイトルーダが一歩進んでいるようには見えます。しかしながら、どの薬剤も期待されていることは確かであり、非小細胞肺がんを例にとっても未治療期の結果によっては全く異なった展開となります。さらに、免疫療法開発時代は単剤療法から、化学療法との併用、複合免疫療法(CTLA-4抗体やIDO阻害薬との併用)、VEGF系をはじめとした分子標的薬との併用といった免疫チェックポイント阻害薬+α療法の開発が激化しています。

記事:山田 創 (2017年7月31日加筆・修正:可知 健太)


この記事に利益相反はありません。

人気記事