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新たな治療標的として期待されるMTAP欠損がん:臨床病理学的特徴と現在の治療成績は? -第66回日本肺癌学会学術集会-

[公開日] 2025.11.17[最終更新日] 2025.11.14

11月6~8日に東京国際フォーラムにて、第66回日本肺癌学会学術集会が開催された。「ワークショップ8:EGFR以外のドライバー遺伝子変異陽性NSCLCにおける治療開発」のセッションにて、「MTAP欠損非小細胞肺癌の臨床病理学的特徴と治療成績」と題して、宇田川響先生(国立がん研究センター東病院)が講演した。 MTAP(メチルチオアデノシンホスホリラーゼ)は、メチルチオアデノシン(MTA)のリン酸化を触媒する酵素である。MTAP遺伝子の欠損により細胞内にMTAが蓄積すると、PRMT5(Protein arginine methyltransferase 5)に結合することによってPRMT5の活性化が部分的に阻害される。ここに、PRMT5とMTAの複合体に作用する分子としてのPRMT5阻害剤 を使うと、PRMT5の機能が強く阻害され、PRMT5依存的な細胞増殖が抑制される。つまり、PRMT5阻害剤によって、MTAPが欠損したがん細胞の増殖を選択的に阻害することができる。 既にふたつの薬剤(MRTX1719、AMG193)に関しては、前臨床および臨床試験において、非小細胞肺がん(NSCLC)を含む複数のMTAP欠損固形がんでの活性が認められており、MTAP欠損がんは、有望な治療標的として薬剤開発が進むことが期待されている。 このような背景の中、今回はMTAP欠損NSCLCの臨床病理学的特徴や治療成績についての解析結果が報告された。 LC-SCRUM-IBIS(LC-SCRUM-Japanの組織基盤を活用した免疫療法のバイオマーカー探索研究)のデータベースに登録された症例のうち、2017年2月から2018年5月にFoundationOne CDxによる遺伝子解析が実施されたNSCLC患者253例が解析対象となった。 253例全体において、MTAP欠損は54例(21%)に認められ、組織型別では腺がん(170例)で19%、扁平上皮がん(60例)で25%であった。MTAP欠損例は、年齢中央値が68歳、男性が63%、喫煙者が78%、ドライバー遺伝子異常陽性症例が44%であり、MTAP非欠損例と比較して有意な違いは認めなかった。 また、MTAP遺伝子の近傍に位置するCDKN2A遺伝子の欠損の頻度は、MTAP欠損症例においては100%で(n=54/54)ある一方で、MTAP非欠損症例においても12%(n=23/199)に認められた。この結果を受けて宇田川先生は、「現在の遺伝子検査でよく使われているオンコマイン等では、CDKN2Aしか見ることができませんが、CDKN2A欠損がある症例の中にはMTAP非欠損症例も一部存在することから、MTAP遺伝子を直接調べることが理想です」とコメントした。 ドライバー遺伝子異常は、MTAP欠損症例においても44%に認められたため、宇田川先生は、MTAP欠損とドライバー遺伝子異常に相互排他性はないとしたうえで、ドライバー遺伝子異常陽性症例においてもMTAP欠損を調べる意義を強調した。 またMTAP欠損症例では、MTAP非欠損例と比較して腫瘍遺伝子変異量(TMB)が有意に低く(中央値:6.3 vs 7.6 Mut/Mb、P=0.04)、またPD-L1発現率も低い傾向を示した(PD-L1≧1%の割合:50% vs 63%、P=0.08)。 治療成績に関しては、MTAP欠損はプラチナ系抗がん剤の効果に影響を認めなかった一方で、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)については、MTAP欠損症例で無増悪生存期間(PFS)が有意に短かった(中央値:1.9 vs 6.2か月、ハザード比:3.62、95%信頼区間:1.05-12.5、p=0.04)。なお、ICI+化学療法の併用療法の効果については、解析時期が薬剤承認前であったことから、今回の解析には含まれていなかった。 MTAP欠損は、頻度の高さからも実臨床において重要な遺伝子異常であることから、免疫組織化学染色(IHC)の利用も含め、検査方法が今後の検討課題となりそうだ。また、現時点で日本において承認されているMTAP欠損に対する薬剤はないものの、宇田川先生によると、既に日本でも臨床試験が始まっているとのこと。実臨床においてCGP検査等でMTAP欠損が見つかった症例は、臨床試験への参加が検討可能である。 関連リンク: 第66回日本肺癌学会学術集会
ニュース 肺がん MTAP欠損非小細胞肺がん

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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