ASCO 2023 – 卵巣がんにおける免疫腫瘍学の位置づけがついに明らかに?Evaluate Vantage(2023.6.3)より


  • [公開日]2023.06.09
  • [最終更新日]2023.06.07

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

英アストラゼネカ社のDuo-O試験は、BRCA陽性患者を除外することが、卵巣がんにおけるイミフィンジの明らかな成功のカギを握る可能性を示唆している。

アストラゼネカ社 は、これまでのところ抗 PD-(L)1抗体薬が効きにくいとされている卵巣がんにおいて、イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)の良好な結果を導き出したようだ。このデータは、4月に発表されたアバスチン(一般名:ベバシズマブ)/イミフィンジ/リムパーザ(一般名:オラパリブ)の3剤併用によるDuo-O試験に関するもので、ASCOの注目演題として発表されたばかりだ。

この結果は、他のPD-(L)1/PARP阻害剤の組み合わせが失敗している中で、明らかに成功を収めたという点で注目されている。その理由の一つは、アバスチン/リムパーザの投与で効果が見込めるBRCA遺伝子変異陽性患者をアストラゼネカ社が除外した点にあるかもしれない。それでも、イミフィンジの貢献度、効果の幅、無増悪生存期間PFS)のエンドポイントの頑健性については疑問が残るだろう。

卵巣がんにおけるPFSの妥当性については議論が続いており、PFSで臨床的なメリットがあっても、全生存期間で明らかに良くない結果が出るケースもある。例えば、英GSK社のPARP阻害剤であるゼジューラ(一般名:ニラパリブ)の卵巣がん維持療法での適用に制限がかけられたことなどがあげられる。

複雑な設定

Duo-O試験は複雑な3群(コホート)デザインで、2つの設定からなっていた。アクティブコホートは、初回治療としての化学療法/アバスチン/イミフィンジに続いて、維持療法としてアバスチン/イミフィンジに、リムパーザを併用した群としない群の2つであり、化学療法/アバスチンの初回治療に続いてアバスチン単独の維持を行うコントロールコホートと比較された。

さらに重要なことは、この試験にはBRCA遺伝子変異陰性患者のみが登録され、全例におけるPFSと、BRCA遺伝子変異陰性かつ他のHRD変異が陽性である場合のPFS、という2つの主要評価項目に分けて評価されたことである。

良いニュースは、アバスチン/イミフィンジ/リムパーザの3剤併用維持療法がp<0.0001で両方の主要評価項目を達成したことだ。一方悪い点は、アバスチン/イミフィンジがコントロールコホートに対して全く優位性を示さなかったことである。 生存曲線はもう一つの特徴を示している。HRD遺伝子変異陽性症例に対する効果が全例の効果に寄与していると考えられていたが、実際には、Duo-O試験におけるBRCA陰性患者の約60%を占めるHRD陰性症例においても、3剤併用療法はコントロールコホートに勝っていた。

PARP阻害がHRD変異のない患者に有効であることは逆説的であるように思われる。メモリアル・スローン・ケタリング癌センターのCarol Aghajanian博士は、ASCO開催前の記者会見でDuo-O試験について発表し、HRD判定の根拠となった検査は“不完全”であるが故に、実際にはこれらの患者がHRD陰性でない可能性を示唆した。

HRD陽性であることが実際にどの程度のメリットをもたらすかを理解することは、この治療の適用範囲を推定する上で重要である。そしてもちろん、Duo-O試験の副次評価項目である全生存期間(OS)については、まだ何もわかっていないのである。

また、イミフィンジがどの程度の効果をもたらすかは別の問題であり、特に維持療法にリムパーザを追加した場合のみ、良好な結果が得られたことに留意する必要がある。「もしもう一度試験をやるとしたら、もちろんアバスチン/リムパーザ維持療法のもう一つのコホート(試験群)を用意するだろう」とAghajanian氏は言った。

イミフィンジがここ(卵巣がん)で活躍するかどうかは、Duo-O試験のポジティブな結果が予想外であった理由の核心に触れるものである。スイスのロシュ社のImagyn-050試験、独メルク社/米ファイザー社のJavelin Ovarian 100試験、米メルク・アンド・カンパニー社のKeynote-100試験の失敗を見れば、免疫療法は卵巣がんにはあまり効果的ではない傾向がある。

次にこの理論を試すのは、メルク・アンド・カンパニー社のKeylynk-001試験で、キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)に続いて維持療法でリムパーザを使用し、Duo-O試験と同様にBRCA陰性の患者のみを登録した試験である。オプジーボ(一般名:ニボルマブ)とルブラカ(一般名:ルカパリブ)のAthena-Combo試験は第1四半期に結果が出る予定だったが、スポンサーの米Clovis社が倒産している。

■出典
asco-2023-role-immuno-oncology-ovarian-cancer

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