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HER2低発現の転移性乳がんに対するエンハーツ、長期追跡後も生存期間を延長 Nature Medicineより

[公開日] 2025.10.14[最終更新日] 2025.10.10

2025年10月8日、医学誌『Nature Medicine』にて、HER2低発現の転移性乳がんを対象に、エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン;T-DXd)と化学療法(TPC)を比較した国際共同第3相DESTINY-Breast04試験の長期追跡解析結果が報告された。

試験デザイン

対象

HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH陰性)の転移性乳がん患者

治療法(レジメン)

試験群:エンハーツ 対照群:医師の選択による化学療法(カペシタビン、ハラヴェン、ゲムシタビン、パクリタキセル、アブラキサン)

評価項目

主要評価項目:ホルモン受容体(HR)陽性コホートにおける盲検独立中央判定(BICR)に基づく無増悪生存期間(PFS) 副次評価項目:HRの状態に関係なく、全患者を対象としたBICRに基づくPFS、HR陽性コホートにおける全生存期間(OS)、など

結果

同試験においては、既にエンハーツがPFSおよびOSを改善することが示されており、今回は長期追跡(追跡期間中央値32.0ヶ月)後の最終解析の結果が報告された。

有効性

全集団におけるOSの中央値は、試験群で22.9ヶ月、対照群で16.8ヶ月であり、エンハーツによる有意な改善が認められた(ハザード比:0.69、95%信頼区間:0.55–0.86)。 HR陽性コホートにおけるOSの中央値は、試験群で23.9ヶ月、対照群で17.6ヶ月であり、エンハーツによる有意な改善が認められた(ハザード比:0.69、95%信頼区間:0.55–0.87)。 探索的解析としてのHR陰性コホートなどにおいても、OSの中央値は試験群で良好な結果を示した。

安全性

エンハーツの安全性プロファイルは、主要解析の結果と一致していた。 グレードを問わない治療関連有害事象(TEAE)の発生率は両群で同様であり、試験群で99.5%に対して対照群で98.3%、グレード3以上のTEAEは、試験群で54.4%に対して対照群で67.4%に発生した。 TEAEにより治療中止に至った割合は、試験群で16.7%に対して対照群で8.1%であった。

結論

今回の長期追跡結果は、エンハーツがHER2低発現転移性乳がんに対し、TPCと比較してOSを有意に延長するというこれまでの結果を裏付けた。これは、HER2低発現転移性乳がんの前治療後の標準治療としてのエンハーツの妥当性を支持する結果である。 参照元: Trastuzumab deruxtecan in HER2-low metastatic breast cancer: long-term survival analysis of the randomized, phase 3 DESTINY-Breast04 trial(Nature Medicine 2025 DOI: 10.1038/s41591-025-03981-4.)
ニュース 乳がん HER2エンハーツトラスツズマブ デルクステカン低発現

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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