国立がん研究センターは6月3日、がん対策研究所を中心とした研究班が「科学的根拠に基づくがん予防法5+1」を改訂し、内容をより分かりやすくまとめた新冊子を公開したことを発表。同日にはメディア向け説明会を開催した。
今回の改訂では、飲酒の推奨事項が従来の「節酒」から「ひかえる」へと変更されたほか、男性のBMI推奨上限が27から25へ引き下げられ、男女ともに推奨範囲が「BMI21〜25」に統一された。
日本人のための「がん予防法5+1」とは
これまで、国際的ながんリスク評価は主に欧米のデータに基づくものが多く、体格や食文化が異なる日本人にそのまま当てはまるかどうかが課題であった。そこで研究班では、国内の疫学研究のデータを統合・解析し、日本人向けのがんリスク評価を行ってきた。
その中で特に確実性が高く、実践しやすい予防策として掲げられているのが「科学的根拠に基づくがん予防法5+1」である。具体的には、「たばこ」「お酒」「食生活」「身体活動」「体重」の5つの生活習慣と、「感染」への対策を指す。
変更点1:お酒は「ひかえる」が推奨に
今回の改訂で注目されるポイントのひとつが、飲酒に関する推奨事項の変更である。従来は「飲酒はほどほどに(節酒する)」とされていたが、今回は「飲酒をひかえる」に変更された。この背景には、最新の研究結果がある。アルコールは肝がんや大腸がん、食道がんなどのリスクを上げることが分かっていたが、胃がんや乳がん(閉経前)など飲酒量が増えるほど段階的にリスクが上昇するがんがあることも明らかになったのである。
予防研究部 予防評価研究室長の和田恵子氏は、メディア向け説明会で「がん予防に関しては、安全といえる飲酒量は設定できないと判断し、お酒を飲まないことが最適であると考えた」と解説した。しかし、これは「一滴も飲んではいけない」と厳しく制限して、追い詰めるためのものではないという。和田氏は「お酒には社会的な付き合いなどの文脈もあるため、その必要性を否定するものではない。全てを完璧にやらなければならないわけではなく、リスクを減らすために、自分にできることを見つけて実践していくというスタンスが大切である」と呼びかけた。
和田恵子氏(提供写真)変更点2:BMIの基準が男女ともに「21~25」へ
もうひとつの重要な変更点は、適正体重を示すBMIの推奨範囲である。これまで、男性は「21~27」、女性は「21~25」とされていた。過去の推奨において男性の上限が27とされていたのは、がんによる死亡のリスクを見た際、BMI25〜27の範囲でリスクが低かったというデータがあったためである。
しかし、がん予防の本来の目的は「がんに罹らないこと(罹患予防)」である。がんの罹患データが蓄積された結果、BMIが高くなるほど罹患リスクが上昇するがんがあることが明確になった。そのため、「BMI25~27の範囲が(罹患において)リスクが低いとは言い難い」と判断され、今回、男性の推奨上限が27から25へと変更され、男女ともにBMI21~25が推奨範囲となった。
「自分を責めない」表現へ。日常生活を見直すきっかけに
今回の新冊子は、「研究班」と「がん情報サービス」が全面的に連携して制作された。その編集過程では、がん経験者やその家族からなる「患者・市民パネル」に原稿を読んでもらい、一般市民の視点からの意見を取り入れている。
がん情報提供部 がん情報企画室長の堀拔文香氏によれば、「がんは自己責任であると捉えられないよう、読んだ人が自分を責めない表現に」配慮したという。例えば、「どれだけのがんを減らすことが可能か」といった表現は、自分ごととして客観的に受け取れるよう「どんなことががんの要因になるか」へと変更された。さらに、専門用語の平易な言い換えなど「伝わりやすさ」を徹底したという。
堀拔文香氏(提供写真)
新しい「科学的根拠に基づくがん予防法5+1」の冊子は、がん情報サービスのウェブサイトで公開されている。がんに関係する生活習慣について知り、必要に応じて見直すことが推奨される。
関連リンク:
がん情報サービス 「科学的根拠に基づくがん予防法5+1」
国立がん研究センター
プレスリリース