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“持続可能”な医療体制にするには?:日本における医療経済の現状と課題 -第63回日本癌治療学会学術集会-

[公開日] 2025.10.29[最終更新日] 2025.11.18

10月16~18日にパシフィコ横浜にて、第63回癌治療学会学術集会が開催された。「会長企画 パネルディスカッション2:癌治療継続における課題~医療経済の視点から~」のセッションにて、「持続不可能」と題して國頭英夫先生(日本赤十字社医療センター)が講演した。 國頭先生は冒頭に、医療費の高騰の背景として、医療の高度化と人口の高齢化の二つの要因を挙げ、「これは誰も悪くないが誰にも止めることができない」としつつ、二宮尊徳の言葉「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」を引用しながら、医療経済の議論の重要性を強調した。 現在の医療システムの問題として、まずは作用機序も効果も副作用も同等の薬剤が複数承認され、それぞれ薬価が異なっている点を指摘。この同種同効薬が、現在の診療ガイドラインに載っているだけでも15がん種、55適応に上ることを示した。 またもう一つの問題として、日本のコストが薬剤の「使用量」に依存していることを指摘。日本では、薬剤を過剰投与している可能性があること、またこの過剰投与の是正により副作用の軽減にもつながる可能性に言及した。 例えば、キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)(2023年の日本の売上額は1650億円、日本の薬剤の売り上げ第一位)については、早期の臨床試験では至適用量が体重依存的に設定されていたのに対し、現在は世界的な“標準”体重に基づいて一律に設定されていることから、日本人には過剰投与であることが考えられる。 また、タグリッソ(一般名:オシメルチニブ)については、実臨床において多くの日本人患者が有害事象を理由に減量しているにも関わらず、薬効に負の影響はない、ということが最近報告された(Awano et al. JJCO 2025)。特に2022年に術後療法としてのタグリッソの3年間投与が承認されたことから、今後ますますタグリッソの使用量の増加が見込まれ、医療費への影響は無視できない状況だ。 以上のことから、同種同効薬の承認・薬価の見直しおよび至適用量を検討する臨床試験の実施を行った上で、ガイドラインに反映させることで、最適な治療が実現すると、国頭先生はコメントした。 更に、医療費に影響するその他の問題点として、特に飲み薬に関しては服薬アドヒアランスが悪いことを指摘。日本の単施設において、9ヶ月270人を対象に調査を実施した結果、58人(21.5%)が残薬調整の対象となり、合計で504万5600円の薬剤費削減に繋がったことを示す過去のデータが紹介された。 最後に國頭先生は、医療費が無制限に保険と公費で負担され、治療介入により延命だけは可能な時代となった現在の日本の状況について、疑問を投げかけて講演を締めた。 ディスカッションの中では、日本においては医者がお金の話をすることがタブーとされてきた現状が指摘された。また、「減量により副作用が低く抑えられる」というデータよりも、「効果の高い新薬が登場した」というデータばかりに注目が集まることも、医療費問題の解決を遅らせている可能性がある。 しかし、これまで医療者も患者も直視してこなかった医療費の問題を考えるべき時代が来ており、費用対効果やコストについて、教育やガイドラインに組み込んでいくことの重要性が議論された。 関連リンク: 第63回癌治療学会学術集会
ニュース JSCO

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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