【プレゼントキャンペーン】がん研有明病院 高野先生書籍「がんとともに、自分らしく生きる~希望をもって、がんと向き合う「HBM」のすすめ~」

Asco 2022 –エンハーツは問う、どこまで下げることができるのかEvaluate Vantage(2022.06.05)より


  • [公開日]2022.06.10
  • [最終更新日]2022.06.10

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

 

トリプルネガティブ乳がんでの勝利宣言は明確ではないが、別の強力なリードアウトにより、HER2陰性乳がんの治療方法が再定義されるかもしれない。

エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)は、HER2陽性乳がんにおいて既にいくつかの優れた結果を出しており、最新の成績もその期待を裏切らないものだ。この抗体薬物複合体(ADC)は、現在、HER2陰性とされる患者において、化学療法に対する生存期間の延長という素晴らしい効果を示し、そのデータは、(HER2の)発現が極めて低い患者においても保持されている。

Destiny-Breast04試験において、エストロゲン受容体(ER)陽性のHER2低発現乳がんの女性患者において、エンハーツが化学療法に比べ無増悪生存期間PFS中央値をほぼ2倍の10.1ヶ月に延長し、進行リスクを49%低減させたことが、米国癌治療学会議(Asco 2022)で新たに発表されたデータから明らかになった。乳がんの約半数はHER2低発現であるとされており、同剤の適応拡大が期待される。

しかし、ERの状態に関係なく効果が見られたという研究者の主張には、より疑問が残る。トリプルネガティブ乳がんとして知られるこのコホートは、約60名の患者しか登録されておらず、統計的な検出力が付与されていなかったからである。また、Ascoがアブストラクトで誤ったデータを発表してしまうという不手際もひんしゅくを買った。

第一三共株式会社はEvaluateのVantageチームに、当初5人の患者がER陰性と誤って分類されたことを明かした。アブストラクトでは、これらの患者はER陰性群に分類されたままであったが、Ascoで発表されNew England of Medicine(NEJM)誌に掲載されるまでに、これらの患者は削除され、運良くER陰性群の結果がより良くなった。

第一三共は、患者のER状態を再分析することは事前に計画されていたことであり、これは最初のリードアウトが示した結果に対して行われたものではないと主張している。

日本の医薬品メーカー(第一三共)のオンコロジー開発責任者であるGilles Gallant氏はインタビューに「この薬剤はER陽性か陰性かには影響されない」と答えている。

米エモリー大学医学部のJane Lowe Meisel博士によれば、採用した患者数が少ないため、エンハーツがER陰性群で本当に効果を上げているかどうかを知るのは難しいとのことだ。

「しかし、生物学的な妥当性があり、実際に効果があると考える理由は多くある。(トリプルネガティブの)患者と相談する選択肢のひとつだ」と、今朝のAscoの記者会見で彼女は述べた。

Destiny-Breast04試験は、1次、2次治療としての化学療法で進行し、ホルモン療法が効かなくなった進行性の乳がん患者を組み入れた。また、3分の1以上はCDK4/6阻害薬が無効となった患者であった。HER2低発現は、免疫組織化学IHC)スコアが1+、または2+かつin-situハイブリダイゼーションスコアが陰性(ISH-)と定義された。

現在のガイドラインでは、これらの患者はHER2陰性とみなされることになっているが、これは主に、このグループにおいて他のHER2標的薬が有効性を示さないためである。

この試験では、患者をIHCスコアで層別化し、IHC1+と2+/ISH-の違いに関わらず、ハザード比0.48と0.55をそれぞれ示し、有効性が認められた。また、今日(6月5日)発表されたNEJM誌の記事によると、医師が選択した化学療法であるコントロール群と比較して、すべてのサブグループにおいて明らかな生存率の向上が認められたという。

同試験が全生存期間(OS)にも影響を及ぼしたことはすでに知られており、6.4ヶ月の優位性は、今日この後Asco2022で発表される全データで医師から拍手喝采を浴びることになりそうだ。PFSの結果は金融業界の期待にほぼ合致しており、OSについては50%の改善を期待する声もあったが、この結果を失望と表現するのは難しいだろう。

アナリストは、HER2陰性のビジネスチャンスはピーク時の年間収益で20~30億ドルの価値があると考えており、エンハーツのピーク時総売上高の約3分の1に貢献すると見ている。

なお、同剤の最大の毒性である間質性肺疾患(ILD)が再び現れ、同試験では3名が死亡したことに注意を払う必要がある。より徹底したモニタリングと教育のおかげで、ILD、特に高悪性度のイベントの発生率は、エンハーツの試験で減少している。この副作用は、英アストラゼネカ社と第一三共が同剤を早期治療に移行させるために克服すべき最大の障壁であることは間違いない。

重大なバイスタンダー効果

エンハーツの高い抗体/薬物比と強い「バイスタンダー効果」(ADCが直接作用した細胞だけでなく、近くの細胞も殺すという意味)は、HER2標的を示す腫瘍細胞が比較的少ない患者での有効性に寄与すると考えられている。

IHCスコアは、もはやエンハーツが有効な患者を選択するための最良の方法ではないかもしれない。第一三共とアストラゼネカ社は、HER2-0のコホートも含むDestiny-Breast06試験というHer2低発現のフォローアップ試験で、別のアッセイを試行している。

第一三共のGallant氏は、「Her2-0であっても、受容体がゼロというわけではない。染色する細胞が10%以下ということであり、受容体が存在することになる」と述べ、「大きな疑問は、まだ確定していないが、HER2発現をどこまで下げられるかということだ」

しかし、Destiny-Breast04試験がすでに重要な役割を担っていることは明らかだ。この試験により、エンハーツは、これまで化学療法しか選択肢がなかった患者層に対する最初の標的薬となり、これまでのHER2陰性がんの定義を覆すきっかけとなるかもしれない。

■出典
Asco 2022 – great expectations for Adicet, Arcellx and PMV

×

リサーチのお願い