2026年7月3日、医学誌「JAMA Oncology」にて、日本国内外152施設が参加する研究プロジェクト「CIRCULATE-Japan」における前向き研究の大腸がん肝転移手術例によるサブ解析として、リキッドバイオプシーに基づく血中循環腫瘍DNA(ctDNA)と全生存期間の関連が報告された。
試験デザイン
対象
2020年5月から2024年7月の間にCIRCULATE-Japan GALAXY試験(大腸がんの術後におけるリキッドバイオプシーを使った再発モニタリング試験)に登録され、根治的切除が行われた大腸がん肝転移患者のうち、術後2〜10週時点でctDNAの測定結果が利用可能であった298例(手術先行コホート:191例、術前化学療法コホート:107例)。
評価項目
ctDNAの状態別の無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)
結果
298名の患者の患者背景は、年齢の中央値が67歳(33-85歳)、男性が192例(64.4%)であった。
今回は追跡期間中央値43.2ヵ月時点での結果が報告された。
手術先行コホート
術後2-10週の間にctDNA陽性であった症例において、術後化学療法なしの場合のDFSの中央値が2.3ヵ月に対して、術後化学療法ありの場合では13.9ヵ月、術後化学療法の実施によって再発リスクが低下する傾向が認められた(ハザード比:0.07、95%信頼区間:0.02-0.24、p<0.0001)。一方、術後2-10週の間にctDNA陰性であった129例では、術後化学療法なしの場合、48ヵ月時点でのDFS率が55.0%に対して、術後化学療法ありの場合では72.4%と、統計学的な有意差は認めなかった(ハザード比:0.69、95%信頼区間:0.32-1.50、p=0.36)。
またOSについても、術後ctDNA陽性症例において、術後化学療法なしの場合では48ヵ月時点でのOS率が32.9%に対して、術後化学療法ありの場合では65.3%であり、術後化学療法を受けた患者でOSの改善傾向が認められた(ハザード比:0.27、95%信頼区間:0.08-0.88、p=0.03)。一方、術後ctDNA陰性症例において、術後化学療法なしの場合の48ヵ月時点でのOS率は90.3%であったのに対し、術後化学療法ありの場合では93.2%、いずれも予後良好であることが示唆された(ハザード比:0.54、95%信頼区間:0.10-2.88、p=0.47)。
術前化学療法コホート
術後2–10週の間にctDNA陽性であった症例では、術後化学療法なしの場合のDFSの中央値は2.9ヵ月に対して、術後化学療法ありの場合では6.8ヵ月と改善傾向を示したが、統計学的な有意差は認めなかった(ハザード比:0.69、95%信頼区間:0.32–1.49、p=0.35)。
OSについても、術後化学療法なしの場合の48ヵ月時点でのOS率は55.1%に対して、術後化学療法ありの場合では46.2%、OS改善効果は認められなかった(ハザード比:0.81、95%信頼区間:0.27–2.41、p=0.70)。
一方、術後2–10週の間にctDNA陰性であった症例では、術後化学療法なしの場合のDFS中央値は14.0ヵ月に対して、術後化学療法ありの場合では20.3ヵ月であったが、統計的な有意差は認められなかった(ハザード比:0.63、95%信頼区間:0.29–1.37、p=0.24)。
OSについても、術後化学療法なしの48ヵ月OS率は91.1%に対して、術後化学療法ありでは95.2%といずれも予後良好であり、統計学的な有意差は認められなかった(ハザード比:0.73、95%信頼区間:0.07–8.20、p=0.80)。
結論
今回の解析により、大腸がん肝転移の根治切除後におけるctDNAを用いた分子的残存病変(MRD)評価は、術後化学療法による効果が期待できる患者群を識別できることが示された。
この結果を実臨床における治療方針の決定に役立てるためには、今後ランダム化比較試験等による検証を行うことが重要である。
参照元:
Circulating Tumor DNA Status and Adjuvant Chemotherapy in Resected Colorectal Liver Metastases(JAMA Oncol 2026. doi: 10.1001/jamaoncol.2026.2191.)