この記事の3つのポイント
・複数治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫を対象とした第1相試験
・抗FcRH5/CD3二重特異性抗体であるセボスタマブ単剤療法の有効性・安全性を検討
・安全性と効果に関する良好な結果が得られ、今後の併用試験実施に向けた最適な用法・用量を示唆
2024年12月7日-10日に米国・サンディエゴ州で開催された米国血液学会(ASH 2024)にて、複数治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫(RRMM)に対する抗FcRH5/CD3二重特異性抗体であるセボスタマブ(Cevostamab)単剤療法の有効性、安全性を検証した第1相試験(NCT03275103)における目標用量160mgでの結果がTisch Cancer InstituteのJoshua Richter氏らにより公表された。
本試験においては、複数治療歴のあるRRMM患者に対して、1サイクル目はサイトカイン放出症候群発現状況に応じた多段階の用量漸増によるセボスタマブ投与で開始され、その後は21日サイクルの1日目に投与し、病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで最大17サイクル継続した。
本試験に登録された167人の患者背景は、年齢中央値が66歳(40-90歳)、ECOG PSスコアは0が35%、1が65%、初回治療からの経過期間中央値は6.3年、髄外病変ありの患者割合は28%、ハイリスク遺伝子異常(t(4;14), t(14;16), del(17p))を有する患者割合は38%、前治療歴の中央値は6レジメンであった。またほぼ全例(95.8%)が3剤耐性、73.7%が5剤耐性であり、85.0%が最後に受けた前治療に不応であった。
本試験の結果、客観的奏効率(ORR)は43.1%(N=72/163人)を示し、奏効の内訳は厳格な完全奏効率(sCR)6.6%、完全奏効率(CR)6.6%、最良部分奏効率(VGPR)12.6%、部分奏効率(PR)17.4%を示した。初回奏効(PR以上)までの期間中央値は1.4ヶ月、奏効持続期間(DOR)中央値は10.4ヶ月(95%信頼区間:6.8-10.5ヶ月)を示した。前治療歴の種類別奏効率は1レジメン以上の抗BCMA抗体治療歴のある患者群で60.6%(N=43/71人)、1レジメン以上の二重特異性抗体治療歴のある患者群で30.0%(N=12/40人)、1レジメン以上のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法歴のある患者群で33.3%(N=20/60人)、1レジメン以上の抗体薬物複合体(ADC)治療歴のある患者群で41.2%(N=14/34人)を示した。
一方の安全性として、20%以上の患者で確認されたAEは、サイトカイン放出症候群が74.3%(グレード1が52.7%、グレード2が19.8%、グレード3が1.2%、グレード4が0.6%)、好中球減少症が31.1%、咳嗽が30.5%、悪心が28.1%、下痢24.0%、貧血23.4%、倦怠感21.0%を示した。免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は13.2%の患者で確認され、その重症度の内訳はグレード1が6.0%、グレード2が5.4%、グレード3が1.8%を示した。治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率は6.6%(N=11人)、グレード5が1.8%(N=3人)の患者で確認された。
3段階の用量漸増コホート(1サイクル目における0.3/1.2/3.6/160mgの段階的投与)では、CRSは30例中19例(63.3%)に発生し、全てグレード1または2であった。全CRS発症症例に対して、トシリズマブ、ステロイド、またはその両剤により管理可能で、CRSによるセボスタマブ療法の治療中止は1例も確認されなかった。
以上の結果よりJoshua Richter氏らは「複数の治療歴を持つRRMM症例において、目標用量160㎎で臨床的に意義のある抗腫瘍効果と安全性を示しています。また初回サイクルにおける3段階の用量漸増投与により、CRSを効果的に軽減することができたため、今後のセボスタマブ併用試験では、3段階用量漸増かつ21日毎の160㎎投与レジメンが使用される可能性があります」と結論付けた。
参照元:
Cevostamab in Patients with Heavily Pretreated Relapsed/Refractory Multiple Myeloma (RRMM): Updated Results from an Ongoing Phase I Study Demonstrate Clinically Meaningful Activity and Manageable Safety and Inform the Doses and Regimen for Combination Studies(ASH 2024)あなたは医師ですか。