ASCO 2023 – 早期肺がん初回治療データを調査し、ダトポタマブの価値を見いだすEvaluate Vantage(2023.6.6)より


  • [公開日]2023.06.16
  • [最終更新日]2023.06.19

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

第一三共株式会社と英アストラゼネカ社は、Trop2をターゲットにしたプロジェクトですでに大きな賭けに出ており、初回治療での有効性を探っている。

Datopotamab deruxtecan(ダトポタマブ デルクステカン)の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する二次治療試験であるTropion-Lung01試験は、多くのバイオファーマが待ち望んでいるデータの一つだが、第一三共とアストラゼネカ社はすでにより大掛かりなことを考えている。 本日(6月6日)のAsco(米国臨床腫瘍学会)では、初回治療における抗体薬物複合体(ADC)のデータが発表され、アナリストはすでに複数の革新的な新薬の可能性について話している。

両社はすでに3つの大規模な初回治療試験を実施しており、第1b相Tropion-Lung02試験におけるキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)併用試験の結果について、早期有効性の兆候を慎重に吟味している。奏効率は有望だが、データセットはまだ比較的初期のもので、ASCOの発表データは抄録に記載されていた数値から若干悪化しており、早期のデータカットオフが懸念される。

本試験では、136名の転移性患者を初回治療と二次治療で募集し、datopotamabとキイトルーダの2剤併用療法、さらに化学療法を追加した3剤併用療法を実施した。今回の学会では、未治療のコホートに注目が集まっており、最新の奏効率は2剤併用療法で50%、3剤併用療法で57%だと報告された。

以前の抄録では、奏効率はそれぞれ55%と60%と記載されていた。

アストラゼネカ社のオンコロジー部門責任者である Susan Galbraith 氏は、昨日の Ascoでアナリストに、3 剤併用療法のデータセットは 2 剤併用療法よりも少し成熟しており、このデータは「進行中の主要な第 3 相試験をサポートするもの」であると述べた。

同氏は、大半の患者で腫瘍の縮小が見られ、PD-L1の発現レベルの違いによる奏効の持続性も良好であると述べている。奏効持続期間の中央値にはまだ到達していない。


Source: Astrazeneca company presentation.

比較的短いフォローアップ期間ではあるが、初回治療と二次治療の全患者の無増悪生存期間中央値(mPFS)は2剤併用で8.3カ月、3剤併用で7.8カ月である。

初回治療に特化したキイトルーダの結果は、ここでのハードルとなる。Keynote-189試験では、米メルク社の薬剤と化学療法の併用により、PD-L1発現率1-49%の患者のサブグループでmPFSが9.4ヶ月となった。Keynote-042試験では、キイトルーダ単剤療法はPD-L1発現量が50%以上の患者で6.9ヶ月のmPFSを達成している。

試験間の比較にはまだ時間がかかりそうだが、今回のdatopotamabの結果は、このプロジェクトに対する大きな期待を後押しするものである。米ジェフリーズ証券のアナリストは、datopotamabの初回治療におけるピーク時は約140億ドルになると述べているが、このような数字が実現するためには、ADCはキイトルーダに対してPFSを2倍にする必要がある。

毒性については、エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)と同じ問題である間質性肺疾患(ILD)が見られ、注意が必要だ。Tropion-Lung02試験では、ほとんどが軽症例でグレード3は3%に過ぎないものの、全グレード併せて10%の割合で認められている。アストラゼネカ社は、ILDは多くの前治療歴を有する患者においてより問題となるものであり、もしそれが本当であれば、現在進行中の主要な臨床試験において管理可能な割合となるはずであると主張している。

マサチューセッツ総合病院のRebecca Heist医師は、AscoのTropion-Lung02試験のデータについて、安全性を懸念していた。彼女は、このレベルのILDや肺炎が初回治療で許容されるのか疑問を呈した。そして、検証的なピボタル試験で有効性と安全性を証明することができなければ、バイオマーカー戦略が重要になるかもしれないことを示唆した。

Trop2は重要か?

現在進行中のピボタル試験は、このバイオマーカーに関する疑問に答えるのに役立つかもしれない。Trop2の発現が患者に違いをもたらすかどうかは、今のところ不明である。このタンパク質は、NSCLC腫瘍の90%以上で発現していると考えられている。

第一三共社はEvaluate Vantageチームに、Tropion-Lung02試験の患者がバイオマーカーの状態によって層別化されていないことを認めたが、この試験に登録された患者には治療前の腫瘍生検が採取されている。

Galbraith氏はまた、アストラゼネカ社が「Trop2バイオマーカーの評価に積極的に取り組んでいる」ことを明らかにした。アストラ社が開発したTrop2診断検査は、第3相Avanzar試験で検討されている。同社はVantage社に対し、患者のPD-L1発現レベルや腫瘍組織型に関係なくTrop2バイオマーカーを評価できる試験デザインになると述べている。

それ以外では、Trop2の有用性は未知数である。 Ascoでは、>乳がんの効果予測にある程度の成果を示唆するデータが発表されたが、肺がんについては第一三共とアストラゼネカ社の重要なプログラム次第で何らかの答えが得られるだろう。ただし、これらの情報が出るにはもう少し時間がかかりそうであり、昨日、アストラゼネカ社は、主要な情報が出せるのは最低でも2024年頃になるだろうと報告している。

2023年6月8日:Avanzar試験で検討されているTrop2バイオマーカーが、以前記載されていた第一三共ではなく、アストラゼネカ社によって開発されていることを明確にするために修正されました。また、Avanzar試験のデザインに関するアストラゼネカ社のコメントも追加しました。Tropion-Lung02試験の無増悪生存期間の項において、これらのデータがファーストラインセカンドラインの両方の患者から得られたものであることが明確にされました。

2023年6月5日:Ascoでのデータに関する議論からのコメントを追加・更新しました。

■出典
asco-2023-early-first-line-lung-cancer-data-mined-datopotamab

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