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骨髄線維症治療に新たな選択肢、JAK2選択的阻害薬「インレビック」がもつ臨床的意義 レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパンがメディアセミナーを開催

[公開日] 2026.08.18[最終更新日] 2026.08.17

2026年8月4日、レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパン株式会社主催のメディアセミナー「骨髄線維症治療の最新知見と新しいJAK阻害剤フェドラチニブ」が開催された。九州大学の赤司浩一先生が、骨髄線維症(MF)の複雑な病態生理と、今年6月に発売された新規JAK2選択的阻害薬「インレビック(一般名:フェドラチニブ塩酸塩水和物)」の臨床成績を講演。さらに患者会(MPN-JAPAN)所属の患者さんが登壇し、当事者視点から闘病の軌跡とアンメットニーズを語った。

骨髄線維症(MF)の病態と治療の課題とは

(九州大学 赤司浩一先生 ※提供写真) 骨髄線維症(MF)は、骨髄が広範に線維化し正常な造血機能が失われる血液の希少疾患である。原因不明の「原発性骨髄線維症(PMF)」と、真性赤血球増加症や本態性血小板血症などの基礎疾患に続発する「二次性骨髄線維症」に分けられる。骨髄での造血は少数の造血幹細胞が自己複製し恒常性を維持しているが、加齢に伴う遺伝子異常の蓄積などにより、病態が進行する。 PMFの主なドライバー変異としてJAK2、MPL、CALR変異が同定されており、共通して下流のJAK2シグナルを恒常的に活性化させ、造血細胞のクローン自律的増殖を引き起こす。この異常クローンから分泌されるTGF-βやPDGFなどの増殖因子が線維芽細胞を刺激し、コラーゲンの大量産生・沈着を招き骨髄を線維化させる。 骨髄が線維化されると、脾臓や肝臓などの他の臓器で「髄外造血」が始まり、脾腫が生じる。正常な造血の場を失うため、患者は貧血や出血に加え、脾腫による腹部膨満感や、炎症性サイトカインによる発熱、全身倦怠感、寝汗(盗汗)、体重減少などの症状が現れる。 骨髄線維症における唯一の治癒的治療法は同種造血幹細胞移植だが、強度の前処置や合併症リスクから、高齢者や全身状態が不良な患者には適応が難しい。 移植非適応例や脾腫・全身症状の管理には主にJAK1/2阻害薬ルキソリチニブが用いられてきたが、リアルワールドでは3年以内に約半数の患者が、貧血や血小板減少などの血球減少副作用や、効果減弱により治療中止に至っている。

JAK2選択的阻害薬は何をもたらすのか

2026年6月に発売された新規経口JAK2選択的阻害薬「インレビック(一般名:フェドラチニブ塩酸塩水和物)」は、JAK2のATP結合部位に加え、基質結合部位の双方に結合し、その活性化を阻害する。 未治療例を対象とした臨床試験(JAKARTA試験)では、24週時点で脾臓容積が35%以上縮小した割合(SVR35)が36.5%(プラセボ群1.0%)、全身症状(TSS)が50%以上改善した割合が39.6%(プラセボ群8.2%)と有意な有効性を示した。また、ルキソリチニブ治療後に不耐容等となった患者を対象とした試験(FREEDOM 2試験)でも、SVR35が35.8%(標準治療群6.0%)、TSSの50%以上の改善が34.1%(標準治療群16.9%)とセカンドラインでも顕著な改善効果が得られた。 血球減少を伴う患者に対しても、開始時の血小板数が5万〜10万/μLの低値であっても標準用量(400mg)で減量なく治療を開始・維持でき、治療期間中の平均血小板数も5万/μL以上で推移した。 副作用の下痢(52.0%)や悪心(50.2%)等は初期の対症療法でコントロール可能であり、稀に見られる重大な副作用のウェルニッケ脳症も、投与前からの測定とビタミンB1補充療法で管理可能とされている。 現在、JAK2阻害薬は骨髄線維症の治療において重要なキードラッグであり、今後も開発が進むと予想される。赤司先生は「最適な治療アルゴリズムを構築していくことが、今後の骨髄線維症治療において重要だと言える」と今後の展望を述べた。

診断まで9ヶ月、当事者が語る治療の歩みと新薬への期待

続いて、患者会「MPN-JAPAN」所属の患者であるAさんが登壇。Aさんは2021年6月に立ち仕事が辛くなり、貧血(ヘモグロビン9.8g/dL)を指摘されたが原因不明の経過観察となった。激しい足の痛みに襲われ、MRI検査などを経て2022年3月に骨髄線維症と診断されるまで約9ヶ月を要した。 治療開始後には、薬の副作用によるヘモグロビン値急降下に直面し、「このまま血が作られなくなったら、一体どうなってしまうのだろう」と強い不安を覚えたという。輸血などの治療を経て数値は回復したが、口内のザラザラや筋肉の攣りなどの随伴症状は今も続いている。 現在は薬によって進行を抑えているが、悪化した場合、年齢の問題から骨髄移植は難しいという。こうした中、ここ数年で新薬が登場していることに触れ、「私が治療を始めたときは、ルキソリチニブ一択でした。ここ5年の間にお薬が2つ3つと出てきたことをうれしく思います」と、治療選択肢が増えたことへの喜びを語った。 その一方、治療費が高騰することに対して不安もあるという。「(高額療養費制度など)様々な医療制度でサポートいただいているのですが、それでも働いている人にとっては、『非常に高額だな』『重い負担だな』と感じています」と語り、公的な支援や経済的なサポートが今後さらに充実することに期待を寄せた。 関連リンク: レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパン株式会社 ウェブサイト
ニュース 骨髄線維症 JAK2インレビックフェドラチニブ

茂木 孝裕

オンコロサイト・コンテンツ編集者。法政大学社会学部メディア社会学科卒業後、広告代理店、スポーツ新聞社などを経たのち、医療情報サイトで編集・ライター業務に約6年従事。2019年よりクリニカルトライアル(現3Hメディソリューション)/オンコロに参加。オンコロジー領域以外の医療情報も幅広く取材。

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