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非小細胞肺がんにおける希少ドライバーNRG1:日本における治療の実態 -第66回日本肺癌学会学術集会-
[公開日] 2025.11.20[最終更新日] 2025.11.18
11月6~8日に東京国際フォーラムにて、第66回日本肺癌学会学術集会が開催された。「ワークショップ8:EGFR以外のドライバー遺伝子変異陽性NSCLCにおける治療開発」のセッションにて、「NRG1融合遺伝子陽性非小細胞肺癌の臨床病理学的特徴と治療成績」と題して、伊東謙先生(国立がん研究センター東病院)が講演した。
NRG1(ニューレグリン1)融合遺伝子は、特に細胞外のEGF様ドメインを介して細胞膜上のHER3/4タンパクに結合し、HER2とHER3/4の二量体形成を誘発することで、細胞増殖に関わるシグナルを活性化する。
様々な固形がんに発現が認められるドライバー遺伝子であるが、非小細胞肺がん(NSCLC)においては0.1%と非常に稀である。病理学的特徴としては、大部分が腺がんであり、そのうち約6割が浸潤性粘液性腺がん(Invasive Mucinous Adenocarcinoma:IMA)である。IMAは現時点で有効な薬剤に乏しいため、このIMAを多く含むNRG1融合遺伝子陽性肺がんに関しても予後不良であることが特徴である。
治療薬の開発としては、NRG1融合遺伝子陽性固形がんを対象として、HER2とHER3に対する二重特異性抗体ゼノクツズマブの有効性が検討されている。NSCLCにおいては、全奏効率(ORR)29%(95%信頼区間:20-39)、無増悪生存期間(PFS)の中央値6.8ヶ月(95%信頼区間:5.3-7.5)であり、従来の治療法と比較して良好な成績であったことから、既にFDA(米国食品医薬品局)では迅速承認されている。しかしながら、日本においてはゼノクツズマブの承認目途が立っておらず、有効な治療法が確立されていない。
このような背景の中、NRG1融合遺伝子陽性NSCLCの臨床病理学的特徴と治療成績の実態についての調査結果が報告された。
対象は、LC-SCRUM-Asiaのデータベースに登録されたNRG1融合遺伝子陽性NSCLC患者であり、NRG1融合遺伝子の検出にはOCA(OCA: Oncomine Comprehensive Assay)v3またはOPA(Oncomine Precision Assay)が使われた。
2017年5月から2025年3月までに登録された14,280症例のうち、NRG1融合遺伝子陽性は61例(0.4%)であった。患者背景は、年齢中央値が69歳、女性が66%、非喫煙者が61%、腺がんが98%であり、そのうち28%がIMAであった。PD-L1発現率は、TPS(Tumor Proportion Score)1-49%の症例が12%、残りの88%の症例はTPS 0%であった。
49例が有効性解析の対象であり、初回治療の種類は、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)+プラチナ系抗がん剤併用療法が21例、プラチナ系抗がん剤単剤が13例、ICI単剤が3例、ゼノクツズマブが10例、その他が2例であった。
治療成績は、初回のプラチナ系抗がん剤+ICIでは、ORRが24%、PFSの中央値が3.6ヶ月、全生存期間(OS)の中央値が8.2ヶ月、プラチナ系抗がん剤単剤ではORRが38%、PFSの中央値が5.5ヶ月、OSの中央値が28.6ヶ月であった。
ICI単剤の効果について、初回治療および2次治療以降の効果が解析されたが、ORRは0%であった。また、2次治療以降のドセタキセル±サイラムザ(一般名:ラムシルマブ)の効果は、ORRが17%であった。
NRG1融合遺伝子陽性NSCLCでは、プラチナ系抗がん剤との併用および単剤のいずれにおいてもICIの効果が乏しいことが示された。希少かつ予後不良であることから、実臨床においても積極的に次世代シーケンサー等でNRG1融合遺伝子を検出し、今後の有効な治療法開発につなげていくことが望まれる。
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