国立がん研究センター東病院は9月15日、切除可能な固形がんの患者における分子的残存病変(MRD)検査を活用した新しい臨床試験デザインの枠組みを提唱した。
MRD検査は、根治切除後の血液中に微量に残存する循環腫瘍DNA(ctDNA)の検出により、画像検査では分からない再発リスクを早期に把握できる技術である。個々の患者の再発リスクを精密に評価することで、手術前後の治療方針を決定する個別化治療の開発が注目を集めている。
MRD検査でctDNAが検出された(MRD陽性)再発リスクの高い患者のみを対象とした臨床試験は、より少ない被検者数で治療効果を検証できる利点がある一方で、同病院が主導したALTAIR試験の経験などから、MRD陽性の適格患者の絶対数が少なく、従来の大規模臨床試験の実施が困難であることも明らかになってきた。
そこで同研究グループは、MRD検査に基づく新規治療開発を効率的に推進するため、以下の三つの柱からなる概念的枠組みを提唱した。
MRDレジストリ構築
MRD検査を実施したランダム化比較試験(RCT)およびリアルワールドデータから匿名化された患者個別データを統合したMRDレジストリを構築し、薬事審査の際に外部対照コホートとして活用する。
実施可能性に応じた三段階の試験デザイン
MRD陽性の患者の数が多い場合は、常に大規模なRCTが標準的な評価方法(優先度1(標準型RCT))→MRD陽性の患者の数が限られる場合は、少数例のRCTにレジストリによる外部対照を組み合わせて、新規治療評価を補強(優先度2(ハイブリッドRCT))→MRD陽性の患者の数が少なくRCTが困難な場合は、単群検証的試験を実施し、レジストリによる外部対照との比較で新規治療評価を補強(優先度3(レジストリ補強型単群検証試験))。
ctDNA動態評価
MRDレジストリには、ctDNAの変化量もデータとして含む。治療によりctDNAが陰性化するctDNAクリアランスと、持続的にctDNAが検出される持続陽性の二分類を指標とすることで、生存期間など従来の長期的な指標と比べて、より早期の新規治療評価が可能となり、治療開発の効率化が期待される。

画像はリリースより)
同研究グループは、今回提唱した新しいがん治療開発の枠組みの実現に向けて、国際的な研究チームとの連携、また、規制当局、学術団体、製薬企業、診断企業等との早期対話を通じてMRDレジストリを構築していく予定だ。一方で、この枠組みの確立には10年程度の長期的な取り組みが必要であり、現時点では概念的提言の段階である、としている。
なお本研究結果は、がん専門の科学雑誌「Cancer Cell」に日本時間2026年9月15日に掲載された。
参照元:
国立がん研究センター東病院 研究トピックス