国立がん研究センターは5月12日、信州大学および京都府立医科大学が開発したEPHB4抗原発現悪性固形がんに対する遺伝子改変T細胞療法（CAR-T細胞療法）について、国立がん研究センター東病院にて安全性、有効性を評価する第1相医師主導治験を開始したと発表した。 CAR-T細胞療法は、一部の血液腫瘍に対して治療効果が示され、国内でも承認され保険診療で用いられている。一方で、固形がんに対するCAR-T細胞療法の治療効果は乏しく、全世界で固形腫瘍に対するCAR-T細胞療法の治療開発が進められている。 EPHB4抗原発現悪性固形がんに対するCAR-T細胞療法（開発名：AP8901）は、信州大学学術研究・産学官連携推進機構遺伝子細胞治療開発センター、京都府立医科大学大学院医学研究科小児科学の柳生茂希らの研究グループが共同で開発した治療法。多くの固形腫瘍に発現しているEPHB4受容体を標的に作成されたCAR-T細胞であり、ウイルスを使わない遺伝子改変技術である「ピギーバックトランスポゾン法*」を使うことで、固形がんに対する非臨床研究において有意に持続的で、高い抗腫瘍効果を示すことが明らかとなっている。 今回開始されたのは、転移・再発に対して標準治療がない、または不応、もしくは不耐のEPHB4受容体発現のユーイング肉腫または固形がんを対象とした非ウイルス遺伝子改変CAR-T細胞療法の第1相臨床試験（CARTiEr試験）で、最初の患者さんへの投与が終了したという。 *ピギーバック転移酵素というたんぱくを用いた遺伝子改変法。ピギーバック転移酵素は、目的の遺伝子をヒトゲノムにランダムに組み込むことが可能であり、この方法を応用して、CAR遺伝子をT細胞ゲノムに組み込むことで、CAR-T細胞が作製される。 参照元： 国立がん研究センター プレスリリース