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日本人大腸がんの5割に特徴的な腸内細菌を発見:発がん要因の解明および予防・治療策につながるか 国立がん研究センターら
[公開日] 2025.05.21[最終更新日] 2025.05.22
国立がん研究センター研究所は5月21日、「日本人大腸がん患者さんの5割に特徴的な腸内細菌による発がん要因を発見」と題した会見を実施した。研究成果は、英国専門誌「Nature」に2025年4月23日付で発表されている。
日本における大腸がんの罹患者数は、世界の中でもトップクラス(50歳未満で世界5位、50歳以上で世界3位)であり、若年者症例も増加傾向にあることから、その原因解明および大腸がんの予防に向けた研究が望まれてきた。
今回、国立がん研究センター研究所は、世界11カ国の大腸がん981症例(日本人28症例)の全ゲノム解析から発がん要因を解析。その結果、①日本人大腸がん症例には、腸内細菌由来のコリバクチン毒素*による変異パターンが他の地域と比較してより多く(全体の約50%)存在すること、➁この変異パターンは、高齢者症例(70歳以上)と比較して特に若年者(50歳未満)に3.3倍多く見られ、若年者大腸がんの発症に強く関連している可能性があること、➂大腸がんにおいて最も早期に起こるドライバー異常であるAPC変異の15%が、コリバクチン毒素による変異で誘発されている可能性を明らかにした。
*コリバクチン毒素:大腸菌やその他の腸内細菌によって生産・分泌される二次性代謝産物であり、DNAに傷(二重鎖切断)を起こすことが知られている。
また、大腸がんにおけるコリバクチン毒素による変異パターンは、解析時に存在しているコリバクチン毒素産生菌の量とは関連しないことから、会見に登壇した柴田龍弘先生(国立がん研究センター研究所 がんゲノミクス研究分野 分野長)は、「毒素があることですぐにがん化するわけではなく、経時的な変化ががん化に寄与していることが予想される」と言及した。
以上の傾向から、早期からコリバクチン毒素に持続的に暴露していることが大腸がん発症に寄与するのではないかと推定された。
今後の方向性として、コリバクチン毒素による変異の影響による国内の患者増加の背景を解析していく一方で、コリバクチン以外の発がん要因についても引き続き同定していきたい、と柴田先生は将来展望を語った。また、予防的な介入として、コリバクチン毒素に対する阻害剤等の開発の可能性にも言及し、発表を締めくくった。
参照元:
国立がん研究センター プレスリリース
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