2026年7月31日、医学誌「Journal of Medical Internet Research」にて、日本(受診率<50%)と米国(受診率>70%)における乳がん検診受診率の格差に着目し、X(旧Twitter)上の投稿データ(日本語30,027件、英語16,796件)を対象に、大規模言語モデル(LLM)や共起ネットワーク解析等の自然言語処理(NLP)を用いて比較分析した
日本からの研究成果が公表された。
試験デザイン
対象
2025年に収集されたX(旧Twitter)の乳がん検診関連投稿(ノイズ除去後の計46,823件;日本語 30,027件、英語 16,796件)
解析方法
LLMを活用した感情極性スコアリング(否定語処理対応)、共起ネットワークトポロジー解析、レインクラウドプロット等の分布可視化分析を統合した自然言語処理(NLP)パイプラインを使用。
サブグループ解析として「受診前 vs 受診後」および「超音波(エコー)単独 vs マンモグラフィ併用」の解析を実施。
結果
日・英における受診のハードルの対比
英語圏(16,796件)においては、「費用」(1,239件, 7.4%)が最も多く、「痛み(Pain)」は5.0%(842件)であり、医療制度・経済的負担が主要な阻害要因であることが示唆された。また高濃度乳房(Dense breasts)に関する臨床的関心の高さも特徴的に観察された。
一方の日本語圏(30,027件)においては、「痛み(Pain)」「恐怖(Fear)」「予約(Appointment)」の3要素が緻密に絡み合う強固な共起ネットワークを形成しており、「痛み(Pain)」(5,788件, 19.3%)が圧倒的に多かった。
日本語コホートの受診前後の変化と検診手法による影響
受診前後の意識変化(時系列)を見ると、受診前では心理的予期不安(「恐怖」19.4%)とアクセス・手続き(「予約」40.9%)が中心であったのに対し、受診後では物理的不快感である「痛みの記憶(15.6%)」が多く、次回の受診回避(防衛的回避)につながる悪循環が示唆された。
マンモグラフィは、超音波単独と比較して感情スコアが有意に低く(P < 0.001)、痛みのない超音波(エコー)検査であっても、マンモグラフィと併用・同時実施されると「痛み」に関する記述が5.0%から18.2%へと急増し、マンモグラフィの痛み体験が検診全体のネガティブイメージを支配していることが示唆された。
結論
全体的な感情の平均スコアは同等であったものの、検診阻害要因の構造には根本的な二項対立が存在することが明らかになった。英語圏の言説は主に米国の医療制度・経済的負担(費用)を反映しているのに対し、日本においては受診前の予期不安から「痛み・恐怖・予約」の強固な連結へと遷移する感情の動きが特徴づけられた。
日本の乳がん検診受診率向上には、個人に合わせた痛みを軽減する圧迫プロトコルの導入や、マンモグラフィの物理的不快感が超音波等の併用検査全体のハードルとならないような臨床ワークフローの最適化が必要である。
参照元:
Social Media Discourse on Breast Cancer Screening Barriers in Japanese and English: Cross-Sectional Infodemiology Study(J Med Internet Res. 2026 doi: 10.2196/97772.)