国立がん研究センターは2月12日、BRAF融合遺伝子陽性の膵がんまたは低悪性度神経膠腫を対象としたオンライン医師主導治験(Perfume試験:NCCH2101/MK011)を開始したことを発表した。同試験では、参加を希望する患者さんの自宅近くの医療機関と国立がん研究センター中央病院がパートナー契約を締結し、その医療機関(パートナー施設)で治験に必要な検査や中央病院とのオンライン診療を行う。
希少がんの新規治療開発は、患者さんの数が極めて少ないことや、対象となる患者さんの情報を集約する仕組みが十分に構築されていないことから、患者登録に時間がかかり、ランダム化比較試験を実施することが困難であるという課題がある。そこで中央病院では、希少がんでの治療開発を推進するため、2014年に「希少がんセンター」を開設し、2017年からは企業とも共同で希少がんの研究開発・ゲノム医療を推進する「MASTER KEYプロジェクト」を立ち上げ、2024年10月時点で31の医師主導治験・企業治験を実施している。
しかしながら、希少がんの治験は都市部に偏在しており、移動のための時間的・経済的負担によって、遠隔地からの参加を断念するケースも多く、治験アクセスの地域間格差は、地方在住の患者さんにとって大きな課題となっている。こうした背景をもとに、中央病院ではMASTER KEYプロジェクトで実施されている2つの医師主導治験(TAZETTA試験*、Perfume試験)でオンライン治験を開始し。中央病院への通院が困難な地域からの希少がん患者さんの参加も可能となったという。
*TAZETTA試験:局所進行・再発類上皮肉腫を対象に、経口EZH2阻害剤タズベリク(一般名:タゼメトスタット)の有効性・安全性を検討する第2相医師主導治験。既に募集は終了しており、現在進行中である。
Perfume試験における治験薬(MEK阻害剤メクトビ、一般名:ビニメチニブ)は経口薬であり、中央病院から患者さんの自宅へ直接配送し、中央病院の医師の指示のもとで内服を行う。治験期間中の検査については、決められたスケジュールでパートナー施設で受け、検査結果はパートナー施設から国立がん研究センター中央病院に共有される。

(画像はリリースより)
今回のパートナー施設は、がんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院のいずれかであるなどの条件があり、現時点では四国がんセンター、島根大学医学部附属病院、鹿児島大学病院、熊本大学病院、高知大学病院の5施設であるが、今後パートナー施設を全国に拡大し、希少がんオンライン治験ネットワークを整備していく予定だ。
オンライン治験の導入により、地方在住の患者さんの治験参加における負担が軽減し、治験へのアクセスが劇的に改善するのみならず、参加を希望する患者さんの早期登録と速やかな臨床開発につなげることが期待される。
また今後、希少がんや希少な遺伝子異常を持つがんに対する医師主導治験や企業治験、および小児や希少がん以外を対象とする試験への拡大も視野にいれており、来院とオンライン診療を組み合わせたハイブリッド型治験の実施など、患者さんのニーズや研究の特徴にあわせ、治験アクセスを改善に取り組むとしている。
参照元:
国立がん研究センター プレスリリース