公益財団法人がん研究会有明病院は10月20日に同施設の病院機能・フロア見直しプロジェクトと、その第一弾としての外来治療センターのリニューアルオープンについて、報道関係者向けの説明会を実施した。
全国的に厳しい病院経営の現状
同院副院長の渡邊雅之氏は、コロナ禍での補助金終了などもあり、2023年度には全国の半数以上の病院が経常利益で赤字になっている現状を紹介。そのうえで、同院の経営状況についても2023年度からは支出の増加が収入を上回り、特に薬品材料費と人件費の増大が経営を圧迫していると説明した。医師やその他の医療職の人員が増加している背景には、新しい診療科の開設や働き方改革の影響があるとのことであった。
一方、平均入院日数の短縮を主な原因として、病床稼働率は2018年以降低下傾向となっており、週末の稼働率が特に低下している現状があるという。
フロア見直しプロジェクトと外来化学療法の拡充
このような病院経営の厳しい状況に対応するため、同院ではフロア見直しプロジェクトを開始。その第一弾として、稼働率の低い病床42床を閉鎖し、外来化学療法センターを拡充する方針が決定された。患者アンケートの結果、外来での化学療法を希望する患者が多いことも、この決定を後押しした要因の一つであるという。
なお、外来治療センターの移転により空いたスペースには、トータルケアセンターが整備される予定である。トータルケアセンターは、医療連携部と患者家族支援部で構成され、患者の治療プロセス全体を支援し、様々な困り事に対応することを目指す。2026年春の開設に向けて工事が進められており、これにより患者へのトータルなサポート体制が強化されることが期待されている。
外来治療センターの課題と改善策
外来化学療法部部長の陳勁松氏は、外来治療センターの移転について、統合による効率化や患者環境の改善といったメリットがある一方で、薬剤搬送やエレベーターの移動といった課題も指摘した。また、外来治療は患者にとって大きな負担となる場合があるため、待ち時間の短縮や多職種連携によるサポート体制の強化が重要であることを今後の課題とした。
なお、リニューアル後の外来治療センターでは、薬剤の準備を行うミキシングルームが同フロアに設けられ、患者さんの待ち時間短縮やコストの低減につながっているという。また、設備面では中央配管による酸素の供給が全ベッドで可能となり、救急時の迅速な対応につながるとしている。
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