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進行・再発胃がん治療に新たな選択肢、“第二世代”抗PD-1抗体薬「テビムブラ」が一次治療へ参入――構造的特徴と腹膜播種で期待される効果 ビーワン・メディシンズがメディアセミナーを開催

[公開日] 2026.09.02[最終更新日] 2026.09.02

ビーワン・メディシンズ合同会社は8月20日、抗PD-1抗体薬「テビムブラ(一般名:チスレリズマブ(遺伝子組換え))」について、メディアセミナーを開催した。同薬は2026年6月、「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」の治療薬として、厚生労働省から追加承認を取得している。 同セミナーでは大阪けいさつ病院 消化器外科 主任部長である大森健先生が登壇し、“第二世代”抗PD-1抗体薬とも言える独自の薬剤設計がもたらす臨床的意義や、承認の根拠となった臨床試験データについて解説を行った。
大森健先生
大森健先生(提供写真)

テビムブラの特徴である2つの薬剤設計

テビムブラは、胃がんに対する一次治療薬として承認された日本で3つ目の免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体薬)である。大森先生は同薬に対して、食道がん領域での1年間の使用経験から高い奏効率(腫瘍縮小効果)を実感していると言及。他臓器浸潤を伴う進行食道胃接合部がん(T4b)に対し、テビムブラ併用後にコンバージョン手術を施行し、がん細胞が完全に消失する病理学的完全奏効(pCR)を達成した症例を経験したという。 このようにテビムブラが高い治療効果を発揮することが期待される背景には、“第二世代”抗PD-1抗体薬とも言える独自のサイエンスに基づく、以下2点の構造上の工夫がある。

1. Fc領域改変による貪食・排除の回避

通常のがん治療抗体では、マクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫細胞を呼び寄せて追撃させるため、ADCC活性(抗体依存性細胞傷害活性)やADCP活性(抗体依存性細胞貪食作用)を活用する設計が採用されることがある。 一方、抗PD-1抗体の標的であるPD-1は、がんを攻撃するT細胞の表面に発現している。そのため、Fcγ受容体(マクロファージなどの免疫細胞が抗体を認識する受け皿)を介したマクロファージとの相互作用によって、抗体が結合したT細胞まで貪食され、治療効果を妨げる可能性が指摘されている。 テビムブラは、この問題を解決するため、Fc領域を遺伝子改変し、Fcγ受容体との結合を最小化するよう設計されている。これにより、ADCCやADCPなどのエフェクター機能を起こしにくくし、T細胞の不必要な貪食を抑制することで、抗腫瘍免疫を維持することが期待されている。

2. 強力かつ持続的なブロッキング

抗PD-1抗体薬の効果を高めるには、T細胞上のPD-1とがん細胞上のPD-L1との結合をどれだけ効率的に阻害できるか、そしてPD-1にどれだけ強く結合し続けられるかが重要となる。 テビムブラは、PD-1上でPD-L1と競合する領域を82%という高いオーバーラップ率で覆うことで、PD-L1によるブレーキがかかるのを効率的に阻害する。さらに、結合の強さ(親和性)を示す解離定数(KD値)は既存薬の約100分の1と極めて低く、一度PD-1に結合すると解離しにくいという特徴を持つ。 この強力かつ広範なブロッキングにより、T細胞にかかったブレーキを持続的に解除し、抗腫瘍免疫を維持・活性化することが期待される。

PD-L1発現群で示された良好な治療効果

今回の承認根拠となった「RATIONALE-305試験」は、化学療法へのテビムブラ上乗せ効果を検証したものである。同試験では、主要評価項目である全生存期間(OS)において、化学療法単独群と比較してテビムブラ併用群の優位性を実証した。 ・ITT(全体集団):OS中央値15.0か月(対照群12.9か月)、ハザード比0.80。 ・TAP≧5%:OS中央値17.2か月(対照群12.6か月)、ハザード比0.74。 ・TAP≧10%:OS中央値22.5か月(対照群12.3か月)、ハザード比0.57(探索的事後解析)。 PD-L1低発現・陰性群では、テビムブラを含む免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の上乗せ効果が小さくなる傾向が認められ、PD-L1発現レベルによって治療効果に差があることが示唆されている。こうした結果からも、治療前にPD-L1発現を適切に評価することの重要性がうかがえる。

腹膜播種でも期待される可能性

胃がん治療の難関である「腹膜播種(ふくまくはしゅ)」の病変環境には、マクロファージが多く存在している。従来の抗PD-1抗体薬では、抗体が結合したT細胞が抗体依存性細胞貪食(ADCP)によってマクロファージに貪食されることで、T細胞の攻撃力が低下すると考えられる。 一方、テビムブラは、ADCP活性を起こしにくいようFc領域が改変されているため、マクロファージによるT細胞の貪食・排除を回避するよう設計されている。そのため、マクロファージが豊富に存在する腹膜播種の病変環境でもT細胞が攻撃力を維持し、がん細胞への免疫応答を持続できることが期待されるという。 RATIONALE-305試験では、治験設計段階から腹膜播種の有無を層別化因子として組み込んでおり、全体集団の43.5%(434例)に腹膜播種ありの難治性患者が含まれていた。他の主要な第3相試験と比べても、腹膜播種を伴う患者が多く含まれていた点が特徴である。 このような患者背景でありながら、探索的事後解析として、テビムブラ併用群では、腹膜播種ありの患者においてハザード比0.78(ITT)〜0.71(TAP ≧ 5%)と一貫した有効性を実証した。大森先生は「腹膜播種を伴う患者さんに対しても非常に期待できる『新たな一手』として、このテビムブラを使っていけるのではないかと強く期待している」と語った。

「実臨床の壁」をどう乗り越えるか

優れた新薬でも既存の臨床フローに浸透しなければ普及しない。セミナーでは「コンパニオン診断」と「併用レジメン」など運用における壁について質問が及んだ。 PD-L1発現を評価する指標の一つで、テビムブラの投与前検査に用いられる「TAPスコア」と、実臨床で広く普及している「CPS」との使い分けを問われた大森先生は、現在の運用について説明。「胃がん一次治療ではHER2、CLDN18.2、MSI、PD-L1(CPS:22C3)の一括測定が一般的。当院でもCPSの結果からTAPに読み替えて代用・判定している」と解説。既存インフラを活かしたスムーズな導入が可能であることを示した。 また、日本の臨床現場では、S-1を含む化学療法が広く用いられてきた。一方で、テビムブラの承認された併用レジメンはCAPOXまたはFP療法である。これに対し大森先生は、経口摂取が可能な患者では、従来のS-1ベースの治療にこだわらず、確固たるエビデンスが示されているCAPOXを選択し、テビムブラの併用を積極的に考慮すべきとの考えを示した。一方で、将来的には、S-1やSOX療法との併用データの蓄積や保険適用の拡大にも期待を示し、講演を締めくくった。
大森 健(おおもり たけし)先生
大阪けいさつ病院 消化器外科主任部長、先端ロボット手術センター長、低侵襲コンバージョン手術センター長、食道・胃がんセンター長。胃がん・食道がんを中心に、低侵襲手術に取り組む。2009年より単孔式手術を手がけ、ロボット手術や高度進行がんに対するコンバージョン手術にも注力。2006年4月に新設された大阪けいさつ病院 低侵襲コンバージョン手術センターを牽引し、患者さんの負担を抑えた低侵襲治療の実践と新たな手術手技の開発に力を注いでいる。
関連リンク: ビーワン・メディシンズ合同会社 ウェブサイト
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