国立がん研究センター中央病院は3月23日、小児・AYA世代のがん患者を対象とした医師主導臨床研究「PARTNER試験(NCCH2220)」において、日本では未承認の医薬品である「エフロルニチン塩酸塩(以下、エフロルニチン)」を用いた新たなコホートを追加したと発表した。
小児がんは、成人のがんに比べて患者数が圧倒的に少なく、薬剤開発における採算性の問題などから、海外で承認された薬の日本国内での開発が遅れる「ドラッグラグ」や開発がなされない「ドラッグロス」が課題となっている。
神経芽腫は乳幼児期に多く見られる小児がんのひとつであり、特に再発しやすい性質を持つ「高リスク神経芽腫」においては、これまでがんの再発を防ぐ有効な治療法が限られていた。
エフロルニチンは、がん細胞の増殖に関わる「ポリアミン」の産生に必要な「オルニチン脱炭酸酵素(ODC)」の働きを阻害する経口薬。ポリアミンの量を減らすことでがん細胞の増殖を制御し、アポトーシス(細胞死)へと導くことで、治療後の再発リスクを低減する効果が期待されている。
米国では2023年12月に、初発の高リスク神経芽腫に対する維持療法薬として米国食品医薬品局(FDA)の承認(米国商品名:IWILFIN)を受けているが、日本国内では未承認であり、治験も実施されていない状況だった。そのため、高リスク神経芽腫の患者やその家族から「日本でも維持療法としてエフロルニチンによる治療を行いたい」という要望が数多く寄せられていたという。
こうした状況を受け、患者の申出を起点として身近な医療機関で迅速に未承認薬等を使用できるようにする「患者申出療養制度」の枠組みを活用し、PARTNER試験にエフロルニチンのコホートが追加された。使用される薬剤は、米国の製造販売業者であるUS WorldMeds(USWM)社から無償で提供される。同試験にかかる費用は日本医療研究開発機構(AMED)の研究費で賄われるため、薬剤費の自己負担はないが、検査や入院等の費用については通常の保険診療と同等の自己負担が生じる。
荒川歩先生(提供写真)
同日、開催された記者会見に登壇した、PARTNER試験の研究代表医師である荒川歩先生(国立がん研究センター中央病院小児腫瘍科長)は、「短期的には、この試験で(エフロルニチンを)使えるようにしつつ、得られたデータを将来の医療提供の改善や薬事承認・保険適用の検討に活用することに期待しています」と、今後の展望を述べた。
参照元:
国立がん研究センター 研究トピックス