2025年8月23日、医学誌『Annals of Surgical Oncology』にて、切除可能膵がんを対象に、術前化学放射線療法（NACRT）と術前化学療法（NAC）の治療効果を比較した後ろ向き研究結果が日本から報告された。

試験デザイン

対象

2011年12月から2017年3月までに、NACRTまたはNAC後に外科的切除を受けた切除可能膵がん患者

治療法（レジメン）

NACRT群：術前化学放射線療法後に手術を受けた症例（n=170） NAC群：術前化学療法後に手術を受けた症例（n=177）

評価項目

全生存期間（OS）、無病生存期間（DFS）、局所再発（LRR）および病理学的奏効など

結果

傾向スコアマッチングによる解析の結果が報告された。

有効性

病理学的奏効は、NACRT群では、治療後のCA19-9（腫瘍マーカー）レベルが低く、病理学的リンパ節転移が有意に少なかった。 LRRはNACRT群で有意に少なかったが、DFSに有意差は認められなかった。 またOSの中央値は、NACRT群で56.3ヶ月に対してNAC群で50.5ヶ月であり、両群間に有意差は認められなかった。 全コホートの多変量解析では、門脈切除、輸血、腫瘍の残存、術後補助化学療法の不使用が、OS不良の独立因子として関連していた。また、NAC、門脈合併切除、および断端陽性切除は、局所再発のリスク因子として同定された。

安全性

―

結論

今回の結果から、切除可能膵がんに対する術前化学放射線療法は、術前化学療法と比較してより強力な局所制御効果を示すことが明らかになった。 一方で、OSおよびDFSには有意な差が認められなかったことから、局所制御だけでなく、より効果的な全身治療が重要であることを示唆している。 参照元： Comparison between Neoadjuvant Chemoradiotherapy and Chemotherapy for Patients with Resectable Pancreatic Cancer（Ann Surg Oncol. 2025 DOI: 10.1245/s10434-025-17988-1）