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髄外性形質細胞腫(EMD)を有する再発・難治性多発性骨髄腫に対する新たな一手「テクベイリ・タービー併用療法」の有用性とは

[公開日] 2026.07.28[最終更新日] 2026.07.28

Johnson & Johnsonは7月7日、髄外性形質細胞腫(EMD)を有する再発または難治性の多発性骨髄腫に対する治療法として製造販売承認事項一部変更の承認を取得した、二重特異性抗体であるテクベイリ(一般名:テクリスタマブ(遺伝子組換え))とタービー(一般名:トアルクエタマブ(遺伝子組換え))の併用療法について記者説明会を開催した。同説明会では、日本赤十字社医療センター 骨髄腫アミロイドーシスセンター長の石田禎夫先生が登壇し、本併用療法の意義や承認の根拠となった臨床試験データについて解説を行った。 多発性骨髄腫は、白血球の一種であるB細胞から分化した形質細胞ががん化し、主に骨髄で増殖する血液がんであり、高齢者に多くみられる。現在は、初発時から複数の薬剤(プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗CD38抗体薬)を組み合わせた治療が行われ、治療薬が限られていた時代と比べて患者の予後は改善しているという。
石田禎夫先生
石田禎夫先生(提供写真)
しかし、これら主要な3クラスの薬剤すべてを使用した「トリプルクラス曝露」後に再発・難治となった患者の予後は極めて厳しく、これらの薬剤に抵抗性を示し使用できる治療選択肢が限られた場合(トリプルクラス耐性)の生存期間中央値は約1年とされている。近年、このような患者に対する新たな選択肢として、CAR-T細胞療法や二重特異性抗体などが登場している。二重特異性抗体は、腫瘍細胞と患者自身のT細胞(リンパ球)の両方に結合し、免疫細胞が腫瘍細胞を攻撃するよう促す薬である。 一方で、これらの治療をもってしてもコントロールが極めて困難なのが、腫瘍細胞が骨髄外の筋肉などの軟部組織や内臓に浸潤して腫瘤を形成する「髄外性形質細胞腫(EMD)」を有する例だという。石田先生によると、EMDの腫瘍細胞は悪性度の高い遺伝子異常(1q21増幅やTP53異常など)を持ち、治療標的となる蛋白の発現も低下している。さらに腫瘍局所は、攻撃を担う免疫細胞が極めて少なく免疫反応が起こりにくい環境(T細胞の疲弊やTregの増加など)にある。そのため、CAR-T細胞療法や単剤の二重特異性抗体による治療を行っても、無増悪生存期間(PFS)は数ヶ月にとどまるとの報告もあり、治療抵抗性が非常に高いという。 こうしたEMDを有する再発・難治性の多発性骨髄腫に対して、骨髄腫細胞などに特異的な抗原である「BCMA」を標的とする「テクベイリ(一般名:テクリスタマブ)」と、BCMAとは独立して骨髄腫細胞に発現する「GPRC5D」を標的とする「タービー(一般名:トアルクエタマブ)」という2つの異なる二重特異性抗体を併用した国際共同第2相試験「RedirecTT-1試験」の結果が報告された。 同試験において、トリプルクラス曝露でEMDを有する患者に対する併用療法の奏効率(ORR)は79%、完全奏功(CR)以上は53%という極めて高い効果が示された。巨大な腫瘤を認める患者や、治療が効きにくいとされる内臓に病変を持つ患者、過去にCAR-T細胞療法を受けた患者に対しても高い奏効が認められたという。 無増悪生存期間(PFS)の中央値は15.4ヶ月と、従来の治療(数ヶ月程度)を上回る良好な成績であった。石田先生が提示した実際の症例でも、腕や脚に生じた巨大な腫瘤が併用療法によって消失し、2年以上奏効を維持できていることが紹介された。 石田先生は、併用によって効果が期待できる理由について、「2つの標的を同時に狙うことで、標的蛋白の変異による治療からの逃避を起こしにくくできること、さらに腫瘍局所に一気に免疫細胞を誘導できることが関係しているのではないか」とそのメカニズムの仮説を解説した。 副作用については、免疫細胞を活性化させることによるサイトカイン放出症候群(CRS)や感染症、味覚障害、爪の変形などが認められたが、これらは単剤で使用した時の副作用プロファイルとほぼ同等であり、併用によって重篤な有害事象が増加することはなかったという。 石田先生は、「髄外性形質細胞腫(EMD)を有する再発・難治性多発性骨髄腫の患者さんにとっては最も効果が期待できるというデータが明確であり、比較的治療方針の判断がしやすいと考えています」と述べた。これまで治療が難しかった同疾患に対して、長期間の病勢コントロールをもたらす「新たな一手」として、本併用療法への期待が示された。 関連リンク: Johnson & Johnson プレスリリース
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