アストラゼネカがロシュを1日に2回も打ち負かすEvaluate Vantage(2022.10.26)より


  • [公開日]2022.11.11
  • [最終更新日]2022.11.09

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

英アストラゼネカ社の2つの乳がんプロジェクトは、スイスのロシュ社が失敗した条件のもと、明らかに極めて重要な成功を収めている。

経口選択的エストロゲン受容体分解薬(Serds)は、ここ最近で最も期待はずれながん治療薬の1つになりつつあった。そのため、アストラゼネカ社が、ER陽性・Her2陰性乳がんにおいて、競合薬であるcamizestrant(カミゼストラント)で成功を収めたという今日(10月26日)のニュースは驚きであった。

さらに、アストラゼネカ社はAkt阻害剤Capivasertib(カピバセルチブ)で同じタイプの乳がんにおいて良い成績を収め、2つ目の勝利を収めた。この2つの結果は、Akt阻害剤ipatasertib(イパタセルチブ)の開発が事実上見送られたロシュ社にとって痛手となる。

アストラゼネカ社のcamizestrantのニュースは特に予想外であった。アストラゼネカ社のセカンドライン試験であるSerena-2は、ESR1変異を持つ患者を意図的に選別していなかったからである。米Radius社と英Menarini社によるelacestrant(エラケストラント)の試験で見られた有効性は、ESR1変異を有する患者で見られたものであり、Serdの中で唯一成功した試験であった。

現在の大きな疑問は、Serena-2に登録されたESR1変異症例の割合と、それらが無増悪生存期間PFS)改善の結果の要因となったかどうかである。アストラゼネカ社は以前、患者の30〜40%がESR1陽性になるとの予想を発表していた。参考までに、Menarini社のelacestrantのEmerald試験では、48%の患者がESR1変異を有していた。

アストラゼネカ社は以前、camizestrantは変異の有無に関わらず臨床活性を持つ可能性があると述べていた。しかし、仏サノフィ社もamcenestrant(アムセネストラント)について同様の主張をしていたものの、一次治療二次治療の両方で失敗し、現在ではプロジェクトが中止となっている。

ロシュ社も二次治療における試験で失敗し、一次治療での試験に望みを託している。アストラゼネカ社は、独自の一次治療における試験を実施中であり、最初にデータを得るのは、ESR1変異体に焦点を当てたSerena-6試験だろう。ESR1変異体は内分泌療法後に発生することが多いので、なぜこの戦略が必要なのかは不明である。

ERS1変異は初回治療患者の5%未満にしか見られず、この試験が成功しても市場はそれほど大きくはならないだろう、と米Jefferies社のアナリストは推測している。

この分野では他に、Serdであり完全なER拮抗薬とされているOP-1250の第1/2相試験データを本日(10月26日)追加報告した米Olema社がある。このグループは、57人の多くの治療歴のある患者で10%の奏効率を確認しているが、これは以前の中間解析時の17%から低下している。2次/3次治療患者を対象とした主要な単剤試験は、2023年半ばに開始される予定である。

米Arvinas社は、米ファイザー社と提携したプロジェクトとして、ER標的タンパク質分解薬ARV-471の単剤および併用の第3相試験を本年中に開始する予定だ。

活発化

一方、アストラゼネカ社はAkt阻害剤capivasertibで明らかな成功を収め、ロシュ社が以前失敗したメカニズムで1日に2勝したことになる。

また、CapivasertibはER陽性Her2陰性乳がんのCAPItello-291試験(camizestrantと同様)で成果を上げたが、ロシュ社の ipatasertibは初回治療のトリプルネガティブ乳がんが対象の試験2つと初回治療の前立腺がん試験で、計3つの試験に失敗している。

ここでも確かなデータはないが、アストラゼネカ社によれば、capivasertibとFaslodex(フェソロデックス、一般名:フルベストラント)の併用は、二次治療のCAPItello-291試験における主要評価項目であるPFSにおいてFaslodex単剤に勝ったという。全生存期間OS)の解析はまだ不完全であるが「有望」なデータであり、PFSの改善は、PTEN遺伝子の変化を含むさまざまな遺伝子変異を持つ患者と同様に、全例で確認されている。

ロシュ社がipatasertibで進行期において成功したのは、唯一PTEN陽性の前立腺がん患者のサブセットを対象としたIpatential-150試験だけだったことを考えると、この点は重要である。PTENの状態を調べるスクリーニングは普及しておらず、Ipatential-150のは全例では失敗したため、このサブグループの結果は無益な勝利となった。

注目すべきは、CAPItello-291試験が、最初に公表された重要なcapivasertibの試験であり、アストラゼネカ社のプロジェクトが最初のAkt阻害薬として承認されるための絶好の条件になっていることだ。他に4つの第3相試験が進行中で、そのうちの1つは来年に結果が出る見込みだ。

ロシュ社は、Ipatunity-130試験でipatasertibがすでに失敗したER陽性・Her2陰性の一次治療を対象としたIpatunity-150試験で、まだ1つの望みを残している。しかし、ロシュ社でさえも、あまり期待はしていない様子だ。Ipatunity-150試験は、同グループの四半期ごとの関連臨床試験リストにはもはや掲載されていないのだ。

■出典
astra-beats-roche-twice-day

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