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この記事の3つのポイント
・術前療法後に浸潤性残存病変を有するHER2陽性早期乳がんを対象とした第3相のKATHERINE試験
・術後療法としての抗体薬物複合体カドサイラの有効性・安全性を検討
・長期追跡後もカドサイラによる生存率の改善が維持
2025年1月15日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて術前療法後に浸潤性残存病変を有するHER2陽性早期乳がんに対する術後療法としての抗HER2抗体とチューブリン重合阻害薬をが結合した抗体薬物複合体カドサイラ(一般名:トラスツズマブ エムタンシン)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のKATHERINE試験(NCT01772472)の最終解析の結果がCharles E Geyer Jr氏らにより公表された。
KATHERINE試験は、術前化学療法として抗HER2抗体薬であるハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)とタキサン系抗がん剤による療法を受け、術後に乳房または腋窩に残存する浸潤性病変が確認されたHER2陽性早期乳がん患者(N=1486人)に対して、術後療法としてカドサイラ単剤を投与する群(N=743人)、またはハーセプチン単剤を投与する群(N=743人)に無作為に振り分けた。既に主要解析の結果から、カドサイラにおける浸潤性乳がんの再発または死亡のリスクの有意な改善が認められていた。
今回は、同試験における長期追跡後の解析が発表された。
追跡期間中央値8.4年時点において、浸潤性病変のない生存率(DFS)は、ハーセプチン単剤群に比べてカドサイラ単剤群で有意な改善が維持されていた(HR:0.54,95%信頼区間:0.44-0.66)。また7年間浸潤性病変のない生存率(DFS)はカドサイラ単剤群の80.8%に対してハーセプチン単剤群で67.1%を示した。
副次評価項目である7年全生存率は、カドサイラ単剤群の89.1%に対してハーセプチン単剤群で84.4%を示し、カドサイラの方が死亡リスクが有意に低かった(HR:0.66,95%信頼区間:0.51-0.87,P=0.003)。
一方の安全性として、グレード3以上の有害事象(AE)発症率は、カドサイラ単剤群の26.1%に対してハーセプチン単剤群で15.7%を示した。
以上のKATHERINE試験の最終解析の結果よりCharles E Geyer Jr氏らは、「術前療法後に浸潤性残存病変を有するHER2陽性早期乳がんに対する術後療法としてのカドサイラ単剤療法は、ハーセプチンと比較して全生存率を改善し、浸潤性疾患のない生存率を持続的に改善しました」と結論付けた。
参照元:
Survival with Trastuzumab Emtansine in Residual HER2-Positive Breast Cancer(N Engl J Med 2025 DOI:10.1056/NEJMoa2406070)