8月24日、厚生労働省薬事審議会 医薬品第二部会が開催された。同部会において、審議事項のうち5製品が、また報告事項のうち7製品ががん関連の薬剤であった。
審議品目
キイジェクト配合皮下注395mg、同配合皮下注790mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)/ベラヒアルロニダーゼアルファ(遺伝子組換え))
申請企業: MSD
効能・効果:
「悪性黒色腫、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、非小細胞肺がんにおける術前・術後補助療法、再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、根治切除不能な尿路上皮がん、がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がん(標準的な治療が困難な場合に限る)、根治切除不能又は転移性の腎細胞がん、腎細胞がんにおける術後補助療法、再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん、局所進行頭頸部がんにおける術前・術後補助療法、根治切除不能な進行・再発の食道がん、治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん、PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん、ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの乳がんにおける術前・術後薬物療法、進行・再発の子宮体がん、がん化学療法後に増悪した高い腫瘍遺伝子変異量(TMB-High)を有する進行・再発の固形がん(標準的な治療が困難な場合に限る)、進行又は再発の子宮頸がん、局所進行子宮頸がん、再発又は難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、治癒切除不能な進行・再発の胃がん、治癒切除不能な胆道がん、切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫、白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品、新医療用配合剤
キイジェクトは、抗PD-1抗体薬であるキイトルーダの皮下注製剤。キイトルーダに、皮下組織への薬剤の分散性と透過性を高めるヒトヒアルロニダーゼの変異体であるベラヒアルロニダーゼアルファが配合されている。
現在のキイトルーダが持つ22の適応に、今回の医薬品第二部会で報告・了承された卵巣がんが加わり、全23の適応を持つことになる。
現在の静注製剤であるキイトルーダが30分の点滴投与であるのに対し、キイジェクトは3週間ごと、または6週間ごとに皮下投与となっており、利便性の向上などが期待される。
オジェンダ錠100mg、同ドライシロップ300mg(トボラフェニブ)
申請企業: IPSEN
効能・効果:
「BRAF遺伝子変異又は融合遺伝子を有する低悪性度神経膠腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。条件付き承認(薬物動態試験の実施、日本人患者に対する有効性を確認することを目的とした製造販売後調査の実施)。
神経膠腫は、脳のグリア細胞から発生する脳腫瘍の一種である。低悪性度であったとしても、その後の進行によって神経障害や身体障害をきたす可能性がある。
既にタフィンラー(一般名:ダブラフェニブ)+メキニスト(一般名:トラメチニブ)が、「BRAF遺伝子変異を有する低悪性度神経膠腫」に対して承認されているが、BRAFV600E変異が主な対象である。一方、今回了承となったオジェンダは、Type II pan-RAFキナーゼ阻害剤(RAFの複数の変異型を幅広く標的としたキナーゼ阻害剤)であるため、適応範囲がより広い。
エラヒア点滴静注100mg(ミルベツキシマブ ソラブタンシン(遺伝子組換え))
申請企業:武田薬品
効能・効果:
「葉酸受容体α陽性の白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
再発卵巣がんは、プラチナ製剤の治療終了から再発までの期間が6か月以上のプラチナ感受性卵巣がん(PSOC)と、6か月未満のプラチナ抵抗性卵巣がん(PROC)に分類され、後者はより予後不良かつ治療選択肢が限られている。
今回了承となったエラヒアは、約90%の卵巣がんに発現していると報告されている葉酸受容体α(FRα)を標的とした抗体薬物複合体(ADC)。複数の臨床試験(海外第3相MIRASOL試験、SORAYA試験、国内第1/2相TAK-853-1501試験)で、PROCへの効果が示されている。
モデーソカプセル125mg(ドルダビプロン塩酸塩)
申請企業:大原薬品
効能・効果:
「びまん性正中膠腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
モデーソは、ミトコンドリアプロテアーゼの ClpP(Caseinolytic protease P)の活性化及びドパミンD2受容体に対するアンタゴニスト作用により、がん細胞における代謝障害、ミトコンドリアの損傷、統合的ストレス応答経路の活性化を誘発し、がん細胞をアポトーシスに導くと考えられている。
びまん性正中膠腫は、正中線近傍(間脳、脳幹、脊髄等)に発生する浸潤性の神経膠腫の総称であり、その大多数に認められるH3 K27M変異症例は、悪性度が最も高いとされている。なお国内でH3 K27M変異を有するびまん性正中膠腫に対する治療薬の承認了承は、今回が初めてとなる見込みである。
テビムブラ点滴静注100mg(チスレリズマブ(遺伝子組換え))
申請企業:ビーワン・メディシンズ
効能・効果:
「再発又は遠隔転移を有する上咽頭がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。条件付き承認(日本人患者に対する有効性を確認することを目的とした製造販売後調査の実施)。
テビムブラは、抗PD-1抗体薬のひとつ。今回の了承により、再発・転移性の上咽頭がんの一次治療として、ゲムシタビン+シスプラチンとの併用で使用可能となる見込みである。
報告品目
エンハーツ点滴静注用100mg(トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え))
申請企業:第一三共
効能・効果:
「HER2陽性の手術不能又は再発乳がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
エンハーツは、HER2タンパク質を標的とした抗体薬物複合体(ADC)。既にHER2陽性乳がんに対して、2次および3次治療としての承認を取得してきたが、今回初回治療としての使用が承認了承された。なお初回治療の用法・用量は、抗HER2抗体パージェタ(一般名:ペルツズマブ)との併用で使用される見込みである。
キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))
申請企業: MSD
効能・効果:
「白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣がん」を効能・効果とする新効能医薬品。
キイトルーダは、抗PD-1抗体薬であり、今回は上述のエラヒア同様にPROCに対する治療薬として承認が了承された。また、今回はキイトルーダ点滴静注と併せて、キイトルーダの皮下注製剤であるキイジェクトも了承となった。
エプキンリ皮下注4mg、同皮下注48mg(エプコリタマブ(遺伝子組換え))
申請企業:ジェンマブ
効能・効果:
「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫」を効能・効果とする新用量医薬品。
エプキンリは、T細胞上のCD3とB細胞上のCD20を標的とした二重特異性抗体。既に日本においては、「2つ以上の」標準療法後の再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL、高悪性度B細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫)および再発又は難治性の濾胞性リンパ腫に対して承認されている。今回は、「1つ以上の」全身療法を受けた再発又は難治性の濾胞性リンパ腫を対象に、リツキサン(一般名:リツキシマブ)+レブラミド(一般名:レナリドミド)との併用で使用可能となる見込みである。
イブランス錠25mg、同錠125mg(パルボシクリブ)
申請企業:ファイザー
効能・効果:
「ホルモン受容体陽性かつHER2陽性の手術不能又は再発乳がんにおける化学療法後の維持療法」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
イブランスは、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害剤であり、細胞周期の進行を抑えることでがん細胞の増殖を抑制すると考えられている。既にホルモン受容体(HR)陽性「HER2陰性」乳がんを対象に承認されており、今回はHR陽性「HER2陽性」乳がんの適応追加となる。
テクベイリ皮下注30mg、同皮下注153mg(テクリスタマブ(遺伝子組換え))
申請企業:ヤンセンファーマ
効能・効果:
「再発又は難治性の多発性骨髄腫」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
テクベイリは、B細胞成熟抗原(BCMA)とT細胞上のCD3を標的とする二重特異性抗体。既に再発又は難治性多発性骨髄腫の治療薬として、単剤療法、およびGPRC5DとCD3を標的とした二重特異性抗体タービー(一般名:トアルクエタマブ)との併用療法が承認されており、今回抗CD38抗体ダラキューロ(一般名:ダラツムマブ)との併用療法として2次治療での使用が可能となる見込みである。
ダトロウェイ点滴静注用100mg(ダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え))
申請企業:第一三共
効能・効果:
「ホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
ダトロウェイは、がん細胞上のTROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)。既に化学療法による治療歴のあるホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性乳がんの治療薬として承認されており、今回トリプルネガティブ乳がんにおける初回治療としても使用可能となる。
なお、乳がんにおけるTROP2標的ADCとしては、トロデルビ(一般名:サシツズマブ ゴビテカン)が「化学療法歴のあるトリプルネガティブ乳がん」および「化学療法歴のあるHR陽性HER2陰性乳がん」において承認を取得しているが、トリプルネガティブ乳がんの「初回治療」に使用可能なTROP2標的ADCは、ダトロウェイが初めてとなる。
①リブロファズ配合皮下注、②同配合皮下注22mL(アミバンタマブ(遺伝子組換え)/ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え))
申請企業:ヤンセンファーマ
効能・効果:
「EGFR 遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、EGFR 遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とする新用量・剤形追加に係る医薬品。
リブロファズは、がん細胞上のEGFRとMETを標的とした二重特異性抗体であるライブリバント(点滴静注)とヒアルロン酸加水分解酵素(遺伝子組換えヒアルロニダーゼ「rHuPH20」)を組み合わせた皮下注製剤。既に2週1回投与および3週1回投与として承認を取得しているが、今回4週1回投与としての用法・用量が追加となる。
参照元:
厚生労働省 薬事審議会(医薬品第二部会)