この記事の3つのポイント
・HER2陽性進行・再発乳がんを対象とした第3相EMERALD試験
・ハーセプチン+パージェタ+ハラヴェンの有効性・安全性を検討
・ハーセプチン+パージェタ+タキサン系製剤と同等の効果を示す
2025年1月9日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてHER2陽性進行・再発乳がんに対するハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)+パージェタ(一般名:ペルツズマブ)+タキサン系抗がん剤併用療法、ハーセプチン+パージェタ+ハラヴェン(一般名:エリブリン)併用療法を比較検証する第3相のEMERALD試験(NCT03264547)の結果がKanagawa Cancer CenterのToshinari Yamashita氏らにより公表された。
EMERALD試験は、HER2陽性進行・再発乳がん患者に対して、ハーセプチン+パージェタ+タキサン系抗がん剤(ドセタキセルもしくはパクリタキセル)併用療法を投与する群、もしくはハーセプチン+パージェタ+ハラヴェン併用療法を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、安全性を検証した試験である。
本試験には446人(タキサン系抗がん剤群222人、ハラヴェン群224人)が登録され、年齢中央値は56歳であった。主要評価項目であるPFSの中央値は、タキサン系抗がん剤併用群の12.9ヶ月に対してハラヴェン併用群で14.0ヶ月、両群間の非劣性が確認された(HR:0.95,95%信頼区間:0.76-1.19)。
副次評価項目であるOSの中央値は、タキサン系抗がん剤併用群の65.3ヶ月に対してハラヴェン併用群で未到達を示した。
一方の安全性として、QOL(生活の質)悪化までの時間の中央値は、ハラヴェン併用群の方がタキサン系抗がん剤併用群よりも長い傾向を示した。またハラヴェンの方が使用期間がより長いにもかかわらず、有害事象(AE)の発現率は同等であった。インフュージョンリアクション、皮膚関連の有害事象、下痢、浮腫はタキサン系抗がん剤併用群でより多く見られたが、好中球減少症はハラヴェン併用群でより多い傾向が見られた。
以上のEMERALD試験の結果よりToshinari Yamashita氏らは、「ハーセプチン+パージェタ+ハラヴェン併用療法は、HER2陽性進行・再発乳がんに対する第一選択薬となり得ることが示唆されました」と結論付けた。
参照元:
Trastuzumab-Pertuzumab Plus Eribulin or Taxane as First-Line Chemotherapy for Human Epidermal Growth Factor 2–Positive Locally Advanced/Metastatic Breast Cancer: The Randomized Noninferiority Phase III EMERALD Trial(Journal of Clinical Oncology 2024 Doi:10.1200/JCO-24-01888)あなたは医師ですか。